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「じゃあ……ラッツァク商会がマオのものになったってこと?っすか」
「うん」
おなかいっぱい食べてしあわせ。あ、お菓子は別腹だし、ベッツィさんのつくってくれた絶品のレモネードは飲みものだからカウントしない。スープも飲みものだからね!
マドレーヌをぱくついた。貝殻型ではなくて、天板で焼いたものを四角く切ってある。しっかりと目の詰まった嚙み応えで、重さもあって、おいしい。ツァリアスさんはお菓子を焼くのが得意みたいだ。クッキーもおいしかったし。
「これおいしいです、ツァリアスさん」
「お粗末さまです……」
サッディレくんとアーレンセさんが、顔を見合わせてきょとんとしている。「ラッツァクって、レントで一番大きい、金融の商会よね」
「っすね」
「それがマオさんのもの?」
「……うわー」
「ねえ」リエナさんが身を乗り出した。「それ、どうするの?マオのもになったってことは、マオが商会長になる訳?」
頭を振る。ツィークくんがパウンドケーキをふたつ確保した。
「マオさんは、ラッツァクを畳むつもりなんですよねえ」
「うん」
グロッシェさんとツァリアスさん以外の四人はぽかん。傭兵達はくすくすした。
リエナさんが云う。
「畳むって、……あれだけの大きさの商会を?」
「先行き不透明ですし、賠償ですっからかんになると思うんです。過払い分も返さないといけないですし。賠償とは別として」
「かばらい?」
「えっと。個人的に、年利が二割を超える借金は不当だと思っているので、そういう契約がないかを精査して、あった場合には過剰にとりたてた分を返します。借金の額が少ない場合は年利一割五分までで」
どれくらいをボーダーラインにするかな。貝貨12枚以上から、くらいでいいか。
リエナさんは、笑うみたいな顔で、首を傾げた。
「借金をしてたのに、お金をもらえるの?なんだか、変な感じね」
「そうですかね?リエナさんだって、お客さんがお代を置いていって、それが多すぎたら、追いかけて返しますよね」
「それはそうだけれど」
「借りたお金におまけをつけて返すのは解りますけれど、おまけのほうが多くなったらおかしいじゃないですか」
「……そういう問題なの?」
「そういう問題です」
焼きメレンゲを口にいれた。さくっとしゅわわで甘くておいしい。レモン風味のやつも混ざってる。手が停まらない。
「ツァリアスさん、お菓子つくるの上手ですね!凄くおいしい」
「マオさんほどではないですよ」ツァリアスさんは含羞んで笑う。「お菓子は、よくお相伴にあずかっていたんです」




