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プロローグ
吐き出した息の冷たさに引き上げられるように、ゆっくりと意識が覚醒した。
とても長い間眠り続けていたような眩暈。ぐらりと傾いた体は、何者かの腕によって乱暴に固定される。
緩慢に顔を上げれば、ぼやけた視界に無数の人々が映る。その表情までは捉えられなかったが、浴びせられる声に好ましい響きのものがないことだけは分かった。
「国家転覆を企てた罪によって、ユーフィリア・メディウム元公女の処刑を執り行う!」
激しい雨音に勝る声量の男の声が耳に届き、体が引きずられ始める。そこで初めて、呼ばれた名前が自分のものなのだということに気が付いた。事態が飲み込めないでいる間にも、時間は進む。首が半円状に凹んだ木に押し付けられる。ささくれだった木片が肌をひっかき、鋭い痛みが走った。
――寒い。
気温も、体温も、打ち付ける雨の温度も、投げつけられる声も、何もかもが冷たい。
木が軋む音がする。喚声がひと際大きくなる。
風を切るような、鋭い音がして。
視界は再び、真っ黒に染まった。
それが、一度目の死を迎えた瞬間だった。




