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ミューくん達の近くへ行った。ちらっとけもみみさん達を示し、低声で訊く。
「ミューくん、彼らの具合なんだけど……」
「よくないですよ」ミューくんも低声だ。「とても酷い情況です」
やっぱりそうなのか。少しづつでもよくなってくれればいいけど。
リッターくんが喋った。「よくないとは?」
ミューくんがびくつく。見れば、リッターくんはマグをからにし、どうやら食事は終えたらしい。
ジーナちゃんが眉をひそめた。
「リッター、ミューをおどかさないで」
「おどかしたつもりはない。具合がよくないとは?解るのか」
ミューくんはからになったマグを置いて、リッターくんからじりじりと距離をとる。結果的に、ジーナちゃんに密着する格好になった。
「えっと。……あの。なんとなくだけど、解る。なんとなくだけど」
「それは素晴らしい」
リッターくんはこっくり頷く。「お前は俺の理想だ」
ミューくんがむせた。ジーナちゃんがリッターくんを睨みつける。かなり兇悪な目付きだ。リッターくんは恬然としている。
「リッター、あなた、もしミューに危害を加えるようなことがあったら」
「そんなことはあり得ない。俺はミューを大切にする」
ミューくんが苦しそうに咳をしている。ジーナちゃんの表情は、かつて見たことがないくらいに険しい。あのー、多分リッターくんは、口下手なだけだよ。
俺ははははと笑った。
「リッターくん、もうちょっと言葉を選ぼうか?」
「……解った。ミューは俺にとって大事なひとだ」
だから。
ミューくんが自分に恢復魔法をかけて、さっと席を立った。まだ目を覚まさないリューのところへ行って、恢復魔法をかけている。ジーナちゃんも席を立った。
「リッター・ロヴィオダーリ、云っておきますけれど、ミューはファバーシウスの嫡男よ。妙な感情を抱くのはおやめ」
「妙?好きになってはいけないのか」
ジーナちゃんは言葉を失い、リッターくんの肩口をばんとひっ叩いてから、ミューくんの許へと駈けていった。
俺は低声で云う。
「リッターくん、言葉は慎重に選んでよ-。誤解されちゃうよ?」
「誤解」
小首を傾げるリッターくんに、説明しようとした時だ。扉が破られた。
リッターくんが剣を抜いてそちらへ走り、ユラちゃんが両掌を天へ向けた。ミューくんとジーナちゃんはそれぞれの得物をかまえ、グエンくんとリュー達を背に庇う。サキくんとリオちゃんはさっと走って行って、けもみみさん達の前に立った。リオちゃんはパンをもぐもぐしている。
「リッター、避けなさい」
「解った」
リオちゃんが信じられない速度で扉へと走っていった。ジーナちゃんの姿が消え、サキくんが杖を振る。「牆壁」




