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魔王が蘇って世界は終わりだ 勇者の私がさせません  作者: けろよん


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第10話

 私と霙ちゃんが話し合ってしばらくの時が流れたが霙ちゃんにまだ帰る様子はなかった。私が自分の部屋なのにそわそわしていると、霙ちゃんの目がふと窓の方を向いた。私も釣られてそちらを見る。

 私の部屋の窓からは、道路を挟んで向かいの家が見える。そこにはすーちゃんの部屋の窓があって、霙ちゃんはそこを気にしているようだった。


「魔王が今何をやっているか分かる?」

「さあ? 私には何も」

「密かに闇の眷属たちを集めて闇の計画を進めているかもしれないわ」

「まさかあ」


 すーちゃんがスライムを流したりゴブリンに不信感を持っていたのを私は知っている。彼女が闇の眷属とやらを集めて何かをしたがるとは私には思えなかった。

 だが、霙ちゃんは警戒しているようだ。窓から様子を伺う彼女の目には冒険者としての厳しさがあった。


「なら、なぜ黒いカーテンを引いているのかしら」

「さあ?」

「近づいて様子を見てみるべきかもしれない」

「危険じゃない?」

「あなたの判断はもっともだわ。今日のところは止めておきましょう」

「あ」


 私は判断を誤ったかもしれない。霙ちゃんに部屋を出ていってもらうチャンスだったのに。

 霙ちゃんは静かにカーテンを引き寄せ、相手の視線からいつでも隠れられるようにしながら窓の外に目を向けている。すーちゃんの動向を探ろうとしているのだろうか。私にはその意図がよく分からなかったが、少なくとも今、黒いカーテンの向こうで何が行われているかは分からないだろう。


 今日のところはもう帰った方がいいんじゃないか。私が思いかけたその時、いきなりすーちゃんの部屋の黒いカーテンが開かれて、窓からすーちゃんが顔を出した。


「!?」


 霙ちゃんは慌てて姿を隠し、ツインテールをしっかりと押さえて身を縮めた。まるで自分の存在を隠すように、必死に隠れているその姿がなんだか可笑しかった。


「なにしてるの?」


 私は内心、思わず笑ってしまいそうになったが、霙ちゃんの様子に焦りを感じてその気持ちを抑えた。


「あたしの事は気にしないで。あいつと話をして」


 霙ちゃんが小声で言う。私はその言葉を聞いて、なんとなく納得する。なるほど、魔王の動きが気になるのは当然かもしれない。私も気になる。


 私はすーちゃんに助けを求めても良かったかもしれないが、今のところは目的は冒険者と同じだし、ツインテを切られてまた戻されていた霙ちゃんがさらに酷い目に合うのも可哀そうだ。

 それに玄関先で霙ちゃんに背後から物を突き付けられて命令されたのはまだ記憶に新しいところだ。ここで不用意な行動に出て霙ちゃんに人質に取られたくはなかったので話を合わせることにした。


「黒いカーテンなんて引いて何かやってた?」

「別に何も。ここも片付けないと」

「手伝おうか?」

「いや、いい。私がやる」


 すーちゃんの行動からは何をやっているかは読み取れない。ただ何か掃除をしているようだと思った。

 身を隠している霙ちゃんの方を見ると指だけで窓の方を示した。そっちだけ見て話をしていろということだろうか。私には特に今すーちゃんと話したいことはなかったが、軽い気持ちで聞いてみた。


「すーちゃんは魔王として立つ事に決めたの?」


 途端にすーちゃんの掃除をしていた手が止まった。彼女が俯いて私は良くないことを聞いたかと焦ったが、すーちゃんがすぐに窓に歩み寄って話を続けてくれたので安心した。


「私とてるみんの戦いにあいつらも冒険者も関係ない。邪魔をする奴らがいるなら…………消す」


 それがどこまでの意味かは分からなかったが、霙ちゃんが一瞬震えるのが私には分かった。


「てるみんも早く聖剣を使えるようになって。私と本気の勝負をしよう」


 すーちゃんはそう言うと、黒いカーテンを普通のカーテンに差し替えてそれを閉めてしまった。

 話は終わりという事だろう。掃除の邪魔をするのも悪いと思い、私も窓を閉める事にした。


 しばらくして霙ちゃんは緊張していた息を大きく吐いた。


「あなたよくあいつと平気で話せるわね。あいつ、昼に会った時より力が大きくなっているかもしれない」

「そう? いつも通りのすーちゃんだったと思うけど」


 私が気になるのはすーちゃんの事よりも、霙ちゃんはいつまでここにいるんだろうということだった。

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