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馬車から降りた。かたまった体を解そうと伸びをする。
腕を降ろし、くるっと振り返って、大口を開けた。
空はうすぐらくて、星がきらきらしている。今夜は半月だ。
少しはなれたところにまちがある。
高ーい石壁と、開け放たれた大きな門。それに吸いこまれてゆく行列。あと、もれてくる灯。
夜なのに、レントは明るかった。勿論もとの世界程じゃない。でも、もとの世界の田舎より、レントのほうが明るい。あんなに明るくて、燃料は大丈夫なのかな?
列が動く。ちょこまかと馬車へついていった。ハーバラムさんがトゥアフェーノを撫でている。
「レントは出入りに厳しくてね」
ひょいと指差すほうを見た。門の傍に小屋があって、その前にお揃いの鎧姿のひとがたむろしている。「警邏隊が居るだろ? 門の随分手前から馬車を降りとかないと叱られるんだよ」
警邏隊のひと達は、レントへ這入ろうとしているひと達の馬車を調べたり、なにやら質問したりしている。だが、列の進む速度は遅くはなかった。
すぐに順番がまわってくる。警邏隊が馬車のなかをたしかめ、トゥアフェーノの様子を見る。魔につかれていないかの検査らしい。「大丈夫だ」
「馬車は問題ないな。レントへ来た目的は?」
「商売です。紙や、インクを売りに」
商人証を見せ、ハーバラムさんが愛想よく云って、こちらを示す。「あの子は仕事さがしです。あっちの背が高いのは、見習い商人で」
「そうか。お前たち三人はこちらの護衛だな?」
イルクさん達が姿勢を正してはいと返事した。門衛は頷き、ハーバラムさんへ商人証を返した。「遠いところをお疲れさま。あんたの商売に天の加護があるよう」
門衛はにこっとしてそう云う。レントへはいる許可は、そうやってあっさりおりた。
「マオ、置いてくぞ」
きょろきょろしながら歩いていると、ダストくんに叱られた。
首をすくめ、馬車まで小走りで追いつく。「ごめん」
「めずらしいのは解るけどさ。見物は夜より昼間のがいいぜ、安全だから」
「うん。そうだね。ダストくん、レントのこと、くわしいの」
「たまに買いものなんかしてた。実技で指環やら腕環やらはすぐぶっこわれるから。上より安くていいもんも、ちゃんとさがせばあるんだ」
成程。
でもシアイルのやつらはお高くとまってておりねーんだとダストくんは吐き捨てた。余程シアイル出身の学生にちくちくやられたらしい。
ハーバラムさんが馬車を停めた。「今夜はここへ泊まるよ」




