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短剣をベルトへはさんで、次はハーバラムさんとの顔合わせだ。
ハーバラムさんは、三頭立ての馬車(正確にはトゥアフェーノ車だ)に乗ってきていた。馬車はサイン家の前に停めてあって、シアナンさんやラトさんで、肥料や毛糸、布、ドライフルーツなんかを積み込んでいる。
マントの土汚れを落とそうと躍起になっているダストくんへ話し掛ける。「行商さんって、収納空間持ちじゃないの?」
「うん? ああ、収納空間持ちだよ。でも、何でも彼でもいれるもんじゃないだろ」
ああ、肥料と食べものを一緒にしたくないのかな? 匂いが移りそうだし。
シアナンさんと楽しそうに言葉を交わしながら、男のひとが降りてきた。
この村のひとと違って、肌の色が少しだけ明るい。コーヒー牛乳くらいかな。紫っぽい濃紺の髪をきつく三つ編みにして、頭に細い金鎖と小さい宝石の飾りをつけている。三つ編みには色とりどりの細いリボンが編み込まれていた。
ハーバラムさんは、頭こそ飾り立てているが、笑顔は気取らない感じで品があった。
ナジさんが片手を挙げる。「ハーバラム」
「ああ、ナジ、久し振り。元気にしていたみたいだね」
「まあな」ナジさんはダストくんの腕を引いた。「勉強させてやってくれ」
「ああ、ダスト坊、大きくなったねえ。入山したんだって? ナジは鼻が高いだろうね」
ダストくんは首をすくめた。ナジさんが笑う。「いやいや、無事下山できたのが信じられんくらいの成績の悪さでなあ。しかし、体は丈夫だし、収納空間もある。共通語だけは完璧にして戻った。いつかはうちの商品を、町へ売りに行かせようと思ってる」
「じゃあわたしの商売敵だ」
ハーバラムさんがころころ笑った。
ナジさんがこちらを示した。
「この子はマオだ。ダストが荒れ地で難儀していたのを助けてくれてな。レントまで連れてってやってくれ」
「あいよ。そちらさんの運賃は売り上げから引いとくよ」
「かまわん」
ハーバラムさんは顔を背け、肩を震わせた。すぐにまたこちらを向くが、唇がぷるぷるしている。「冗談も通じやしない。ダスト坊が荷運びを幾らか肩代わりしてくれるんだから、運賃なんて取らないよ」
「そうか。この半人前で助けになるか?」
「ダスト坊も苦労するねえ」
最後は呆れたように云って、ハーバラムさんはダストくんの頭を撫でた。背伸びしないと届かないので、またひとしきり笑っている。ダストくんは居心地悪そう。




