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ルーレウさんがふと、サフェくんの顔を見た。まじまじと。それで俺は、ごまかすみたいに云った。俺が無駄にサフェくんを怯えさせたかもと思ったから、その為に警護班がサフェくんに悪印象を持ったらいやだなと思って。「時間がかかるって、遠いところまで行くんですか」
「ああ。あー……ある村までね」
ルーレウさんはいいよどむ。それから、にこやかな顔をこちらへ向けて、云った。
「君らが知らないような小さな村だ。そこに本を運ぶように云われている。相手の名前も聴いているんだが、君達には明かさないでいいと、先生が」
「はあ。わかりました」
荷物を持っていく相手が、誰なのかわからない。内密なお仕事ってことか。先生の指示なら仕方あるまい。それならそれで、とっとと云ってほしかった。……明かさないでいい、かあ。喋るなと云われているけれど、門衛や、警邏隊も居る手前、そういう表現は控えたのだろうな。
「何日くらいかかるんです?」
「うーん……天気が崩れなければ、八日程度かな」
八日? 結構かかるんだな。ああ、往復八日ってこと? ならまだわかるけど、馬車つかえないのかあ、そうかあ。山の上にある村なのかな。だとしたらトゥアフェーノとかトゥレトゥススとかのせなかにのるとか……ああ、ああいうのも体力居るんだっけ。うーむ。馬車をつかえないのは痛い。かといって、険しい山道で動物のせなかにのるのも厳しい。
ルーレウさんはちょっと歯切れが悪い。行き先を云えないというせいげんがあるからだろう。「そう、難しいことでもない。移動に関しては、我々に任せてくれれば……君らも、安心だろう」
「はい。頼りますね」
ルーレウさんはにこっとする。お仕事のことで緊張してるのかな。どうにも、ぎこちない。
サフェくんが、杖を持っていない手で、俺の袖をつまんだ。俺はサフェくんを見る。「ん? サフェくん、なあに?」
サフェくんは俯きがちで、上目に俺を見る。かすかな声を出す。
「マオが居なくなったら、寮舎、大変だろうなって思って。大丈夫? ルクトや、サレテットだけでは……マオは」
「心配はないよ」
ルーレウさんはらしくなく遮って、幾らか笑った。「勿論、上から助っ人が、幾らも来てくれる。マオの働きはたしかに、数人分だから、ぬけられたら困るんだが、この仕事は彼でないとできないからね」
荷運びだものな。俺の収納空間は、役に立つ。だから、変だと思っていようが、断る、という選択肢がなかったのだ。




