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リーニくんは怪我をしたらしいのだが、どこをどう怪我したのか解らない。ただ、キャラメイクの時にもらったお薬なら治せると思う。だから渡したいんだけれど、うけとってくれないからなあ。
俺に癒しの力があれば、無理にでも押しかけていって治療するんだけれど、冒瀆に恢復魔法はない。疑似恢復なら、使役している生き物へ自分の体力や魔力を分け与えるってやつだろうが、リーニくんを安全に使役できるか解らないし、大体使役された側が俺のことをどう認識するか。もしかしたら俺に使役されたとはっきり解るかもしれないし、そうなるとこっちの身に危険がある。
ヴェンゼくんがトレイを両手で抱くようにして、ちょっと腰を屈める。焦げ茶の髪がするっと肩から落ちた。「完爾草って、怪我の薬にできるんだよね。それで?」
「そんなとこかな」
意味はないだろうが、怪我のお薬の材料を沢山採ってきたら、例えばジルくんが調剤の練習でそれをつかわせてもらったりしないかなあ、とは考えていた。リーニくんは数回の治療の後に癒し手まで拒否したそうで、今はだから、お薬で治している筈だ。
「リーニって、変なとこで強情っ張りだね」
ねえ、と返す。ヴェンゼくんの声は沈んでいたし、俺もクッキーをかじりながらつい俯いていた。「お薬くらいうけとってくれればいいのに、リーニくんも薄情だよねえ……」
サローちゃんからお代をうけとり、三人に護衛料を渡した。今回は、売り上げからも幾らか分配する契約だ。完爾草は咲いている時間がとても短いし、お花自体がかなり小さいので見付けるのが手間なのだ。ついでに、見付けたからと云って手の届く範囲にお花があるとは限らない。
最初に完爾草をさがしに行った時にかなり大変だったので、それ以降完爾草採集は売り上げからも分配すると決めている。今回は、売り上げが貝貨17枚で、三人には貝貨3枚ずつ。俺は残りの8枚を収納空間へぽいした。
外に出て、四月の雨亭へ向かう。三人は俺を送ってくれる。「最近、奉公の募集がないですねえ」
「ふた月前が最後だったかな」
「あの鐘も、暫く聴かないと物足りないなあ」
俺には違いがいまいち解らんのだが、お祈りの時と下働き募集の鐘、それに試験の最終結果発表の鐘は音が違う。ついでに、下働き募集が締め切られた時も、ビミョーに違う音みたい。俺にはまったく解らん。俺が音に鈍いのでなく、サッディレくんも解ってないから、多分レントや御山に長く住んでいないと解らない違いだ。
「そういえば、図書館の移動、完了しましたよ、マイファレット嬢」
「あら、そうですの」
誤字報告ありがとうございます。助かります。




