バラバラの時間 第一村人の犯行計画
痛いところを突く婆さんだ。ここは大人しく下を向くか。
「第二消失は湖の館で発生。今すぐ湖まで行き実験をするのも悪くない。
しかしまあ無理する必要もない。結果は見えてます。
二姫さんを運ぶ船には重量制限がある。約百キロ。
もしこれを越えると転覆する恐れがあります。
そのため二人の合計体重を百キロ以内に抑えるのが決まりです。
送りの儀でも迎えの儀でもコウ君は事前に計測。
コウ君は小柄な方ですが意外にも筋肉質。約六十キロ。二姫は約四十キロ。
合計で約百キロ。ギリギリ船が動かせます。
ただ実際にはこの船は百二十キロまで耐えられる。そうでしょう刑事さん? 」
「ああ。実験済みだ。間違いない」
「ではなぜ体重を百キロとしたのか。
それは儀式で使用するあれこれを運搬する為に空けておく必要があるからです。
要するに二十キロ近くは荷物を運べるんです。
また実際には二女は四十一キロ越え。コウ君はそのまま六十キロを記録。
これは送りの儀での話。この時点で一キロオーバー。
あと十九キロも積めば沈んでしまいます。
このような不測の事態を計算して体重制限を厳しくしてるが……
残念なことにきちんと守られていないのが現状のようです」
「ここで注目してもらいたいのはコウ君が痩せたり太ったりを繰り返している点。
別に無理なダイエットをしたのでもリバウンドしたのでもない。
彼には目的があった。
それは儀式以外の余計なものを運ぶため。
より正確に言うとセーフティーにことを運ぶため。
コウ君の痩せた時の体重が約五十五キロと仮定します。
自分の体重分だけで約六キロ余計なものを怪しまれずに運び入れられる」
「ワット? オーノー」
「これも計画の内。実際には六キロ近い重りをつけ計測したのでしょう。
これは健康診断でも試合前の計量でもない。
あくまでも安全を考慮したもので儀式の一環」
館内が再び騒がしくなった。
「続けます。その六キロで二姫を解体する道具を運び入れた。
ナイフやノコギリ。鎌やドリル。
解体道具が何かまでは断定できませんがそれも遺体が見つかれば分かること。
コウ君は約六キロの凶器を持って送りの儀に参加した。
もちろん中身を悟られないようにカモフラージュしてね」
「何? そんな馬鹿な」
突拍子もない話について行けずゴリラのような刑事が遮る。
「しかしそんな面倒なことせずとも夜にこっそり往復すればいい話。違うか? 」
「鋭い。でも一番怪しまれない方法は送りの儀で運び込む。これがベスト」
「怪しまれずに? 誰にだ? 儀式外で運んだ方が確実だろ。違うってのか? 」
コウは首を縦に振ってから横に振る。
「儀式中には見張りがいるんですよ。交代制で隙がない。
記録ではコウ君は送りの儀で一度。指名で一度。最後に迎えで一度の計三回。
監視の目をを逃れ往復するのは不可能。
彼らは水門とでも言うのか湖の館との中間地点の狭まったところに待機。
まず見落としなどあり得ない。
彼らからの聞き取りによるとやはり見落としも不審な点もなし。
またコウ君とは関わりもなく買収されたなんてこともないようです」
「じゃあこういうのはどうだ。事前に湖の館に隠すとか」
「それはフェアじゃない…… いえ少なくても籠る前に確認するでしょう。
見つかってはすべての計画が水の泡。そこまで間抜けではない。
湖の館は広くありませんし隠すところも限られる」
「だったら逆に迎えの儀でまとめてすべてやっちまえばいいじゃねいか」
うーんと大家さんは考え込む。
「確かにそれも可能でしょう。しかし時間が足りません。
行きと帰りの時間合わせても二時間もありません。
それも当然。消失したわけだからすぐに応援を呼ぶのが普通でしょう。
まあただ私ならすぐに館の電話で応援を呼んでそのまま待機します。
コウ君は冷静な判断ができなかった人物を演じたのでしょう。
それとも外に居ては思いつきもしなかった? 」
コウ君は下を向いたまま反応しない。
「だとすればこいつは送りの儀で殺害しバラバラにして戻った。合ってるか? 」
「いえ違います。これはあくまでも儀式の一環。
送りでのコウ君にバラバラにしている時間はありません。
送りの儀を終えた彼を待っている仲間もいます。
送りの儀は時間厳守です。記録によると二時間となっています」
大家さんの調べに抜かりはない。
「ニ時間もあれば殺害してバラバラにするのも不可能じゃない」
否定され続けやけになっている刑事が吠える。
続く




