《304..その後》
「本当に大丈夫ですか?」
「うん、心配いらないよ。暴嵐王の魂はここにある!だから僕はこれからも戦い続けるよ、暴嵐王に恥ずかしくないように……ね」
ニッ、と口角をあげてみせるレウさん。
その手にはバラバラに砕け散った暴嵐王のボディの欠片が握り締められていた。
そこにはおどおどとしていた姿はなく、1人の立派なレーサーの姿があった。
「ふん、俺様の最後の走りで優勝したんだ、この先、1つでも負けたりしやがったら承知しねぇからな、ゴルァ!」
「うひぃ、わ、わわわわかりましたぁぁぁ!!!」
「「「わあっははははは!!!!」」」
シロマルさんの気合いの入った平手打ちがレウさんの背中を穿つと、いつもの気弱なレウさんの悲鳴が響き、一斉に笑い声が響く。
これから会場の修復に長い長い時間と甚大なる労力がかけられていく事だろう。
王都の復興時もそうだが、人の心というものは強い。
簡単には挫けず、いろんな人達が手を取り合って助け合うのだから。
「ていうかハリーくん、本当にレーサーをやるつもりは無いのかい?君なら凄いレーサーになれると思うんだけど…」
確かに、レースはついつい夢中になってしまう。
勝つか負けるか……熱気と熱気がぶつかりあって熱い戦いが終始繰り広げられる魅力的な戦場だ。
だけどーーー
俺は『勇者』であると共に『冒険者』だ。
正直、勇者という立ち位置の存在意義もよくわからない。それでも仲間達と共にモフチラータを魔物達から護る大切な使命があるのも事実だ。
「魅力的な御誘いですが、俺は俺の居る場所があります。お互い別々の闘いの世界に身をおいている者として、頑張っていきましょう!」
「そうか…そうだね。
僕は僕の路を行く。いつか僕もラウ兄さんやシロマルさん達に負けない伝説のレーサーになってみせるよ」
俺とレウさんは固く握手を交わすと、お互いに反対の方へ歩きだす。
「さぁ、帰ろうか、皆」
聖騎士団の皆さんは既に王都への帰路に就いている。ボウソウ一味を王都の牢に収監する為だ。
鎖で繋がれ連行されていくボウソウの瞳にはもう微睡みは無いように見えた。
彼は連行をじっと見送るレウさんの顔にチラッと目を落とすと、小さく声をかけていた。
ーーーー俺が服役から戻るまで負けんじゃねーぞ
いつの日か、レウさんを中心にチラカートレースが活気に湧き、ボウソウや皇帝バオウ達との激闘が矢継ぎ早と展開していく。
ーーーーー遠くない未来。
それはまた、別のお話し。




