囚われた探偵
地下牢。
地下なので退路を塞がれては逃げようがない。
駆けつけた男たちに取り囲まれてしまう。
万事休す。
「くそ何でこうなる」
「先生。先生」
「オーノー」
「だから言ったんだ。助言を無視して暴走する奴がいるか」
「あーあ。先生が止めないから」
情けない話だが助手のせいにしてしまう。
彼も人間。反発する。
このまま罪の擦り付け合いはさすがに情けない。
もちろん私だって心情では彼らを助けたかった。
だがそれにしたって順序や方法がある。まずは村長に掛け合うのが先だ。
それをこんな暴挙に出たがために閉じ込められてしまう。
「お前のせいじゃないか。この役立たず」
ついつい抑えきれずに本音が出てしまう。
少々大人げなかっただろうか。
「ええっ? 何か言いました? 」
助手は聞こえなかったのか聞こえない振りをしたのか。まったく動じない。
決して自分のせいだとは思っていないようだ。
正確にはルーシーのせいとも言えるが。
「うるさいぞお前ら。大人しく牢に入るんだ」
抵抗などしようがない。武器も賄賂も金もない。
彼らは彼らの役割を果たすのに必死。
こっちの都合など気にもかけない。
うわああ
突如叫びだす助手。
現実に気付いてしまったのだろう。
「オーノー」
助手の次はルーシー。
何が起きたか詳しく説明してやらないと迷惑をこうむることになる。
「ほら早くしないか」
抵抗虚しく牢の中に。
ははは……
笑えない。
まさか四つすべての牢を使うことになるとはどんな名探偵でも予想できまい。
ルーシーが一番奥でその隣が私。助手はコウ君と仲良く二人。
隣の男は散々悪態を吐き叫び疲れたのか眠ってしまう。
隣の声は届くが生憎助手の声は判別不可能。
悪口を言っても届きはしない。
大声での会話も成立しない有り様。困ってしまう。
もちろん隣が静かならば聞き取れないことはない。
それにはこのイビキを止めることが不可欠。
ルーシーも酷いものだ。さっきから呪文を唱えて落ち着きがない。
私の精神にも良くない影響が出てくる頃合い。
コウ君と助手が何か話しているようだがうるさくて会話が聞き取れない。
寝てるので男に注意もできない始末。
これだけ騒がしければ寂しくはない。
だが結局は牢で独りぼっち。
つい現実に引き戻されてしまう。
もう事件解決などと言ってられない。
何とかしてこの牢から抜け出さなければならない。
我々を助ける救世主など現れるはずもないのだから。
呪文が聞こえなくなった。
「大丈夫かルーシー? 」
今彼女を気遣う余裕はない。振りをしているだけだ。
だが本音を言えば相手してもらえれば誰でも良い。
「イッツ ジ・エンド」
ルーシーは明るい。
かすかだが希望が見えた気がした。
しかし困った。身動きが取れない。
狭いとか苦しいとかいろいろ不満はあるものの慣れてしまえばどって事はない。
そう肉体的には問題なくても精神的にやられてしまう。
と言うよりも精神がやられてはそのうち体にも影響が出る。
ルーシーは持ち前の明るさで癒してくれる。
それに対して隣のイビキ野郎はまだ平気で寝ており苛立たせる。
今は昼。寝てる時間ではない。
問題は助手。こんな体験初めて。
コウ君と一緒なのがせめてもの救い。
二人はすぐに仲良くなった。年も近い。感じも似ている。
ただそのコウ君もショックが大きく立ち直れていない。
決して彼のせいではないが二姫が消えた。
渡し役の彼が疑われるのは仕方がない。
早く無実が証明されればいいが。うーん。
余裕があるように見えるこの私も冷静さを保っていられるか自信が無い。
ほぼ初体験。
昔悪さをした覚えも誤認逮捕されたこともない。
地下牢での別荘生活はいつまで続くのだろう。
確かにここに居れば安全は保障される。
村長や村全体の思惑が無い限り安全。
ただ彼らをどこまで信じていいやら。
なるべく早くここから出なくてはならない。
たとえ脱走することになったとしても。
手段を問わない。
できれば二十四時間以内に出たい。
第三の消失が起きる前に。
この村に来た意味がなくなってしまう。
第一村人の思い通りにはさせない。
さあ考えろ。考えるんだ。
続く




