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草や葉っぱを摘んでいたら、指先が染まっていた。紫色になっている。
ドールさんとちょっと笑いあって、手を洗いに小川へ向かった。材料採集はもうお仕舞。ドールさんは、採ったものを干してくるそう。
手を洗うと色は綺麗におちた。
お昼は、ご飯をつくるのを手伝った。トマトベースの煮込みだ。中身は、モロヘイヤみたいなの、ピーナッツ、とりにく、大き目のビー玉くらいの赤いくだもの。
材料を切ったり、炒めたりした。手際がいいと誉められ、つい胸を張る。食い意地が張っているので、料理はするほうだ。
主食は、ウガリだっけ? フーフーだっけ? お餅みたいなやつ。でっかいお芋を洗って、皮を剥き、切って水にさらして、湯掻いたあと、臼で潰してこねる。子どもの頃に本で読んだやつに似ていた。
「マオ、手は大丈夫?」
「はい」
お芋の皮を剥く段で、間違って手の皮も剥いてしまったのだ。調子に乗るとすぐこうなる。自戒。
収納空間から傷薬(小)を出して、服んでおいた。ひとくちふたくちでぴたっと痛みが治まり、傷もふさがったので、大丈夫だろう。
杵(関東風の)でぐいぐいお芋を潰す。ドールさんには、血が出たけどたいしたことなかった、とごまかした。
粗方潰れたので、こねる作業にはいる。腕環が凄く邪魔なのだが、多分とってはいけないんだろう。
「ドール、ちょっとお願い」
バドさんだ。大ぶりな青々した……文字通り青い皮のバナナを抱えている。
こんにちはと云う。「こんにちはマオ……ドール、祇畏士さまのご一行がいらしたのよ。料理してくれない?」
脈がはやまったのが解る。
でも、なんでもないみたいに、表面は取り繕った。善良な一般人なら祇畏士には怯えない。
「いいけど……」
「ありがとう!お菓子はリーリがつくってくれてるから、お餅をお願い」
「今つくってたところよ」
ドールさんが苦笑した。
バドさんは、お餅の材料としてバナナを持ってきたらしい。すぐに持って行ったほうがよかろうと、お芋のお餅とバナナを交換した。
バドさんがお礼を云っていなくなり、再びお餅づくりをする。
バナナと云ってもそのまま食べるようなのではなく、料理用だ。湯掻いてこねればお餅らしくなるそう。ただ、お芋も加えたほうがおいしい。
なので、もう一度お芋の皮を剥いた。今度は失敗しない。それとバナナを一緒に湯掻き、臼にいれて杵で潰し、こねる。
「祇畏士さまがいらしたら、もてなすものなんですか」
「それは、勿論。魔を滅して下さるかた達ですもの。粗末には扱えないわ」
「……魔を滅するのって、大変なんでしょうね」
「戦わなくちゃいけないから……でも、祇畏士さま達は、誇りをもって行をしておいでなのよ」
誇り……ねえ。
なかには強制されているひとも居るんだろうな、と考えた。適職が「魔王」だけなのと、「祇畏士」だけなのと、どっちがいいのだろう。……魔王よりはましかあー。