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晩ご飯の前、ジーナちゃんの侍女に送られて、ミューくんが帰ってきた。サキくんも、ハーヴィくんを落ち着かせ、厨房へ戻ってくる。
晩ご飯のお客さんの波が落ち着いた頃、俺達三人で、アーフィネルくんがロヴィオダーリ邸に居ることをみんなに話した。みんなも、訳が解らない、と云う表情だ。特に、リッターくんが来るとお菓子の感想をもらっているもと・娼妓組は、もの凄く困惑している。
「それって……どういうこと?」
「俺にも解んない」
俺は頭を振る。実際、解らないのだから、それ以上に云いようはない。
リエナさんが腹立たしげに、オーブンから鉄板をとりだす。上にのっているのは分厚い牛肉で、火が通ってじゅうじゅういっている。「ジーナが顔を見せてくれたと思ったら、リッターがおかしなことをするのね。今年の夏はほんとにおかしいわ」
「小ルモ家って、祇畏士さまの、だよな」
「リッターが僕に小ルモ家のことを訊いたのも、アーフィネルさんを身請けする為だったのかも……競合相手になるか、調べる目的で」
サキくんが溜め息を吐いた。ミューくんがサキくんの袖を軽く引っ張る。サキくんは今にもミューくんにしがみつきそうな顔になる。
そういえばだけど、リッターくん、レニルヴァさんのお家のこと気にしてたな。サキくんの説は、理屈はあってる気がするが、リッターくんらしくはない。
「リータにはわたしから伝えるわ」リエナさんはお膳を調え、ワゴンへのせた。「リッターの云ったことは省いて。あの子が思い詰めてしまう」
誰も反対はしなかった。
警邏隊には、リッターくんがアーフィネルくんを身請けしたと、セロベルさんから伝えてくれる。所在が判明したからには伝えない訳にはいかない。その後、ロヴィオダーリ家へ聴取に行くか、単なる身請けと判断して手をひくかは、警邏隊次第だ。今回の場合、実の妹のリータちゃんになんの連絡もないことと、左右組のいない南の娼妓であることを鑑みて、脅されている可能性も視野にいれ、聴取には行くだろうとのこと。
けど、ハーヴィくんの場合と一緒で、自分の意思でここに居ると云われたらどうしようもない。
「でも、あるんですか、娼妓を脅してつれてくなんて」
「ある」
まかないを食べながらセロベルさんへ訊くと、肯定が返ってきた。「けど、金がねえか、あっても大した位を持ってねえかだぜ。ロヴィオダーリ家がそんなことしてみろ、露見したらとんでもない恥だ。臨検官が来て、もっと具合の悪いことまで明らかになるかもしれない。下手したら閉門まで行くかもな。シアイル貴族はみっともないことを嫌う」
そうかあ。……じゃあ、面倒と目立つことが嫌いなリッターくんのやることじゃない。絶対。




