第一幕:四角い世界 第二章:生態系(カイ視点)
「グルルルル……」
不意にどこからか、獣のようなうめき声が聞こえた。
「な、なに?なんの音?」
「わからないけど……とりあえずこれは逃げたほうがいい気がする。」
なにかはわからないが、確実にこの音の主は危険な動物か、この世界にしかいない(危険な)生物のどちらかだ。
「ねえ、カイ。あれ……」
リオが指さした方を見ると……そこには体が緑色に腐り、手を前に突き出した化物がいた。
「リオ!早く!」
リオはカイに呼ばれてはっと我に返り、慌てて走り始めた。だが、しばらく走っていると周りからも何体かのゾンビが増えて追ってくる。それに、いくら足が速くてもいつかは体力がなくなる。そう思っていると、リオが走りながら言った。
「カイ!さっきのブロックを壁みたいに置けば防げるんじゃない!?」
そうか。地面にはいくらでも土のブロックがあって、簡単に掘って置ける。それを利用すれば……。するとさらにリオが言った。
「私がこの化物を引き付けておくから、カイは壁を作って!」
「待ってリオ!さすがに危なすぎる!」
リオは負けじと言い返す。
「じゃあほかになにがあるの!?早く!」
そういうと振り返って化物に殴りかかっていった。
「リ、リオ!しょうがない、分かった!」
カイはそう言って地面を掘り、壁にしていった。
地面を殴り、近づいてそれを取り、地面に叩きつける。それを何度か繰り返し、四角い囲いができると更に上にブロックを重ねていく。
念の為三段積み重ね、リオが通れるだけの隙間を作った。
「リオ!早く入って!」
その声を聞き、リオが壁の中に飛び込んできたのを確認すると、急いで隙間をブロックで閉じる。
「ふう、間に合った……」
「リオ、大丈夫?」
リオは地面に倒れ込み、荒い息を繰り返していた。その体はボロボロだ。
「うん……多分。」
「ごめん、壁作るの遅くなって。」
思ったよりも時間がかかってしまい、リオが大変な思いをしてしまった。それに、こんな壁で大丈夫だろうか……。
「ううん、全然。私こそ、いきなり無理言わせちゃって……」
「そんなことないよ。でも、こんな壁でも化物たちの攻撃を防げるかな……?」
土の壁は、化物たちの攻撃によって、どんどんと音を立て、内側では細かい土がパラパラと落ちている。
「あ、あれ?」
リオが突然驚いた声を上げた。見ると、リオは自分の体を見て目を見開いていた。
「ど、どうしたの?」
「カイ、この世界、すごいかも……!」
なにが、だろうか。壁を作れることにしては遅すぎるし、ゾンビの力に対しても今更だし……。
そう思っていると、リオが大きな声で言った。
「体が、みるみる回復していってるの!ほら、もうこんなに!」
そう言うと、立ち上がってジャンプをした。こんな早く回復?おかしいだろう?
「そ、そんな無茶しちゃ……ええ、ほんとに?」
たしかにさっきまで傷だらけだったリオの体は、なにもなかったかのように治癒していた。
元の世界であれば、入院は確定であっただろう傷が、十秒ほどで回復するなんて。
「ねっ、すごいでしょ!これなら……」
そう言おうとした瞬間、クルクルクルクル……と、リオのお腹から音がなった。
「きゃっ、な、これは、その......」
「なるほど。劇的に治癒される代わりに、空腹になるってことか……。たしかにこの世界、すごいかも。」
「全然気にされてない……」などとリオが呟いているが、なんのことだろうか。
でも、空腹になるってことは、この世界には食料を調達する方法もあるはずだ。
「方法といったら……何かあるかな?」
リオがすぐさま答える。
「よくあるRPGとかだったらショップみたいなのが自分で開けるけど……四角い枠しかないよね。」
「他には、食べ物を育てたりするくらいしか思いつかないけど……方法がわからないね。」
そうなると、食糧問題に問題が出てくる。そんな思料を断ち切るように、土の壁の外から鋭い化物の唸り声(?)と、何かが焦げるようなにおいが漂ってきた。と、同時に空からは明るい陽の光が差し込んできた。
「も、もう朝!?あと……なに?この音とにおい。」
「音は化物のものだとおもうけど……もしかして、化物って陽に弱かったりする?」
日光に弱いのは、ヴァンパイアじゃなかったか……?と思うが、この世界ではもとの世界の常識は通じないと考えたほうがいい。
「ああ、そういうことか!だとしたら、日が昇ったらもう心配する化物はいないんじゃない?良かった!」
たしかに、そうなる。わくわくした気持ちを抑えながら、そっと土のブロックを削る。
「うわぁ……ひろーい。」
外を見ると、広い平原が広がっていた。昨日は目の前しか見ていなかったが、こう見ると自分たちがいる草原はかなり広いものだったらしい。
「結構広いんだね。……げっ、なにこれ!」
足元――さっきまでゾンビが立っていたところ――に、腐臭を放つ肉片がいくつか浮いていた。
「これ……化物の肉かな。ぎゃっ!そうだ、近づくと入ってくるんだったぁ!」
間違って近づいてしまい、リオのベルトに飛び込んでいく。
「うげぇ……これ、食べられないよね。」
たしかに食糧難には陥っているが、どう考えても食べられる物ではない。
「じゃあ、これからどうする?」
この世界から街に戻ることが目的だが、そのためにも食料は必須だ。他のところへ行くのは当然として、そのための準備も必要である。
「夜にまた襲われないようにブロックをいくつか持っておいたらいいんじゃない?」
「うん。というより、それくらいしか持てるものがないっていう感じだけど。」
ということで、僕達――カイ・リオ――は、異世界から元の世界に戻るという、危険かつ壮大な旅に出かけたのであった。
おまたせしました!山川あきひろです!今回の章は少し長くなりましたが、自分としては納得の行く章になったと思います。次もお楽しみに!




