3817
こちらの世界の本は、悪しき魂や魔王をいいふうに書いているものでなければ、校閲がゆるいのか単純にそういうシステムそのものがないのか、とんでもない大嘘や作者の願望丸出しの証拠が乏しい説でも、平気で書いていたりするのだ。
共通語が美しいものだと思っているひとが、各地の言語を認めない、ということは、ありうる。言語も神さまが関わっているらしいからな。
魔王をよく書いてる本は一冊もないけど。どうしてそういう本だけきっちり排除できるのか、教えてほしいものである。検閲があるのかな。だったらむちゃくちゃな誤字脱字や誤植、数字のミスこそなんとかしてほしい。
俺は疲れているのか、単に神経が図太いのか、いつの間にか眠っていた。馬車の揺れは、起きていたら酔うけれど、眠るのにはいい。
がったん、と馬車が大きく揺れ、はっと目を覚ます。
外から、聴いたことのない声がしていた。誰だろう、と思う。
ユラちゃんが席を立ち、扉を開けた。カルナさんとミエラさんは、手をとりあって、不安そうにしている。
扉が開くと、声がはっきり聴こえた。やっぱり聴いたことがない声だ。それに、ネクゼタリーさんとリッターくんの声がたまにまざる。ユラちゃんがぽんと飛び降りるようにして馬車を出て、その会話にまざったようだった。
次の町へ着いたんだろう。門衛さんに、停められているのかな。俺達も顔を見せて、審査してもらうべきかもしれない。
それとも、もしかして、タス達が問題になっているのかな。
面倒だなと思ったけれど、俺は出入り口へ向かい、ステップをおりた。まだ眠い状態で、かすかに暮れかかった空を見る。
外にはネクゼタリーさん、リッターくん、ユラちゃん、ダストくん、それにサーダくんとほーじくんが居た。六人は大体、一ヶ所にまとまっていて、その近くに門衛らしい、体格のいい武装した男性がふたり居る。
俺は欠伸を嚙み殺した。ここは、えっと……キユスだったかな。低めの塀がぐるっと、その町全体を囲んでいる、と思う。端から端まで見えないけれど、多分。
ネクゼタリーさんが、落ち着いてやわらかい声を出した。門衛がネクゼタリーさんに注目する。ほーじくんが踵を返し、ティヴァイン兄弟がかりてきた馬車へ向かう。ユラちゃんはこちらへ戻ってきて、俺に気付いてびくっとした。
おそらくだけど、馬車にのっている人間を全員おろせ、と、そういう話になったのだろう。ほーじくんが怯えきったニニくんを、ユラちゃんが手をとりあうカルナさん達をつれてきた。
感想ありがとうございます。はげみになります。




