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叶えたい夢

改めて見直すと誤字、脱字が……(T_T)

見つけたら、感想欄でもなんでもいいので教えて頂けると幸いです!

誤字、脱字はカウント制にして一定の期間ごとに区切りを付けて、訂正した誤字脱字の報告件数×100文字~200文字程度、まとめて同日に投稿します。

 少しお話出来ないか、とその美男子は言った。

 一見したところ、紫苑達に対して敵意のようなものは感じられない。

 紫苑は、制服の胸ポケットに付けられた名札代わりのバッジに目を向ける。そこには、学年順位を示す数字が彫られている。

 格調高い筆記体で『12th』と掘られており、他の一般生徒と違い白文字ではなく、優良生徒にしか付けることを許されない金文字だ。

 つまり、この男は成績上位者―――紫苑とは学年こそ違うが、二年生の中でトップクラスの実力を持っている事になる。

 成績優秀な笑顔を浮かべてくる好青年。一見無害そうだが、紫苑は少しだけ警戒する。


「立ち話もなんだから、食事でも一緒にどうかな?食堂から出てきたタイミング的にまだ食事中ではないかい?」


 美男子は笑顔で食堂の方を指差す。相手の緊張を解す―――言い換えれば、心の僅かな隙を生み出そうとする笑顔。


(氷華さんが見たら心底ウンザリした顔しそうな笑顔だな……)


 無害そうであり、それ故に毒にもなりかねない柔和さ。

 昔から立場から様々な"苦労"を強いられてきた氷華は、人間の心理に敏感だ。柔和な笑顔に騙されて、山一つ消し飛ばそうか、と思ったと過去に苦虫を噛み潰したような顔で言ってた事を思い出す。

 だが、紫苑は別に断わる理由もない。警戒だけはしていたが、彼に続いて食堂へと足を進める。魔夜も少し警戒した様子で紫苑達の背中を追う。

 食堂に入ると生徒達は紫苑達を見てザワついた。大抵は2種類に反応は分かれており、片方はアザミに喧嘩を売りかけた紫苑に向けてだ。紫苑が乱闘騒ぎを起こそうとした事は、既に伝播して様々な生徒の耳に入っていた。

