「ねぇ、この世界って和風なのにダンジョンがあるんだね?」
「ねぇ、この世界って和風なのに十三比良坂があるんだね?」
その日も十三比良坂へ向かいながら。花凛が、ふと気づいたように呟いた疑問に、あぁとレオは頷く。
「……そういえば、十三比良坂について説明してなかったね」
「うん」
「俺たちが下っている十三比良坂は、正確には〈猫神之国の十三比良坂〉なんだ」
「……うん」
猫神之国というのは、花凛たちが住み、あの猫神が司っている国らしい。この世界には十三の国々があり、子神、丑神、寅神……猫神と十二支に縁のある十三の神々が、それぞれの国を支えている。なお十二の神々が支える国々がある大陸と、この猫神之国がある地は海を隔てているらしい。
「各国……十三の国々にあるから十三比良坂。まぁ、魔物が出て危険だから、ほとんどの国で封じられているんだけど」
「そうなんだ」
「猫神之国でも神職がいないと入れないようにしてある。で、そんな十三比良坂なんだけど……正体は異界からの介入でね」
「……なるほど? だから異世界ファンタジー風に十三比良坂って呼ぶの?」
首を傾げた花凛にレオは曖昧に笑った。
「……ところで、花凛ちゃんは、だんじょんって十三比良坂を呼ぶよね」
「……うん?」
辿々しくダンジョンと言ったレオに、花凛はますます首を傾げる。レオが微笑むと、その瞳がゆらりと揺らめいた。レオが神術を使う時の様子に花凛は、ますます首を傾げた。
「十三比良坂……これで花凛ちゃんにも聞こえるかな?」
「え?」
「……猫神様の加護が過剰すぎたんだろうね。花凛ちゃんには翻訳の加護もついていて、だから俺たちが十三比良坂って言っても〈だんじょん〉って聞こえるし、花凛ちゃんがダンジョンって言っても俺たちには十三比良坂って聞こえる」
驚愕の事実に花凛の目が見開かれた。
「そうだったんだ……便利だけど……。……ちょっと不便だね」
「そう?」
「……うん。私の言葉が、勝手に変わっちゃうってことでしょ? ……レオにちゃんと、会えて嬉しいって気持ちを伝えられてるか心配」
「……そうだね。……良ければ、俺から猫神様に伝えようか?」
花凛は少しだけ悩んだ後、頷いた。
「うん。レオの住む世界の言葉を、私も知りたい便」
「そっか……花凛がそう言ってくれて、すごく嬉しい」
眩しいほどの笑顔を浮かべたレオに花凛も嬉しそうに笑う。
(分からなくなれば、いつだってレオ聞けばいい)
——そう思える毎日が愛おしくて幸せだった
エンディング後のお話です




