説得 動かぬ警察
手紙を渡し警察の協力を仰ぐことに。
会ったばかりのこの人相と態度と口の悪い刑事をどこまで信用できるやら……
「ありがたい。ご協力感謝する。内容を精査し捜査の向上に役立てるとしよう」
「いいですか。脅迫状の通りなら犠牲者がもう一人増えることになります。
一刻も早く儀式を中止させてください。警察の強い要請があれば可能でしょう?」
強い口調でお願いではなく半ば強制だ。
「急ぐんです。取り返しのつかないことになる前に」
主導権を握り警察に働きかける。
「うーん。こと儀式になると村人がうるせいしな」
面倒だと言わんばかりに頭を掻く。
「何を弱気な。人の命が懸かってるんですよ? 」
「分かってるって。俺もそうしていよ。でもな…… 言うこと聞くと思うか? 」
私に聞かれても困る。言うことを聞かせるのも警察の大事な大事な仕事。
もちろん…… 聞くわけがないが答え。
連続失踪事件が起きたとは言え遺体がまだ上がっていない。
これでは弱い。それに村人の大半が詳細を知らない。
ただ怯えて。それが伝染しているだけで何に恐怖し何をしているのかも曖昧。
いいように踊らされている。誰に? 第一村人? 村長?
「お願いします。もうこれ以上第一村人の思い通りにさせてはいけません」
「しかしなあ…… まあいいか」
「ダメです。そんな訳には…… 」
今まで無言を貫き耳を傾けていた温厚な爺さんといった印象の駐在が口を開く。
我慢ならないと言った様子。
遠慮気味だった駐在が村の儀式の中止に強く反対するまさかの展開。
「ほらな。ここの奴は儀式や村のことに口出しされたくないんだよ。
いくら俺らが進言しようが聞く耳を持たない。悪いが諦めてくれ」
「村の総意だとでも…… 」
「さあな。とにかくよそ者に余計なことされたくないのさ。そうだろ爺さん」
駐在は苦笑いで応じる。
警察のやる気次第で尊い命が救えると言うのになぜか消極的。
なおも食い下がるがため息一つで返す。
「うーん。なあこう考えてみてはどうだ。まだ遺体が見つかった訳じゃない。
そうすっと事件は成立していない。良くて失踪事件だわな。
確かに関係者が次々に失踪し動揺が広がっている。ただ決定的な証拠がまだない。
今のところ中止するだけの材料がそろってない。違うか? 」
「刑事さん…… 」
確かにそうだ。失踪が必ずしも直ちに大事件になる訳ではなくただの家出の範疇。
いちいち全てを調べていたらきりがない。
だが儀式の最中の失踪であり消失なのだから今回は当てはまらない気もするが。
「儀式は継続する。それに今夜一杯って言うじゃねいか。
今日までやって儀式を終わらせるのも一つの手だ」
本心はどうか知らないが警察としては動く気はないらしい。
後悔することになるぞ。いや後悔さえできなくなるかもしれない。
恐ろしい未来が待っている気がしてならない。
再び消失が起きるのは火を見るよりも明らかだと言うのに動こうとしない警察。
「しかしそんな悠長なことしてれば次の事件が。三女の三貴さんが危ない。
間違いなく変わり果てた姿で発見されるでしょう。
いや発見されるならまだいい方だ。二度と見つからないかもしれない」
ここの駐在にしろこの刑事にしろ何の為に存在するんだ。
せっかく事件を未然に防ぐ有効な手段を提示していると言うのに。
「だから一つでも遺体が上がりゃあ俺たちも無理矢理儀式を中止させるさあ。
だが今のところ何の手掛かりもない。湖を漁ってもたぶん何も出てこないだろう。
お前の言うようにトリックか何か使ってだな……
だがもしひょいと出てきたらどうする?
笑い事じゃ済まない。祭りや儀式を中断、中止させといてだ。
首が飛ぶだけではない。警察のメンツが丸つぶれの上に信用が失墜するのさ。
変な噂でも流されたらお終い。村人を抑えておけない。そんな不安定な状態だ。
大人しく儀式が終わるのを見守るしかない。警備をしっかり付けた。
今夜三貴が無事に儀式を終え出てくるのを待つんだな」
長い演説を打つ。拍手の一つでもしてやるべきか。
刑事としてのプライドは無いらしい。メンツにこだわる必要がどこにある。
事件性が無いから捜査しないなんて詭弁でしかない。
儀式が何だと言うんだ。人の命よりも大切なものなどこの世にない。
続く




