プロローグ
プロローグ
予兆などなく、突然その紅い星は空に現れた。
カーテンを突き抜けるほどの強烈な妖光を放ち、表面には魔法陣のような模様が浮かび上がっている。また、引き連れてきたかのように様々な色の小さな星々が周辺に瞬いていた。
世界中の人間が、何が起こったのかと空を見上げていた。
それは守谷春も同じだったが、彼のもとにだけ、続けて異変が襲いかかる。先ほどまで使っていたノートパソコンの画面が発光し、文字が飛び出してきたのだ。
その明朝体10・5サイズの文字は宙で渦を巻き、人の形に纏まり始め、強烈な光を発した。
「うっ! い、一体何が……?」
光が収束し、春は恐る恐るかざしていた腕をどける。
するとそこには美しい女性が浮いていた。
端麗な顔立ち。
薄い桜色の髪。
エメラルドのような瞳。
動きやすいように装飾が控えめだが、それでも上品さを感じさせるドレス。
「そ、そんな、まさか……!」
春は驚き、言葉を失ってしまう。
彼女のその姿は、まるで先ほど書いていた自身の著作『エルピスガイア』のヒロイン――
「春……ああ、春! 久しぶり! 向こうの世界で冒険して以来ね!」
宙に浮かぶ桜の妖精のような彼女は、そう言って涙を流しながら抱きついてきた。
その日に起こった異変によって、世界はある事実を知ることとなった。
無数に存在する異世界冒険物や転生をテーマにした小説の多くは、『作者が実際に体験したこと』であり、それぞれの作品に登場する世界は別の宇宙に存在するということを。




