狙われたルーシー
中央の館を追い出されるように後にした我々に突如として降りかかる厄災。
うおおお
道を少し行くと咆哮が。
そこで待っていたのは野蛮な集団。
手に何か持っている。斧? 鍬? 刀?
もうただの嫌がらせでは済まない。村人の本気度が伝わる。
オーマイゴッド・イッツ・クレイジー
囲まれる前にルーシーの手を取り一目散に本部の方へ。
はあはあ
はあはあ
息を切らす。
オウノーベリーベリーハード
命からがら本部に駆け込む。
「あれ助手の奴は? 」
いつの間にか姿を消した助手。これはまずい。どうしよう…… まあいいか。
「置いてけぼりなんて先生酷い。もう少しで奴らの餌食になるところでした」
一時的とはいえすっかり忘れていた助手の存在。まさか逃げ遅れるとは。
何とか逃亡できたようだ。無事で何より。
「済まん。済まん。ルーシーさんの方が大事だから。つい君のことを忘れていた」
何とかごまかすが鋭い視線を向ける助手。
少しは信用して欲しいものだ。探偵と助手は信頼関係なくしては成立しない。
「まったく。うまく避けたからいいものをもう少しでふろに入り直すところでしたよ。本当に信じられない」
ひねくれてふてくされる。
ははは……
笑ってごまかそうと思ったが助手の追及は緩みそうにない。
ここは作戦変更。
「しかし彼らはなぜあそこまでルーシーさんを目の仇にするのか」
「知りませんよ。本人に聞いてくださいよ」
「オー チンプンカンプン」
後でコウ君にでも聞いてみるか。
一息つく。
「そうだルーシー。昨日はどこに泊まったの? 」
助手の何気ない質問に固まるルーシー。
彼女の様子がおかしい。
「野宿。キャンプね」
無理矢理絞り出した答え。
まあ助手は騙されたが私には通用しない。苦し紛れの思い付き。
要するに嘘をついたことになる。だがなぜ嘘をついてまで隠そうとする?
「野宿は大変だね。今日はもう疲れただろうしここに泊まってもらいましょう」
助手の提案は気遣うあまりに出たのだろうがただの下心とも取れなくもない。
「勝手に決めるな。少なくてもコウ君には報告しないと。ただでさえ我々は泊めてもらっている身の上なのだからな」
「そんなこと言わずにかわいそうですよ。泊まるところないんですから」
確かに…… 外に行けばまた狙われる。彼女を保護する意味でもこれは仕方ない。
「大勢で寝るの大歓迎。面白そう。ウエルカム」
「まあ彼女の希望なら仕方がない。コウ君に伝えておくんだぞ」
「ヤッタ」
助手の本音がでる。
これは危険。二人きりには絶対させられない。
他に部屋が空いてないかとりあえず確認。
残念と言わんばかりに下を向き項垂れる助手。
「やはり下心か? 困った奴だな」
「先生そんなに大声で言わなくても」
怒りだしてしまった。ちょっとからかっただけなのに。まさか本気?
助手の頭の中が見えた気がする。
夕食前にコウを捕まえる。
「お疲れ様。二人も大変でしたね」
「ああ。コウ聞いてくれよ。もう忙しくて忙しくて。
お昼だって遅かったしほとんど食ってない」
大げさに言う。危なかったが忙しくはなかったはず。まったく口の達者な奴め。
「こっちも大変でしたよ。消失した一葉さんを探したり祭りの準備もしなくちゃいけないから。大忙し。大忙し」
「そうか今夜だったね渡しの仕事は。まあ大丈夫さきっと。成功を祈ってるよ」
「ええ。何も起こらないといいんですが自分としてはきっちり役目を果たして儀式に貢献したいと思います」
「ねえコウ君は何か知らないか? よそ者への態度が急変した理由」
不可解なルーシー襲撃事件。エスカレートしていて非常に危険。
「ああそれは自分の口からは何とも…… 」
どうやら彼には心当たりがあるようだ。
「おいおい。俺たちの間で隠しごとなんてするなよ。知っているんだろコウ? 」
相変わらず助手とコウはじゃれあっている。
「それはその…… お連れさんが…… 」
コウ君は真剣な表情で言いにくそうに辺りを見回す。
「ああ。ルーシーさん? 彼女ならシャワーを浴びてるところさ。待つかい? 」
コウは首を振る。
「あの人がいない方が都合がいい。できればこのことは黙っていてください」
コウ君がそう言うなら仕方がない。
もう一度念を押しコウが語り始めた。
この村に伝わるアリサ伝説。
続く




