帝国にて 3
シアイルの貴族学校(及び、国営の学校)は、十二月一日から授業が始まり、五月の短縮期間を経て、八月いっぱいまで続く。ユラは貴族学校に通っていた頃から、五月六月にはラプラタナへ来ていた。二月丸々休んでいるが、期末の試験で通れば誰も文句は云わない。それに、厳しいことでおなじみのラプラタナへ行くとなれば、貴族学校でなくとも停める者はなかった。
食堂へ這入る。テーブルには、ユラの好物が並んでいた。ラプラタナの授業は日が昇る前に始まり、昼まで続く。食事はとらずに行くのが決まりだ。だから、授業が終わるととてもおなかが空いている。
席について、簡単にお祈りをすると、ユラは菓子をひっ掴んだ。マオにつくりかたを書かせた、あんパンというやつだ。ヤーヌを介してレフオーブルの菓子職人に製法が伝わり、こうしておいしいあんパンをユラは食べている。マオのつくったものより洗練されてはいたが、少々お上品なというより大人しい味で、ユラはマオのつくったもののほうが好きだった。
それでもあんパンをみっつよっつと食べた。それから、魚のむしやきと水切りヨーグルトをのせたブリニに手をつける。ラプラタナでは魚食が普通だ。ただしユラは魚が嫌いである。
リッターがやってきて席に着き、お祈りを済ませてから食事をはじめた。ユラにせよリッターにせよ、食事中は喋らない。
ユラは生臭い魚を苦労して飲み込み、これ以降の日程を考えていた。この後昼寝をしてから、夜まで魔法の制禦の練習。夕食を食べたら簡単に復習をして寝る。明日は、授業の後にメティの市場へ行って、新しい服を買う。三日に一度は休まないとばててしまうし、授業で服が破れるから新しいものが必要になる。
物心つく前から、ユラは大きな魔力を持ち、その制禦を目的としてメティへ来ていた。はじめは毎年ふた月しっかり授業をうけ、大きな事故を起こすことは減ったが、なかなか免状はもらえなかった。貴族学校にはいってからは、移動時間があるからひと月程しかうけられなかった。それでもこつこつと訓練を続け、免状をやっと三枚もらったところだ。指導者になれる免状をもらうには、後九枚集めないといけない。
手を停める。「ごちそうさま。今日も生臭かったわ。もっとまともな調理はできない訳?」
「厨へ伝えておきますわ」
ヤーヌはにっこりする。ユラは鼻を鳴らし、冷たいお茶をぐいと飲んで、椅子から飛び降りる。
「寝むわ」
「おやすみなさいませ」
食堂を出て、ユラはひょいひょい階段をのぼり、当座の自分の部屋に這入る。ベッドへ飛び込むと、みしみしと不穏な音がした。仰向けになって、魔力を全身にゆっくりめぐらせる。ユラは自分の魔力を把握するのに長けているが、初めてメティの学校に来た者は大抵がここで躓く。
魔力の残量の把握が不得手だと、魔法系の職業に就くには向かないと判断される。だからユラは努力した。魔導士になる以外の将来は考えられないからだ。




