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邪眼の力でS級ハンターに  作者: 他力本願
第二章:始動、水蓮ギルド。
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24話「煉獄の鬼神」

テーブルに着いて間もなく、滑るような所作で白衣のスタッフが現れた。

手にしていた銀色のトレイが、僕の前に静かに置かれる。


──カチャ


一瞬、背筋が伸びた。

本能的に“なにか特別なものが来た”と感じたからだ。


(……これが、僕の……?)


銀のフタがスッと開けられる。


湯気とともに立ち昇る、上品でやさしい香り──

その一皿は、まさに食事というより“処方された朝食”だった。


「うわ……」


目の前に現れた朝食に邪眼が反応する。

─ジジ……


視界に情報が流れてくる。


【詩遠に用意された朝食】

•蒸し鶏のハーブソテー 〜ルイボスと山椒の香り〜

 → 視神経の疲労回復に効果のあるルテインとビタミンB群を豊富に含む部位を使用。

  さらにルイボスと軽い山椒が血流を促し、目の奥と脳の緊張をほぐす。

•木耳と白きくらげの中華風スープ

 → 頭を酷使するハンター向けに設計された温性スープ。

  血行を促し、神経伝達の円滑化、視界の“ぶれ”や偏頭痛の軽減効果。

•抹茶とブルーベリーの白玉パフェ(ミニ)

 → 甘さ控えめのスーパーフード仕立て。抗酸化作用と眼精疲労のダブルケア。

  ネバネバ好きな詩遠でも抵抗なく楽しめるよう、わらび粉のような質感でまとめられている。

•生姜と黒糖のウォーター

 → 体温と魔力循環を高め、寝起きの低血圧・集中力低下に一撃を入れる朝の一杯。


僕はしばらく、言葉を失った。


(……え、クヲリティたっか……)


見た目はあくまでスタイリッシュでおしゃれ。

でも素材一つひとつが、僕の“身体とスキル”に寄り添って設計されているのが伝わってくる。


「すごい……これ、本当に僕専用……?」


思わずこぼれた言葉に、隣から金宮さんの静かな声が返ってきた。


「あなたの昨日までのデータ、スキャン結果、魔力波の動き、食の傾向──

 すべてを加味して、厨房AIと管理栄養士チームが即時処理しています」


僕は箸を手に取り、まずは蒸し鶏を一口、口に運んだ。


「……っ……やわらか……香りが、ふわって……」


食べた瞬間に、体の奥がじわっと緩む。

目の奥の張りつめていた感じが、少しほどけるのが分かった。


(すごい……効いてる気がする……!)


食堂の外に広がる青空と、遠くに霞むビル群。


そんな景色を前に、僕は静かに、用意された“最高の朝”を噛み締めていた。


僕が朝食を無我夢中で堪能している間、

金宮さんは「少々、席を外します」と一言だけ残して食堂を後にしていた。


(ふぅ……満足。ほんと、この蒸し鶏、目の奥までほぐれる……)

あまりの美味しさに、僕は知らないうちに笑みを浮かべていたと思う。


──そんな時だった。


「なんだ?お前、サポート系のハンターか?」


不意に背後からかけられた声に、僕は反射的に椅子ごと身体を振り返った。


そこに立っていたのは──

赤く燃えるような髪を、端正なボブに整えた少年。

前髪はぴたりと揃ったパッツンで、真紅の瞳がその奥から鋭く覗く。

切り揃えられた髪型はどこか中性的で人形のように整っているのに、

背中に負った巨大な大剣と、炎のように揺れる気配がそのすべてを破壊的に裏切っていた。


その一瞬で、僕の脳が名前を叫んでいた。


「りゅ……龍炎っ!?!」


“煉獄の鬼神”龍炎。

水蓮ギルドのエース。S級ハンター。

戦場を灼熱に染める少年──


「あ、あの!テレビでいつも見てます!僕っ、すごく憧れてて──!」


立ち上がろうとする僕を、彼は鋭い視線でぴたりと止める。


「騒ぐな。ファン対応とか、やってねーから」


「……す、すみませんっ……!」

龍炎は僕のプレートをちらりと見て、やれやれと肩を竦めた。


「まあいいや。……お前の事は琥珀から聞いてる」


(ギ、ギルドマスターを、呼び捨てっ!?さすがすぎる……)


彼は一歩だけ、僕のそばに寄った。


そして、僕の方を見ずにぽつりと。


「……油淋鶏、うまかっただろ」


「えっ……あ!あの時の!!!龍炎さんが作ったって聞きました!!僕油淋鶏が大好物で!!美味すぎて失神するかと思いました!いやむしろしました!」


勢い余った僕の褒め言葉に、あの龍炎さんが目を瞬かせて一歩後ずさった。


「っ……だ、だろ? 俺はこう見えて料理は得意なんだ」


その表情は、どこか照れたような、でも嬉しさを隠しきれていないような。


(……か、かわいい……)


テレビで見てきた“闘気バリバリの戦闘狂”とは違って、

実際に話してみると、小柄なせいもあるけど、素直じゃない弟のような空気すらある。


(って……大先輩になんて失礼な思考を……)


思わず見とれてしまっていた僕に、龍炎さんは軽く手を払うようにして視線をそらした。


「……で、お前名前は?」


「あっ、一ノ瀬 詩遠です!」


名乗った瞬間──


──ジジッ……


視界の奥が、一瞬だけ歪んだように感じた。


(……!?)


無意識に目が反応していた。

気づかぬうちに、邪眼が作動していたらしい。


視界に、いつもの淡い光の文字列が現れる。


【対象】:龍炎りゅうえん

【等級】:S級

【スキル分類】:炎系/爆発系変異術式

【所有スキル】:

・〈紅蓮断界〉[神格級]

 → 魔力を“圧縮蓄積”し、刃・身体・地面に爆破を転化する戦闘特化型スキル。

・〈火焔式調理陣〉[職能級]

 → 調理中の炎熱操作を極限まで制御可能。温度制御・内部加熱・瞬間燻蒸に対応。


(……神格級の戦闘特化型スキル!?!?!?)


僕は無意識に手で口を押さえた。


僕は恐る恐る龍炎さんの顔を見る。


「……?なんだよ急に」


「あ、いえ!憧れの人と話せて感銘を受けてた所です!」


龍炎は照れたように笑った。


「ははっ!なんだよそれ」


僕は築かれないように邪眼を閉じた。

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