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コマちゃんは、友達何人かと夜の散歩に来て、そのまま隠れん坊をしているらしい。両足を投げ出して座り、俺が渡したマシュマロクッキーを頬張りながら、説明してくれた。
「コマ、るっけんれーねいちざに、いるのだ。そんで、おひるはコウエンがあるから、よるにおさんぽ」
ああ、成程。トゥアフェーノと一緒に来てるらしいから、調教師さんの助手かなにかかな。
少し離れて隣に座る俺が、もうひとつマシュマロクッキーを渡すと、コマちゃんはにっこりした。
「マオちゃん、これおいしい。四月の雨ていのとそっくりなのだ」
「ああ、四月の雨亭のだよ」
「そうなのだ?」
「マオさんは、四月の雨亭の料理人だよ」
サキくんが優しく云うと、コマちゃんは目をきらきらさせて俺を見た。「ほんと?」
「あー、うん。そうだね。職業は料理人じゃないけど」
「そうなのだー。へえー。マオちゃんすっごいのだ。四月の雨てい、ゆうめいなのだ。るっけんれーねはいろんなとこに行くけど、知ってるひといっぱいだよ」
そうなんだ。
コマちゃんはクッキーをかじる。
「ましゅまろおいしー、のだ。えへへ。あ、コマ、おかねもってるのだ。四月の雨てい、ひとがおおくて、あんまり買えないってみんな云うのだ。だから、マオちゃん、コマにおかし売って、なのだ」
コマちゃんはじたばたして、収納空間からお財布をとりだした。俺は右手をひらひらさせる。
「いいよ。コマちゃん、収納空間あるんだったら、沢山あげる」
「でも、」
「かわりに、裾野以外で、四月の雨亭の宣伝しておいて」
俺がにやっとすると、コマちゃんもにやっとした。それから三人で笑う。
「コマちゃん、今更だけど、危なくないの?」
「ん。つよい子、いっしょ」
コマちゃんは、俺が渡すお菓子の包みを、ひとつひとつなかを慥かめながら収納する。かわっていて面白い子だが、ちゃらんぽらんではない。
「マオちゃんと、サキおにーさんこそ、だいじょうぶなのだ? ふたりっきりになれるけどあぶないよ」
「だ、だから、そういうのじゃなくて、薬材採集だって。それに、サキくんは能力値が高いし、頼りになるから」
ん? 今スルーしてしまったが、マオちゃんとサキおにーさん?俺のほうがサキくんより歳上なのに? ……ううん?
コマちゃんは、ふーん、と感心したみたいに頷いた。俺は頭を振って、余計な思考を振り払う。コマちゃんは、サキくんの持つ杖を見ている。
「サキおにーさん、まほーつかうの?」
「ああ……うん。でも、それよりも、還元をつかうよ」
「へえ! カンゲンシなの?」
「ううん」
「サキくんは九月になったら入山するんだよ。宣言は御山で」
コマちゃんは、入山と聴いてもあまり驚かない。へー、と、うすい反応だった。




