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ヤクザイってどれ、と、コマちゃんが興味津々で訊いてきたので、俺とサキくんは笑顔で、実際生えている薬草を示しながら、説明した。
「これが、到来花」
「マオちゃんのかんむりのやつなのだ」
「うん。でもほら、こういうふうに、青紫がひとつまじってるのがあるでしょ? これじゃないとお薬にはできないんだって。だから、これはお薬にならない」
頭の上の花冠を指さした。コマちゃんは頷く。
「ふむふむ。でもそっちは、サキおにーさんのアイがたっぷりなのだ?」
むせた。だから違うってば。
コマちゃんはにまにましている。くっ、女児にからかわれてる。
俺は顔を背ける。「そ、そうだよ。ねっ、サキくん!」
「はい」
サキくんが苦しそうに笑いながら、肯定した。……サキくんが笑ってくれたから、いいかあ。
コマちゃんはにっこり。
「コマ?」
林になっているところから、女の子の声がした。コマちゃんが、あっ、と、振り返る。「ポルン。あっ、コマ、カクレンボわすれてたのだ」
コマちゃんは額に手を遣って、目をぱちぱちさせる。木のかげから、スカートの裾がちらっと覗いた。
「そんなことだろうと思った。……そいつら、誰?」
「マオちゃんとサキおにーさんだよ。おかしくれた」
「コマ、知らないひとからお菓子をもらうなんて」
「しってるひとだもん」
コマちゃんはそう云って、くるっとまわった。こちらを向いて停止する。「マオちゃん、サキおにーさん、おかしありがと、なのだ。コマ、ともだちと、帰るね」
「うん。ほんとに大丈夫? 送るよ」
「だいじょおぶ」
コマちゃんはにやっとする。それから、ちょっと逡巡した。
「マオちゃん、おねがいあるのだ」
「なあに?」
「あのね。……そのかんむり、ちょうだい」
多分、ほんとは別のことを云いたかったんだと思う。なんとなくそう観じた。でも、追求するのも変だし、俺は頷いて花冠を外す。コマちゃんは顔をほころばせた。
「いいのだ?」
「うん。だって、サキくんがまた、愛情込めてつくってくれるから。だよね、サキくん?」
サキくんがくすくす笑いながら頷いた。
俺は両手で、コマちゃんへ花冠を差し出す。コマちゃんも両手で、恭しくうけとった。まるで、賞状の授与みたいだ。
コマちゃんは嬉しそうに、飛び跳ねて走っていく。「しがつのあめていのせんでん、コマにまかせといて、なのだ!」
「うん。またね!」
手を振ると、コマちゃんも手を振ってくれる。その姿が木立に消えた。
サキくんが笑いをおさめる。「面白い子でしたね」
「うん」
「旅暮らしもいいかもしれないな。マオさん、考えておいてくださいよ」
冗談っぽく云って、サキくんは俺の手をとる。「僕らも帰りましょう」
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あのあとやけ食いしたに違いありませんとも!




