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お昼のお祈りの鐘が鳴り始めた。
ミューくんとジーナちゃんは、茨の冠をたぐりはじめる。
リッターくんとユラちゃんは、目を瞑った。
サキくんとリオちゃんは、微笑んで四人を見ている。
サキくんが立ち上がって、こちらへ来た。俺の隣に腰掛けて、低声で云う。
「マオさん、お願いしてもいいですか?」
「なあに?」
「僕、戦士科にすすみますけれど、還元の練習は続けたいんです。だから、たまに、付き合ってくれませんか?」
サキくんは小さく苦笑する。「僕、ひとりでなにかするのって、あんまり得意じゃなくって。それに、マオさんと一緒だったら、効果が上がりそうですし」
「ええっと。うん。わかった」
俺が承諾すると、サキくんはほっとしたみたいに息を吐いて、俺の手を軽く叩いた。
「それじゃあ、マオさん、還元したいものをなんでも持ってきてくださいね。僕、還元の力をもっと強めたいんです。ユラの云うように、いつか職業と統合するかもしれないから」
俺は頷いた。また、空手形だな、と思ったけれど、断ることなんてできない。サキくんを傷付けたくない。みんなもだ。
でも、約束を破ったら、傷付けてしまうのにね。
鐘がずっと鳴っている。
その音が、体にしみこんでいくみたいだ。
「ああ……」
サキくんが溜め息みたいな声を出して、俺の傍を離れる。リオちゃんがにっこり笑う。お祈りを終わらせていたリッターくんとユラちゃんが、身動ぎした。ミューくんがジーナちゃんの腕を軽く叩き、湖のほうを示す。
俺もそちらを見た。
六人がなにを見ているのか、俺にははじめ、わからなかった。
でも、理解した。
道の上ではなくて、空に居たのだ。
「ほーじくん」
立ち上がる。
ほーじくんは優雅にはばたいて、飛行してくる。ローブがひらひらしている。大きく羽をひろげて滑空し、すっと地面へ降りた。「マオ。フォージ卿のところへ」
「そうよ、行ってあげなさい」
ジーナちゃんとユラちゃんの、優しい声がする。
ほーじくんは、神おろしの先生達を、置いてきたらしい。急いで俺に会いに来てくれたんだと思ったら、感情がどうしようもなくなった。
俺はほーじくんへ向かって歩いていく。次第に、小走りになった。自分でも停められない。ほーじくんの顔を間近で見て、宣言おめでとうと云いたい。急いで来てくれてありがとうと。
走っていくと、ほーじくんの表情はわかった。
彼は肩で息をしていた。とても苦しそうに見えた。




