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ある程度で警護班は、切り払うのをやめた。木立に這入り、歩くのに邪魔なほどの雑草は減ったからだ。木陰になるから日光が足りず、草はあまり伸びなくなる。くらくてはっきりはしないけれど、樹皮の感じや垣間見える夜空から、これらは広葉樹だな。
草を切り払うのを辞めた理由は、それだけではないだろう。彼は、歩いた形跡を残すのをいやがっている。木の根や石を踏め、というのは、足跡を残すなという意味だ。歩きにくいことこの上ないが、彼の指示はつまり、誰かに追われる可能性を考えているということで。
「それ、消せ」
警護班が振り返って、そう云った。サフェくんはランタンの火を消し、収納した。わずかの光でもなくなると、途端に心細くなる。上が一部、開けているから、かすかに星明かりはあってまっくらではないといえ、それでも。
そもそもこんな、街道から外れるなんて、おかしなこと、従う意味はない。この向こう、彼の歩いていく先に「お届け先」があるのだとしても、俺達三人で行動する必要は、まったくなかった。ルーレウさんともうひとりの警護班、それにバルドさん達という護衛を、何故置いていくのか。起こしもせず、そっとあのテントから出ていくなんて、逃げるようなことを何故、する。
いや、これは逃げているんだろう。警護班のあの様子、警戒して、足跡もあしおともおそれているあの様子。追っ手に怯えている。彼がなにかから逃げているとして、俺がついていく意味は?
でも、サフェくんから頼まれた。俺はそれを断れない。サフェくんは、めったなことでは、あんなふうに頼んでこない。あんな顔でお願いなんて云わない。彼がそれだけ云うのだから、「それだけ」のことなのだ。
「サフェくん」
あの警護班に合わせて歩いている所為で、息が苦しい。多分、彼は俺達に会わせて多少は速度を落としているのだろうけれど、それでも充分はやい。ほとんど走っているようなものだ。
息を切らしながら、小さな声で云った。「これ、どういうこと?」
「ごめん、あとで」サフェくんの声はもっと小さく、張り詰めている。「本当にごめん。僕を信じて」
それは吝かではない。俺を信じてくれたサフェくんを、俺は信じる。普段控えめで、助けを求めること、他人になにかを頼むことを躊躇するサフェくんが、ここまでしたのだから、理由は絶対にある。
「水、くれ」
しばらく行って、大きな木(こっちの植物だと思う。名前はわからない。多分広葉樹)の傍で、警護班がそう云った。険しい顔をしている。昨日も似たような顔をしていたが、昨日とは違う。怯えてるんだと思う。はっきりわからないけれど、多分。




