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俺達はどうしようもなく、ロヴィオダーリ邸の前の通りに立っていた。
もう三十分は経つ。それ以上かも。ジーナちゃんが出てくる気配はない。ミューくんがほとんど瞬きもせずに門の向こうを見ているが、険しい表情のままだ。唇がかすかに動き、どうも、お祈りをしているらしかった。
リッターくんとは友達だし、取り次いでください、と私兵に云えば多分出てきてくれる。でも、ジーナちゃんが忍び込んだからさがしてもいい? なんて云える訳がない。かといって、確証のないアーフィネルくんの話はもっとできない。
ミューくんはじっとしている。サキくんは不安そうに云ったり来たりして、ぶつぶつ云う。
「僕が、僕の所為だ、僕があんなこと云わなければ」
「サキ、君の責任じゃない」ミューくんはロヴィオダーリ邸から目を逸らさない。「俺があっさり手を解かれたのが悪い。残念なことに、俺は体力がなくてね」
「そんな……ミュー、君はなにも悪くないよ。僕が過剰反応した所為だ。ジーナを嘘吐きみたいに云ってしまった。そんなつもりじゃなかったのに。彼女に合わせる顔がない……」
サキくんは今にも泣きそうで、ミューくんは顔色が悪い。
「あと、少しして、ジーナが出てこなかったら……」
ミューくんはごくんと唾を嚥む。「俺が頼んだら、リッターはジーナを一緒にさがしてくれるだろう。なにか、相応の犠牲を払えば、ジーナがばかをやったことを隠してくれるかも」
「だめだ、ミュー、それだけはやめてくれ」
サキくんが血の気を失う。ミューくんの両肩を掴んで自分へ向かせようとするが、ミューくんは体が動いてもぐいと首を捻って、ロヴィオダーリ邸から目を離さない。サキくんはミューくんを揺すぶった。
「ミュー、君はどうしてそうなんだ? 頼むから、自分を大切にして。今度のことは僕の責任だ」
「勿論今すぐの話じゃないよ。ジーナが出てこなかったらだ。あと……俺があと十回お祈りする間」
ミューくんはそう云って、それ以上の議論を封じた。さっきより少しだけ大きな声で、お祈りを捧げる。サキくんは見るからに焦っていた。ミューくんの手首をきつく掴んでいる。絶対に逃がすまいとするみたいに。
流石に、三十分以上門の前にいるというのは、おかしなことだったようだ。私兵達のうち、ひとりがこちらへやってきた。ミューくんはやっぱりお祈りを捧げているし、俺とサキくんはミューくんが動こうとしないから動けない。
「お嬢ちゃんがた、見ない顔だな」
私兵は気さくな調子で、俺に話しかけてきた。にこにこしている。
「この辺の左右組は、ルーメッツ家だったか。新人さんの挨拶まわりかい?にしちゃあ、先輩がついてきてないな」
「あ……えと」




