791
グエンくんが、聴取が終わったようで、傭兵へ頭を下げた。リーニくんが近付いていって、肩を抱く。はげましているのかなぐさめているのか、グエンくんの表情がちょっと和らいだ。リーニくんはそつがない。
ツィークくんがもう一度テーブルを叩いた。「きいてますか?」
「はい」
「……彼らのこと」ツィークくんは顎をしゃくって、けもみみさん達を示した。「どうして知ったんです?」
「あー……簡単に云うと、四月の雨亭に雇われたから、かな」
そもそも、セロベルさんが借金で首がまわらなくなっていたから、俺みたいな能力証もないあやしいやつを雇ってくれた訳だけど。
ツィークくんは上体を屈める。
「耳持ちを集めてる、っていうのは、商人協会から聴いてはいました。それを、どうしてマオさんが?」
「あ、問題視されてるって本当だったんだ」
「はあ?」
「レントに連れてきてくれたひとが、云ってたんです」
「誰です」
迷ってから、結局口に出した。「ハーバラムさんっていう、行商をしてるひとです。荒れ地近くの村の」
「荒れ地?……ああ、マオさんは荒れ地から来たんでしたっけえ」
ツィークくんの云う「荒れ地」は、荒れ地近くの村も含めたものだろうけれど、俺は本当に荒れ地から来たのだ。なんだかそれを云われたみたいな気がして、笑ってごまかす。
「で、彼らを解放するだの、借金を棒引きにするだの、なんなんですかあなた?意味が解らないです」
「えへ。ツィークくん、喋りかたこわいよ?」
「気色悪いからやめて下さい」
「えー、一緒のお布団をかぶった仲じゃない」
近場に居た傭兵数名がばっとこちらを振り向いた。ツィークくんが赤くなっている。「語弊のある云いかたはやめてもらえますか!」
「語弊もなにも、事実でしょう……」
「えー」リーニくんがとことこやってきて、ツィークくんの肩に手を置いた。「ツィークさんかっこいいなって思ってたんだけどな。マオがいいの?」
「お、俺は男に興味ありませんっ」
「それはほら、試してみたら案外、ってこともあるし。僕、職業が娼妓だよ。初めてにはぴったり」リーニくんはツィークくんの肩に顎をのせ、ささやく。「僕たちの話も真剣に聴いてくれたし。安くしてあげてもいいんだけどな」
「やめてくださいっ」
ツィークくんがリーニくんの手を振り払い、後退る。「と。とにかく。またくわしく話してもらいますから」
そう云って、けもみみさん達のほうへ逃げてしまった。はずかしかったのかな。
リーニくんと目が合うと、いたずらっぽくウインクされた。俺が困っていたので、ツィークくんを追い払ってくれたみたいだ。リーニくんって凄く優秀。




