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「あ、そうだ」
俺は、一番近くに居る、リッターくん達へ近付いた。リッターくんは魔法の制御に苦心しているらしく、表情がやけにかたい。
芝生にあぐらをかいているふたりの傍へすわった。「ユラちゃん、リッターくん」
「なあに」
「約束のお弁当、つくってきたんだけど、今渡すよ」
ユラちゃんが勢いよくこちらを向き、操っていた炎がぱんと消失した。
ユラちゃんが、お弁当よ! と叫んだので、みんなが集まってきた。ミューくんは寝ぼけ眼で、ジーナちゃんに手をひかれている。
サキくんは頭に花を飾り、リオちゃんが持っていた花環を、くすくす笑いながらリッターくんの頭にのせる。「リッターくん、よく似合ってるわ」
「そうか?」
「ええとっても!」
リッターくんとリオちゃんは、正反対に見えるけれど、かなり仲好しだ。どちらも自然に、なんの緊張も見せずに喋っている。別の地域出身だとは思えないくらいだ。
ミューくんが目をこすって、俺がとりだした折り箱を見、わっと歓声を上げた。「マオさん、ほんとにつくってきてくれたんだ」
「勿論。ちゃんとほーじくんの分もあるよ」
「じゃあ、フォージ卿の分は、わたしが預かるわ」
ジーナちゃんが折り箱をふたつ、すくいあげた。きちんと麻紐で縛っているし、水分が出そうなものには対策をしているから、大丈夫だと思う。片栗粉でかためたり、オーツ麦をしいて水分を吸わせたりしているのだ。
ジーナちゃんが羽織ったローブに、折り箱は消えた。隠しポケットが沢山ある服を、幾つも持っているのだ、ジーナちゃんは。
湖の傍で、ほーじくんに渡したかったのだけれど、そういう機会があるかどうかわからない。もしかしたら横槍がはいって、神おろしだとか、ディファーズのひと達に、湖の傍から追い出されるかもしれない。ジーナちゃんは、そういうことも考えて、預かってくれたのだ。ジーナちゃんなら、ミューくんの付き添いでもあるのだし、追い出す口実がディファーズのひと達にはない。
ユラちゃんが期待に満ちた顔で俺を見た。「ねえマオ、クッキーとかビスケットもないの?」
俺はにこっとして、生姜ビスケットの包みをとりだし、ユラちゃんがガッツポーズした。
みんなそれぞれ、お弁当を持った。時間がいつになるかはわからないけれど、ふたり、宣言をするのだから、ひとりめの宣言の間は待たされるのが確定だ。その間に食べる予定である。ひとりめの子は、ふたりめが宣言している間に食べるということ。
暢気にスケジュールを決めるのはとても楽しかった。




