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ただ純粋な、  作者: 横山裕奈
チェス編 第四章
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50 表玄関にて

「あ、ノーラ。現状は?」

 イアの声は、蜂蜜のような声だった。……ああ、本気だな。笑顔だけど、目はあかい。この状態のイアに不用意に触れると、殺される。

 俺は別に攻撃を防げるが、リサとかラーフになると殺されるかもな。一撃で。

「あと4人だが……これが殺し屋でね! そっちは?」

「すべて片づけた。念のため裏口には罠を仕掛けてある。即死するやつな」

 なんのことはない、ただ爆弾を放り投げる装置だ。10人くらいなら一気に吹き飛ぶと思うが。


「うわぁっ!?」

 2メートルはありそうな大男に吹き飛ばされたナタリーに、パーシーが駆け寄る。

「ナタリー! おい、大丈夫か?」

 あのナタリーが押し負けたか。……まぁ、見るからに鍛えてるぜって感じの脳筋野郎だな。

「イア。殺れるな?」

「当たり前じゃん」


 おい、とパーシーが叫ぶが、既にイアは大男の懐に飛び込んでいる。まぁ、後は大丈夫だろう。

「リィ。あたしは上に行って、チビ(0歳~5歳)を助けてくる」

「分かった、ノーラ」

 ラーフが殺し屋の1人に後ろから奇襲を仕掛ける。避けられたが、一瞬の隙ができた。……十分だ。

 ナイフを投げて背中に突き刺し、こちらを向かせる。向いた瞬間に眉間を撃ち抜いて、1人完了だ。そしてついでに、後ろから剣を振り下ろそうとしている殺し屋にも銃弾を一発。角度はいい感じだったらしく、銃弾はあごから後頭部を抜けた。


「もうリィ。私の分、1人しか残ってないじゃん?」

「お前が手間取ってるからだろ。まぁいい、譲ってやるよ」

「そりゃどうも」

 言うが早いか、近所の家の陰からこっちに銃を向けている殺し屋のところへ走る。殺し屋は当然引き金を引くが、不幸なことに暴発だ。あーあ、残念だったな。

 イアが苦し紛れに走りながら放った銃弾が、いい感じに銃口に入るなんて。


「いっ、痛い……!」

 殺し屋の額に鉛弾を埋め込んで、すぐに帰って来る。

「ねぇ、あいつらホントに殺し屋? すっごく弱かったけど」

 弱い? とパーシーたちが呟く。

「手応えねぇな。……弾は何発使った?」

「ここでの戦闘だけなら、3発。さっきのも合わせたら29発かな。手持ちはあと20発」

「どうにかなるな。……イア、ちょっといいか」


 イアの耳に唇を寄せて、指示を伝える。考えられる最悪の状況とともに。

「……分かった」

「俺たちは広場に行っておく。……頼んだ」

 任せられるのは、イアしかいない。他のやつらを信じていないわけじゃない。ただ、なにかを任せられるほど、信頼しきってはいない。

 あいつらには到底言えない、俺の本音だ。

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