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レアディさんは、今もパンやバターなどを配達してくれる。新しく土地を買って、牧場をひろくしたそう。レアディさんは耕作人で、畑はなんとかできるけれど、家畜の世話は苦手で、牧童を数人雇いいれたらしい。アーティくん含め、弟くん達がかわりに配達してくれることもある。
で。
俺はまったくなーんの進歩もなし。レベルも上がってないし、もとの世界に戻るてがかりはひとつも見付からない。なんにもだ。
一年近くこの世界に居るんだし、なにか進展あってもいいんじゃないのとは思うけれど、まっっっっっっっっったくない。なにひとつない。大体、利用に最低でも能力証明証が必要な図書館には近寄れないし、本屋さん巡りもしてみたがめぼしい本は見付からなかった。魔王に関するくわしい情報がのっている本はない。あるのは過去の魔王討伐に関する本で、それは魔王と対立した側の視点だ。魔王についてはどの本も、
1.邪悪で野心家
2.目を瞠るような美形
3.凄まじい魔力を持っている
4.とにかく袋叩きにして滅却すべし
と書いてあるばかり。よのなかにはおなかいっぱいになるならなんでもいいやってゆっるい考えの魔王も居るんだよ。ここにな!
とにかく魔王について掘り下げている本は見付けられなかった。図書館にはあるのかもしれんが、身分証を持たない俺は図書館をつかえないし、図書館の本は煩雑な手続きを踏まないと持ち出し禁止。
異世界についての本も見付からなかった。荒れ地の向こうにあるらしい、異教の国、が多分異世界なのだろうけれど、桃源郷とか竜宮城的な描写ばっかりだし、実際見たんじゃなく荒れ地から来たひとがこう云っていたみたいな、要するに伝聞。
南の異教徒についても、やたらくさしている文章ばかりだから、魔王を召喚だのなんだのはいいがかりだろう。多分。未だに南の先住民は人間扱いしていないひとも多くて、そのひと達には独自の言葉があるみたいなんだけどそれも無視してる本がほとんど。大体、呼び出せるから追い返せるとは限らない訳で。
結局のところ、手詰まり。手は打った。けど、解決策は見付かってない。
かつての魔王に忠実だったらしい猫の群れから必死で逃げつつ、半年以上かけてなんにも見付けられなかった自分に絶望する。薬材採集を終えてレントへ帰っている途中、今日の護衛はマイファレット嬢とヨーくんバルドさんで、俺はバルドさんに担がれていた。
あ、進歩、ひとつあったな。性犯罪者撃退で魔法をつかっていたら、命中率が上がった。例えば、俺達四人を全速力で追ってくる群れの先頭の猫を、禍殃で転ばせるくらいには。
「落珞!逃げましょう!」
マイファレット嬢が振り向いて猫の群れに魔法をぶつけ、そう叫んだ。ヨーくんバルドさんはおうと叫んで速度を上げる。走れなくてすみません。ほんとに。




