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食事の後、テーブルなどを片付けた。エクシザがマルジャン達を促し、馬車へ戻る。マルジャン達にお芋を渡しておく。
タスの様子は見なかった。見たくない気持ちだった。タスに、負担をかけたくないのと、俺がこれ以上ショックをうけたくない。
俺は自分が一番大事なんだろう。
ダストくんとサーダくんは、馬車の番をするそうだ。車輪がひとつ欠けているのはかわらないから、今日は一部の人間は歩く。次のまちまで、運がよければ辿りつくだろう。
馬車のステップに並んで腰掛けるふたりに、ニーバグふたりがじゃれついていた。
俺とほーじくんは並んで歩き、僧坊へ向かっている。みんなを呼んでくる係を仰せつかった。サーダくんの伝糸でなんとかできそうなものだが、もう少し日が昇ってから出発したいとダストくんが云っていたし、俺は井のお水を汲むという目的がある。
ダストくんのはいいわけで、単純に、サーダくんに必要以上に魔力を損なわせたくないんだろう。
ほーじくんから、ダストくんとなにを話していたのか、道々聴いた。サーダくんのことだ。サーダくんが、精神のバランスをかなり崩していること。
「あにさまは、ずっと、休みなく行をこなしてきたから」
ほーじくんは静かに喋る。「一度、長期間休んだことが、だめだったって思ってて……」
「仕方ないことなのにね」
「ん。でも、ファズダあにさまのことは、公表してない。サーダあにさまはただ、体調を崩したんだってことになってて」
ほーじくんは顔をしかめる。「いろいろ、云うひとも、居る。ファズダあにさまが、お休みしてた時期と、半分一緒だから、サーダあにさまと、あの……ああ」
ほーじくんは手で顔を覆った。なにかしら、サーダくんやファズダさんの名誉に関わるような噂があった、ということだろう。
俺はほーじくんの腕を軽く叩いた。
「喋りたくないなら、いいよ」
「……ごめん。ごめんね。これは、ぼくは、云いたくない」
俺はなにも云わない。どこの世のなかでも、ばかは居るのだなと思った。他人が具合を悪くした理由を云々するばかが。
ほーじくんは少しすると、落ち着いたのか、手をおろした。低く云う。
「サーダあにさま、疲れてる。だから、ダストが、療養させたほうがいいって。昨夜も、凄くうなされてて、何度も起きて、ダストもその度に起きてくれてたんだって」
「ああ」
俺はなにを云いたかったんだろう。言葉が続かない。
ほーじくんはかすかに笑う。
「ダストの村なら、騒がしくないし、療養にいいんじゃないかって。ネクゼタリーあにさまに、相談してみる」




