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邪眼の力でS級ハンターに  作者: 他力本願
第一章:邪眼を継ぐ者
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11話「正規ダンジョン」

明け方、まだ薄暗さの残る空の下で、僕はダンジョン攻略に必要な荷物を整えていた。

黒の簡易防御布が張られた服の上から、小さなカバンを腰に巻く。

中には、昨日《GEAR CAGE》で買った濃縮ポーションと、最小限の魔力反応探知器。


(……準備、よし)


家を出て最寄りの駅へ。

自由ヶ丘駅──都内でも比較的落ち着いた住宅地。


構内の隅、車両連結部近くに──数人の武装したハンターたちの姿。


(……あそこか)


「──あっ!一ノ瀬さんですか?」


すぐに、声をかけられた。


僕を見つけて小走りに近づいてきたのは、短めの茶髪に爽やかな笑みを浮かべた男の人だった。

ハンター用の軽装備に、薄く加工された魔導布のジャケット。

どこか安心感のある雰囲気。


「先日ご連絡させて頂いた者で、このパーティー、銀翼ぎんよくのリーダーをやってます、天川です!よろしくお願いします!」


一礼と共に差し出された手を、僕も少し遅れて握り返す。


「よろしくお願いします。一ノ瀬です」


「他のメンバーも紹介しますね」


そう言って案内されると、そこには三人の男。

どこかカジュアルだけど、装備にはそれぞれ工夫がされていて、経験の差を感じさせた。


「本日は一ノ瀬さんには、ダンジョンにあるものの解析や、罠、魔力探知などをお願いしたいのですが……可能ですか?」


「は、はい…!大丈夫です!」


そう答えると、天川さんは軽く頷いてからもうひとつ尋ねてきた。


「ちなみに、今までダンジョン攻略の経験はありますか?」


(……経験はあるけど、1回だけだし、違法ダンジョン、だったもんな)

(言えるわけないか……)


「いえ。初心者です」


天川さんは変わらない笑顔で答えた。


「そうですか!じゃあ今回は僕たちがダンジョン内で説明しながら進んでいきましょうか」


声に気遣いが滲んでいた。


僕たちは、王子第二緑地の南側──既に“封鎖区域”となった現場に向かって歩いていた。


「この辺、ダンジョンが出るとすぐ封鎖されるんで、アクセスが意外と早いんですよね」

天川さんが言いながら、IDカードを胸ポケットから取り出す。


周囲には協会の人間が数人。

制服の背に“HUNTER AFFILIATION”の文字。

全員が簡易型の魔力探知装置を携えており、

公園の入口は厳重な結界とバリケードで覆われていた。


(……ほんとに、すごいな。一般人は絶対入れないようになってる)


僕たちが近づくと、協会職員の一人がこちらに気づいて声をかけてきた。


「パーティ名をお願いします」


「事前に応募していた銀翼(ぎんよく)です」


天川さんがカードをかざすと、確認作業が行われた後、すぐに通された。

僕たちは指定された安全エリアへと誘導される。


「では、ダンジョンゲートの基本情報をお伝えします」


そう言って近づいてきたのは、協会の女性職員だった。

タブレット型の端末を手に、きびきびとした口調で説明を始める。


「本日出現したのは、【遺跡型C級ダンジョン】。

 属性は魔力波長から見て“土系統”。ゲートの安定性は中。

 内部には罠や転移式の構造が確認されています。

 討伐期限は6日後まで。以降はダンジョンブレイクの恐れあり。

 ボスモンスターは現在不明。内部調査は未完了です」


協会職員の女性がそう告げた瞬間──


(ボスモンスターが不明…?)

僕は無意識に、ゲートに視線を向けていた。


──邪眼を開く。


視界がぐにゃりと軋み、

空間のひずみを通して“内部”の情報が流れ込んでくる。


ダンジョン内の空気。魔力の濃度。構造。

……そして、最奥に存在する“意志”。


(……いた)


空間の奥に、淡い銀色の体毛を纏った獣。

角のないミノタウロスのような上半身に、四本脚。

牙は短く、魔力密度もそこまで高くない。


表示が浮かぶ。


──対象:ラン=フェリオン

──分類:土系/獣型モンスター

──脅威等級:C+


(C+だったら、このパーティだけでギリギリ倒せそう……かな?)


僕は一瞬、迷ったけれど──

このくらいなら伝えても問題ない、と判断した。


「……ボスは、“ラン=フェリオン”です。

 土属性の獣型モンスター。C級相当で、突進と咆哮に注意が必要です」


沈黙が落ちた。


協会の職員が、まばたきひとつせず、僕の顔を見た。


「……その情報、どこから?」


「あ、僕のスキルです…」


もう一人の協会スタッフが、小さく鼻を鳴らした。


「まさか。現在解析班が三人入っていて、まだ核心には到達していません。

 そんな正確な情報が、名も知られていないハンターに分かるとは思えませんが」


(なんか棘あるなぁ…)


僕は反論しなかった。


僕はそっと、邪眼を閉じて視線を逸らした。


天川さんが、一瞬困ったように間に入った。


「まあまあ。解析系って一括りに言っても、視える範囲は人によって違うんで。

 仮に合ってたらラッキーってくらいに、構えておきましょうよ」


協会職員はしばらく僕を睨むように見ていたが──

やがて端末に目を戻し、短く答えた。


「……確認はさせていただきます。

 ただし、現段階では“未確定情報”として処理しますので」


(……当然か)


僕は少しだけ息を吐いた。


(でもボスの情報は共有するに越したことはないない)

「あれ…」


(そういえば、前回スキルを使った時は文字の情報だけだったけど、今回は内部までしっかり視えた。)


「スキルが…成長してる…?」


僕はそう呟いてから、天川さんに呼ばれて急いで後を付いて行った。

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