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四月の雨亭が見えてきた、と思ったら、グロッシェさんとリエナさんがわっと走ってきて、リエナさんが俺を抱え上げた。体力!
リエナさんは俺を小脇に抱えて(セロベルさんにもこれやられたな)、こばしりに門を潜った。グロッシェさんがちょこまか走ってついてくる。「マオさん、よかった」
「心配したのよ!」
リエナさんはそう云って、食堂へ走り込み、俺を椅子へ降ろした。「いきなり居なくなるなんて!」
リエナさんは、ぎゅっと俺を抱きしめる。ふっくらした腕でしめあげられ、息が詰まった。リエナさんの腕を叩いて、苦しいことを伝えようとする。
「あ、ごめんなさい」
「……こっちこそ。すみません。心配してくれたんですね」
「当然でしょ、ジーナは居なくなるし、ミューも廟から居なくなっちゃったって聴いて、わたし達生きた心地がしなかったわ」
「マオお帰り!」
サッディレくんとアーレンセさんが厨房から飛び出してきた。ワゴンを押している。リエナさんと三人で、ワゴンの上のものをテーブルへ並べはじめた。俺の袖をぎゅっと掴んだグロッシェさんは、耳をへたらせ、涙声を出す。「マオさんをひとりで廟に行かせたわたしの責任です。ごめんなさい」
「いえいえ、そんな。俺がどじふんだんです」
「マオ、おなかすいてるだろ?」
「サッディレくんとふたりでつくったんですよ」
目を遣る。テーブルには、湯気を立てるスープのはいったお皿と、焼きたてのパン、フレッシュチーズのたっぷりはいったルッコラとちしゃのサラダ、焼いてぱりっと皮の弾けた腸詰め、焼きりんごの詰まったバットが並んでいる。
うまそう。さっきご飯食べたけど、まだ食べられる。
「マオさん、お菓子もありますよ」
ツァリアスさんとベッツィさんが出てきた。どちらもかごを持っていて、なかにはクッキー・ビスケット・マドレーヌ・焼きメレンゲ・パウンドケーキなどがこれでもかと詰め込まれている。うまそー!「食べていいの?」
「勿論よ!おかわりあるからね」
「じゃあ……」
ツィークくん達が走り込んできて、口いっぱい焼きりんごを頬張る俺に、目をまるくした。
みんなも一緒に、と誘って、はやめの夕飯になる。
警邏隊から知らされてはいたみたいだけれど、俺からもざっくりと説明をした。ジーナちゃんをさらったのはマイファレット家だと知ると、リエナさんはなにか叫んでテーブルを殴った。罵りの言葉みたいだが、翻訳されないので意味が解らない。その後、ミューくんが切られようが刺されようが平然としてジーナちゃんをまもったと知ると、リエナさんは涙ぐんでミューくんがいかに素晴らしいかを喚く。ほかの五人もそれには同意した。




