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「そんなの云いだしたら、切りがないじゃない。誰だって疑えるよ。先生がたが悪いことをしないと決まってる訳でもない」
サフェくんは泣くような声で云い、金髪くんは穏やかに、宥めるように返す。
「ああ。だから俺は、御山にしっぺ返しが来るのが道理と云ったんだ。疑いでものを判断すれば、切りがなくなる。例えば、俺がこうしてお前らをつれだしたのは、お前らを殺す為の計画の一部かもしれない」
サフェくんが口を噤む。金髪くんは冷静に続ける。
「お前らを安心させて、味方と思わせてつれだし、殺す。お前らは業務を怠り、或いは、本来届ける相手ではない人間に、金銭などとひきかえに御山の大切な資料を渡した。または、御山にとって怪しからぬ行いをしようとした。だから、同行している警護班が切った。そういうことにもできる。だろう? 本来の道程から外れたお前達が悪いと、そういいはる訳だ」
サフェくんはむっとして、金髪くんを睨んだ。金髪くんは、かすかに笑う。
「云っとくけど、そんなつもりはないぞ。勿論な。こいつを今、助けたって、俺に得はないし、危ないことばかりだ。でも、おかしな理屈で御山が動くのはいやだから、こうしてる。妙な正義を振りまわして、英雄気取りでお前らの味方をする純朴な青年を演じても、それこそ無駄だ」
後半は頭を振り、吐き捨てるようだった。でもすぐに、穏やかな調子に戻る。
「俺は、おかしな理屈でひとを殺すのがいやだからこうしてる。まっとうな理屈で動きたい。それは俺にとっては普通のことだ。お前らにはおかしく見えるかもしれんが、それは事実だ。……なあ、わかったろ。疑いはじめたら、終わりがなくなる。無理に理屈を付けようと思えば付けられる。損得、利害、正義、いろんな理由でひとは動くからな。だから、人間が人間を裁くとうまくいかない場合がある。自分の考えを反映してしまうだろう。俺はこういう理屈で動くから、こいつもこうだ、と。そういう人間も居る。このような重大な事柄はやはり、主に委ねるのが一番だ。……俺は、そう思い込んでいる人間だってことだ」
金髪くんは頷き、サフェくんは低声で云った。「僕は君のこと、疑ってないよ。疑う理由もないもん。僕だってこれ、正しいと思い込んでるし、あらためるつもりもないから」
それには、金髪くんは吃驚したらしい。口を開けたけれど、声は出なかった。なんにも云わなかった。




