二姫
再び東の館に舞い降りた第一村人。
「それでは第二消失事件に話を進めて行きませんか? 」
積極的な探偵さん。いつの間にか場を仕切る。
「先生がそう言うんでしたら仕方ありませんね」
「婆さんそれはねえぜ。こっちは早く事件を解決したいんだ。
村中に不安が広まってる今一日でも一時間でも早く解決しなければならない。
その為のあんたらだろ。警察の信用はどうなるんだ? 」
人任せなゴリラ刑事が文句を垂れる。
「焦らない。今更警察の信用もないだろ? もう事件は起きない。
コウ君は逃げようとした。それに三貴さんを心配してるようだし。
ゆっくりじっくり詰めていくさ」
「分かったよ婆さん。俺はもう何も口出ししない。だからなるべく早く頼むぜ」
こう言ってはいるが守るとは限らない。興奮すると暴走する癖がある。
「先生。先生は何かありますか? 」
この期に及んでも探偵さんに花を持たそうと必死な婆さん。
過保護が過ぎるよ。
探偵さんは首を振るのみ。
「探偵さん動かずか。よし婆さん。ちゃっちゃと第二消失の方も済ましてくれや」
さっそく口を出す困った刑事。
これでは探偵さんからもそこの婆さんからも当然自分からも信用を失っている。
離れで見せた余裕はどこに行ってしまったのか。
せっかちで凶暴では周りの迷惑だ。
「刑事さんは不安なんでしょう? 二姫の遺体が見つからないから。
どこに行ったんでしょうね二姫さんは? 」
ヒントぐらい与えないとね。
「白々しい。お前がやったんだろうが。罪の意識はないのか? 」
ふふふ…… 何も分かってない。
「そうだこの野郎。二姫の遺体はどこにある?
白状しろ。すべて告白すると言ったじゃないか」
ゴリラ刑事を無視。探偵さんに視線を戻す。
何か寂しそうに訴えかけるが自分にどうしろと?
どうすることもできないんですよ探偵さん。
もし自分が二姫の居所を知っていたらすぐに教えてあげます。
しかし自分は知らない。自分は彼女を縛り付ける力はない。
糸が切れた凧のようにどこかへ飛んで行ってしまった。
どこに飛んで行ったかまで把握していない。
もしかしたら近くの木にでも絡まってるかもしれない。
最悪一葉と共に地獄に落ちた恐れだって…… ああ最高か。
二姫は二姫だ。
「二姫消失事件は未だに不明です。しかし推測なら出来ます」
婆さんが再び妄想を語りだした。
「私は滞在中、山湖村や隣村の情報収集に努めました。
そこにはもちろんコウ君についての言及も。
コウ君の父も同様に渡りの仕事を長年やっていました。
岩男氏に大変気に入られ隣村に家を建ててもらい感謝していたようです。
しかし渡りの事故であっけなく他界。コウ君がその役目を引き継ぐことに。
ここまでは合ってるかい? 」
首を縦に振ることで先を促す。
「岩男氏には黒い噂がありました。
不正に手を染め選挙ではお気に入りの者を当選させたりと金と権力で村を支配。
その不正の場を目撃したコウ君の父は口封じのために殺された。
コウ君もその噂を耳にしたんじゃないの。
幼かったあなたはまともに信じてしまい恨みを抱くように。違いますか? 」
さすがは婆さんだ。噂だけでそこまで飛躍するなんて自分には到底敵わない。
「はい確かにそうです。しかし殺害しようとまではさすがに思いませんよ。
ただ真実が知りたいなと思っただけですよ。ほら続けて。続けて」
「娘たちは岩男氏に劣らず若い者に熱を入れた。
そのターゲットの一人が当時岩男邸に出入りしていたコウ君だ。
あなたは岩男氏のお世話をしていた。
そこにいる太郎次郎からコウ君に関心が移った。
当初コウ君は太郎次郎と同様の道を辿った。
コウは太郎たちよりも従順で村にしがみつくしかない弱き者だった」
「弱き者とは失礼な言い方ですね。でも大体合ってるよ。
自分は三貴様に好意を抱いていました。
年齢も近いし性格も良く上品で美しい完璧な女性。自分にはもったいない程だ。
まさかあいつらのような汚らわしい我がままなお嬢様に支配されるとはね」
「ありがとうコウ君。気持ちは痛いほどわかる。辛かったんでしょうね。
動機には十分です。
後は問題の第二の消失ですがあなたは痩せたり太ったりを繰り返してましたね?」
「ああここ最近体の調子が良くなくて…… 」
「噂では恋煩いだとか女王の奉仕に嫌気が差しストレスで痩せたり過食でリバウンドしたりと言った話が出て来ましたがこれもあなたの計画の一環でしょう」
まずいところを突いてくる。ここは大人しく下を向くしかない。
続く




