魔王の身の振りかたについて……(45.5)
マオが、御山で下働きしたい、と鼻息荒く宣言してから三十分後。
ナジ、シアナン、ラト、ナジの妻ドールは、じゅうたんの上へ車座になって話し合い中だった。
こういう話し合いには通常、女は関わらない。ただし、ドールは御山へ行っていたし、腕のいい「調剤士」だ。男並みの扱いを受けてもおかしくはない。
特に、今回の場合、入山経験者の意見は大切だ。
「しかし変な坊やだ。なあ、シアナン」
ラトがくっくっと笑いつつ、苦しそうにいった。シアナンは、しかつめらしくたしなめるが、肩が震えている。笑いをこらえているのだ。
「らと、いい加減笑うのをやめろ」
「だって面白いだろう。本を読みたいから、御山で働きたいだと!聴いたこともないぜ」
入山したいから魔法を教えてくれだとか、そういう相談なら聴かないでもない。
本を読みたいから。しかも、学生としてではなく、下働きとして!
マオの云うことはとんちんかんで、とても面白い。だからラトは笑いをこらえられないし、シアナンは頑張っているが今にも声をたてて笑いそうだ。
ナジもにやにやしていたし、ドールは口許を覆って小さく笑っていた。
「でもね」
ドールがささやく。「悪い考えではないのじゃない?」
「慥かにな。御山ほど安全なところもあるまい」
それもまた、常識ではあった。御山はどの国より強い。学者たちはかつての学生がほとんどで、詰まり、変わった特殊能力や職業を持っているか、能力値がとても高いのだ。
ついでに、各国から優秀な若者が集まっているから、それがある意味人質として機能している。この千年以上、だから御山へ牙をむいたばかは居ない。
裾野だって安全ではあるが、荒れ地が近い分魔物も多く出る。御山にはそんなこともほぼない。この世で一番安全で、悪しきものからほど遠い場所だ。
マオはやはり、どこかへ売られた子だったようだ。
お風呂にはいりたいと云っていたらしいし、毎日のように池で体を洗う。綺麗好きと云っても度が過ぎた感じがするから、まあ、そういうことなのだろう。
御山は風紀もきちんとしている。マオが危険な目にあうことはあるまい。
そこからさらに一時間程話し合いは続き……。
「マオはダストの命の恩人だからな。どうにか算段をつけよう」
四人は頷き合った。




