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空き間の私兵達も、大変だろう。三月以降にはいった新人さん達は、三月の天罰を、直に経験してはいない。それに、御山に対する忠誠心はあっても、娼妓を下に見ているひとというのは幾らでも存在する。
一番の懸念はそこじゃない。南の娼妓達は、娼妓だ。娼妓としてお仕事をしてきている。その、御山歴の短い私兵達のなかに、なじみが居ないとも限らない。
もし、いつも南の娼妓を買っている感覚で、不用意に話しかけたりしたら、大惨事が起こるだろう。
天罰で死人を出すなんて、誰だってごめんだ。だから、七月にはいってこちら、新人の私兵達は山道掃除に関して相当厳しく指導されている。私兵の数は多くない(普段は傭兵協会から警邏隊が派遣されていて、私兵達だけで空き間をまもっている訳ではない)から、新人達を山道掃除から完全に閉め出すこともできないらしい。危なそうなひと達は、私兵用の建物から一歩も出るなって命ぜられているそうだけど。
空き間で娼妓に対して失礼がないよう、掃除と点検を一日かけてやるのもわかる。テーブルだか椅子だかに娼妓を侮辱する文言を彫り込んで、天罰をくらった指物師が居たそうだから。
〈ほんと、ごめんね。でも、ロヴィオダーリ卿達が一緒なら、大丈夫でしょ。絶対にひとりにならないでね。あんたは明日、山道掃除の指揮を執るんだから〉
それは正確ではないが、外れてもいない。俺とメイリィさんがほとんどを仕切っている。
頷いた。タイティーダさんがなにか喚き、しばらく低声の悪態が続いてから、再び俺へ向けて喋る。〈だから、ひとりでうろうろしないで。ああ、伝糸を持ってるひとが一緒だったらよかったんだけど。なにかあっても、絶対に、ロヴィオダーリ卿達と一緒に居て〉
タイティーダさんの声はしなくなった。俺は苦笑いしていた。彼女の心配は、もしかしたら、ほーじくんに関連してのことかもしれないと思ったからだ。俺とほーじくんが親しいことは、特別チームのひと達にはしっかりばれている。
ほーじくんから手をひけと、一度、脅された。だから、ああいうことがこれから頻繁に起こっても、おかしくないのだと思う。ほーじくんが祇畏士になったら、いろんなことが自由になるから。
ミューくんが笑い声をたてた。「じゃあ、四月の雨亭へ行く前に、みんなで秋の娘亭へ行かないか? そこでお菓子を買って、セロベルさん達へのお土産にしようぜ」
賛成の声があがる。この子達は本当に、とても仲好くなったな。