 もう片方は、美男子に向けてである。こちらは、どちらかと言えば女子生徒の方が比率が高い。

 ただ食堂に来ただけなのに、無性に同じ男子としての格付けをされたように感じた。


御影みかげ!!!」


 紫苑が元々食事していたテーブルへと足を進めると、ノアがぴょこんと飛び上がった。食事中だったからか、乱暴に備え付けの紙ナプキンを手に取り、口元を拭っている。


「ノアか。相席してもいいかな?」

「い、いいい嫌に決まってるんだよっ!!」

「相変わらず、つれないね。それに、酷いじゃないか。僕が昔から食事に誘っても『嫌だ』の一点張りだったのに、彼とはもう食事を取っているのかい?」

「こ、これはっ……この男が無理矢理相席してきたんだよ!それで、何の用なの!」

「僕とデートして欲しくてね。彼とだけじゃなくて、僕ともどうかな?」


 美男子―――御影と呼ばれた男子生徒の言葉に、ノアは顔を真っ赤にさせる。


「いいいい嫌だね!だ、断固拒否だよ!どどどうして、私が」

「まぁ、半分冗談―――だけど、今日の本命は別件」


 艶やかな黒髪の長髪をなびかせながら、紫苑の方へ向く。


「僕は君に話があるんだよ。篝火紫苑」


 その言葉にノアと魔夜はぎょっとした顔をする。

 そして、恐る恐るといったかたちでゆっくりと視線を紫苑へと向ける。どうやら、なにか大変な誤解をされていそうだ、と紫苑はため息をつく。

 紫苑は、席に座ると冷め始めた昼食達へ手を伸ばす。

 多少冷めているが、学生向けだからか味が少し濃い為に、まだ全然美味しく食べれそうである。

 素材の味、料理人達の高い調理技術を楽しみながら、もぐもぐとゆっくり咀嚼する。

 そうして、たっぷりと時間をかけた後に、


「デートの誘いなら間に合ってるぜ?毎日、魔夜から寝込みを襲われそうになるのを回避してるからな」

「まあ、そう言わずに。僕なら、君を退屈にさせないよ?」

「誤解を招く発言はよしてくれ。下手すると、この食堂で三日月魔夜、龍ヶ崎乃亜の無免許調理師二人による俺の解体ショーが始まる」

「それは、それで見てみたいけど……話だけでも聞いてくれないかな?」

「第二学年序列12位。昨年度から順位が右肩上がりで同世代から圧倒的な支持を持つ武藤御影様が、新入生最下位の俺に何か用か?」

「驚いた。君は既に他学年の順位まで把握しているのかい?それとも―――アザミの次は僕でも狙うつもりだったかな?」


 ぴん、と空気が張り詰める。

 御影は相変わらず笑顔で、紫苑も軽く笑みを浮かべている。だが、両者からの殺気は刺々しく食事を取りながら盗み聞きをしていた生徒達は、あまりの威圧感に箸が止まる。

 十秒ほど、お互いに殺気をぶつけていたが矛を収めたのは御影の方だった。


「僕と取引して欲しいんだ」


 彼は屈託ない純度100%の笑顔でそう言う。


「取引…正確には、お願いかな。僕個人としてではなく、"上級生"としてね」

「取引か。なら、答えは"NO"だ」


 ふふっと御影は噴き出して笑う。


「君は即決即断なんだね。こういう時は、少しくらい躊躇うものじゃないかな?」

「俺は、師匠に『物事を瞬時に判断、できなければ死ぬ』状況で鍛えられたからな。現状あんたが提示出来そうなもので欲しいものが無いと考えた以上、取引する意味が無い」

「せめて、説明くらいさせてくれてもいいんじゃないかな?」

「それに、俺は怖い怖い師匠と契約してる身でな。勝手に取引先を増やすと怒られちまう」

「そうだろうね。君の師匠『破滅の魔女』は気まぐれな自由人だ。君の独断で何かあったら僕ごと世界を滅ぼそうとするかもしれない。でも、取引材料が―――」


 焦らすような間を取って、一言。


「学年順位を上げる実績作りになるとしたら?」


 ぴたりと食事していた紫苑の手が止まる。

 学年順位。焔光の宴に参加するのに、絶対に必要な実績の唯一の判断材料。

 視線がぶつかり、沈黙の時が流れる。





 ――――――――――――――――――――――――――




 あの食事の後、紫苑は魔夜達と一緒に午後の講義へと戻った。

 午後の講義を全て終わらせると、紫苑は魔夜を連れて教室から出ていく。

 ノアはバハムートを頭に乗せたまま、教室の窓からそれを眺める。

 日は傾きはじめ、外は既に薄暗くなってきている。

 夕闇の中で、紫苑達は待ち合わせしていた御影と落ち合って、そのまま別校舎へと足を進める。

 御影の姿が遠ざかる。ノアの体温は急速に上がりそうになるが、同時に胸が痛む。どこかやりきれない気分で、ぼんやりと後ろ姿を眺めていると、


「彼が気になるのか?」


 と、バハムートはノアにのみ聞こえる声量で鋭い質問をする。


「きききき、気になるわけないんだよ。ば、馬鹿なの?」

「隠す必要は無い。我も、彼は面白い男だと思う」

「なな、何も隠してないよ!生意気言ってると虫かごに入れてこれから連れていくんだよっ!」

「いや、御影ではない。我は、あいつは好かん。我が言ってるのは、紫苑の事だ」

「はぁ?」


 御影の話で赤面した事に恥ずかしがり、更に赤面する無限ループへと陥るノアだが、バハムートの言葉に首をひねった。


「あの馬鹿と話してたせいで、バハムートまで馬鹿になったんだよ」

「覚えているか、食堂での会話。彼は我にこう聞いてきた。『傷は大丈夫か?』ってな」

「それが何?」

「彼は、我を1つの人格として扱った」

「………」

「我は、主であるノア―――お前の戦う"道具"にしか過ぎない。自分の道具ならともかく、他人の"戦う道具"の具合を確認するだけなら、我ではなく主に聞くべきだろう?」


 言われてみると、確かに妙だった。


「紫苑の横にいつも陣取る魔夜という少女の"正体"もノアは気付いたか?」

「何となくだけどね。『破滅の魔女』の弟子、『破滅の魔女』の姉妹の一人と聞けば"気付かない"人はいないよ」

「そうだな。その事を踏まえた上で、午前の講義を思い出してみろ。講義中に、魔夜は紫苑の腕を固めたり、上下に揺すったりしていた」

「あの痴話喧嘩?」

「そうだ。彼は、痛がってはいたものの無理な抵抗はしなかった。それを見た生徒達は笑っていたな。学年最下位の紫苑では、紫苑より高い順位の魔夜には勝てないと思ったからな」


 ノアはバハムートの言葉に、はっとする。


(あいつが抵抗出来ないわけが無い?そんな訳無いんだよ!あんな"高度"な戦い方が出来る魔術師が、防戦一方になるほどに2人の実力は離れてない!!!)


 彼が本気で抵抗すれば魔夜の暴力に抵抗出来たはずだ。もしかしたら、魔夜よりも紫苑の方が戦闘力は高い事さえあるかもしれない。


「我が思うに…彼は"優し過ぎる"ようだ」


 ふ、と小さな笑みを浮かべるバハムート。

 揶揄するような口ぶり。だが、好意的な響きも感じる。バハムートが他者を褒める事などあまり見た事が無かったノアは、目を丸くする。


「お前と気が合いそうじゃないか?」

「……合うわけないんだよ、あんな女たらしと。それに、私は冷たい女だよ」

「お前が冷たい女?」

「今、私の事を笑ったんだよね?部屋に帰ったら―――」

「だからこそ、お前に問いたい。紫苑が敵に回ったら、打倒できるのかと」


 暫しの間、ノア達以外いなくなった教室を静寂が包む。

 やがて、ノアはバハムートからの問いかけを振り払うように、毅然として顔を上げた。


「私は、龍ヶ崎乃亜。英国から地位と名声を授けられた龍ヶ崎家の長女なんだよ」


 誇りを込めて、拳を握る。


「邪魔者は全て焼き尽くすんだよ」

「……それが紫苑達でもか?」

「アイツらが相手でもだよ」


 固く握られた拳を更に強く握る。


「私には、もう一度叶えたい夢があるんだよ。その為なら、例え数多の血を流す事になったとしても、私は止まらないんだよ」


 もう一度、ノアは窓へと視線を向ける。

 夕闇が迫るキャンパスには、既に紫苑達の姿は無かった。

読んで下さり有難うございます。

ブクマ、評価ポイント、感想等が作者のモチベに繋がります。

ある程度キリのいい文脈で区切って投稿する影響で、文字数は一話ごとにばらつきがあります。

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