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「植栽は頻繁に植えかえてるんだ。だから、学生でも先生でも、気をぬくと迷っちゃう。それって、ほら、入山者ってのはみんな、色んな物事を知りたがるよね? 道から外れて、隠し扉を見付けちゃう子も居て……だからなんだって。わざと迷いやすくして、その道を必死で覚えた頃にはまた道が変化してて……」
俺達はまず、洗面所へ向かっていた。何故って、手を洗う為だ。
先輩奉公人は、数人、俺とメイリィさんがつかっている洗面所へ来た。俺達はお喋りしながら手を洗い、俺含め数人はきがえもする。お掃除でかなり汗をかいたので。
それから、広間へ向かった。「や、お疲れ、ファラワ」
「ほんとに疲れたよー。ケーキふたつって、キーラに伝えといてー」
ファラワさんや、ほかの先輩奉公人とすれ違う。慥か、ファラワさんは、ランスさん達と一緒に神聖公国寮へ行っていたっけ。
ていうか、ケーキっておかわりできるんだ。いいこと聴いた。
広間に辿りつく。あしやら腕やらせなかやら、いろんなところが筋肉痛だ。席について伸びをすると、察してくれたのか、メイリィさんが恢復してくれた。
「ありがと、メイリィさん」
「あ、ランス達だ」
サフェくんが手を振った。学生の衝撃からはもう立ち直ったのか、空腹が勝っているのか、いつもの調子だ。
出入り口に目を遣ると、ぐったり倦み疲れた様子で、ディロさんを先頭に新入り達が這入ってくるところだった。俺達よりも、お仕事が多かったのかな。
「お疲れ」
テーブルにひっくり返してあるゴブレットを正立にして、お水を注いだ。「どうぞ」
サフェくん達もそうする。俺と違って、魔法でお水を出しているけれど。
ランスさん達は席に着き、はーっと息を吐いてから、お水を飲んだ。
「……ありがと。あー、疲れた」
「ほんとよもう。ああ、くしゃくしゃする。腹がたつったら」
厨房担当のひとがご飯を運んできてくれた。お膳を配る。うわ、おいしそうなオムレツ! 刻んだピーマンと人参がはいってる。マッシュルームのデミグラスソース煮込みに、厚切りのハムでチーズをはさんで焼いたもの、レタスのサラダにかかってるのはサウザンアイランドドレッシングかな? それにふっくらふくらんだソーダブレッド。ごわっとした表面は黄金色で、かすかにヨーグルトみたいな香りがする。
デザートははちみつの匂いがする、しっとりしたバターケーキに、バタークリームがどっさり添えられたもの。ほんと最高の食環境だ。これたらふく食べていいなんて、とんでもなくいい夢を見ているみたい。




