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一体、誰の肉体を人造人間に定着させたのかね?

数日間、間が空いてしまい申し訳ございません!体調は良くなりました!

誤字を見つけたら、感想欄でもなんでもいいので教えて頂けると幸いです!

誤字、脱字はカウント制にして一定の期間ごとに区切りを付けて、訂正した誤字脱字の報告件数×100文字~200文字程度、まとめて同日に投稿します。

 魔術師や異能者の中には、紫苑達のように焔光の宴への参加資格を手に入れる目的で不知火高等学校に入学している者達以外にも、"知識"や"技術"を別の目的で学ぶ為に入学している者もいる。

 魔術師や異能者についての研究、魔術回路の研究、異能についてなど色々だ。

 そんな訳で不知火高等学校では、必修科目以外にも任意で講義を受ける事が出来る。

 アザミが向かっていたのも、そんな非必修科目だが興味がある講義があるからだ。

 ぞろぞろと6人の乙女は、アザミの後ろを付き従い、目的の校舎がある方角へ足を進める。

 だが、目的の校舎にほど近い、木立の手前まで来た所でアザミ達は足を止めた。

 前方には、不知火高等学校の敷地内であるが紙タバコを咥えている男が立っている。

 異能者であり担当となるクラスも持つ教授、破魔だった。巨躯な肉体がどうしても目立ち、見た目からは荒っぽい風貌が目立つが、それに反して講義の評判は高い。

 アザミに付き従えている少女達は、破魔に気付くと微妙に表情が固いものになる。

 しかし、破魔の方は、表情が固くなっている少女達を意に介する事無く、軽い調子でアザミへと話しかける。


「どうだ、彼等は?」

「……どうだ、とは?」

「面白い馬鹿だろう?アイツ、入学試験の成績を見せた時に、なんて言ったと思う?」

「さて……彼の順位から察するに、絶望していたのでは?」

「残念、不正解だ。まぁ、絶望に満ちていたという意味では、部分点は上げてもいいがな」


 そういう破魔の表情は、教師として毅然とした立ち振る舞いをする普段とは違い、何が楽しいのか愉快な笑みを浮かべている。

 紫苑がその表情を見れば、『ヤクザが最初丁寧な感じで浮かべる笑み』とでも言いそうな笑みだが、アザミは破魔の性格を知っている。

 きっと、なかなか見つからない破魔の笑いのツボを刺激したのだろう。


「正解は、焔光の宴に参加したいだ。評価基準の座学が圧倒的に致命的なのにだ」

「焔光の宴にですか…」

「面白いジョークだろう?」

「いいえ。確かに日本の判断基準では評価されづらいですが、焔光の宴の参加権利まで獲得出来れば、結論"実技"が物を言います。頭でっかちの知識のみでしか上に立つ事が出来ない相手には、彼のような"破天荒な戦い方"をする者は一方的に蹂躙出来るでしょう。昨日も、異能者の少女と二人で大立ち回りを演じたのが証拠です」

「ほお…お前がここまで評価するとは。知り合いなのか?」


 アザミは答えない。会話の口振りから先程の紫苑との会話も聞いていたであろう破魔が、こんなに上機嫌で話しかけてくる事にアザミは困惑していた。


「まあいい―――――それで、その布はなんだ?」


 破魔は、加えていた紙タバコの最後の一吸いをすると、携帯灰皿に吸殻を捨てながら、くいっと顎だけでアザミの手にした布に視線を向ける。


「布ですね。フリルのような物も着いているので、少女用の物だと考えていますが、如何せん損傷具合が激しい為に現状詳しい事は分かりません。強いて言うなら、"血痕"のような赤黒いシミがあることくらいですかね」

「血痕だと?」


 破魔は意外そうな顔をする。だが、アザミが向かっている場所、そして、とある"噂"について何か思い至ったのか、にやりと口角が吊り上がる。


「成程。確かに、お前は優れた魔術師であると同時に"研究者"としても一流だったな。過去に、論文として発表されたのは全て『魔術と科学による反魂の儀式の再現』。お前程の研究者ならば、科学による付着していた血痕の遺伝子分析、魔術によって"再現"も可能というわけか」


 アザミは答えない。その沈黙は肯定とも否定とも受け取れる。


「だが、不思議だな。何故、お前にそんな血痕の付いた布なんかを渡す。どう見ても、解析などの依頼には見えなかったが」

「……慣習に習ったのでしょう」


 アザミはそう呟く。破魔は、アザミの言葉に怪訝そうに眉を顰める。


「もう過去の話として風化されていますが、とても優れた魔術師や異能者を輩出し続けた家系があるそうです。戦場に出れば一騎当千、研究を発表すれば技術革新といった優れた血筋のみで形成される家系。その家系には、魔術師や異能者が台頭する前の時代から大事にされていた慣習があります」

「…それは何だ?」

「『一族の流れた血は、一族が責任をもって後始末する』というものですよ。言ってしまえば…"手を出されたら手を出し返せ。復讐してでも、一族の責務を果たせ"って所でしょうか」

「その言い分だと、篝火の復讐相手がお前になるのだが?」


 やはり、アザミは答えない。


「こう見えて、自分も多忙の身ですので……それでは」

「ところで、アザミ」


 通り過ぎようとするアザミに、破魔は切り込むように言った。


「こんな噂を知っているか?お前が従えている人造人間は、『世界異能魔術条例』違反の物だと」


 その言葉に、アザミは足を止める。

 破魔は続けて、


「本来、人造人間というのは、人工培養によって量産される忘れ去られつつある"過去の遺産"だ。そんな、人造人間には最新技術の魔術や異能の素質は無い。何故なら、厳密には"生物"ではないからだ。姿形が似ていようと、魂の存在しない人造人間は外見のみの模倣にしか過ぎない。……生きた人間をパーツとして埋め込むという以外ではなな」


『世界異能魔術条例』―――――ある時期を境に、台頭した異能者や魔術師達を縛る法である。

 異能者、魔術師を自国の戦力として利用したい国が多くあり、その力を貸す見返りに様々な特権を国は与えた。

 だが、中には力や特権を手にして増長した者達も居たからか、犯罪に手を染める者も多数現れた。

 そんな異能者や魔術師達に最低限の秩序を守ってもらうために、連盟加盟国の者達が考えたのが『世界異能魔術条例』。

 主な内容は、与えられる特権と禁止する行為が纏められているのみだが、魔術師には"禁術"とされる魔術も幾つ決められており、その中には『死者を蘇生できる魔術』というのもある。

 破魔は、あくまで世間話をするような調子で話すが、全身からは肌をヒリつかせる殺気混じりの威圧感が漂っていた。あまりの殺気に、アザミが付き従えている少女達が敵意を向ける。


「実際のところ、聞かせてもらいたいものだな」

「……それは、組織の"遣い"としての尋問ですか?」

「いいや、これは独断で聞いてるだけだ。個人的な趣味といっても差し支えない」


 アザミは、少し考える素振りを見せる。

 そして、


「私が連れているのは、あくまで"道具"です。戦争をする為に、銃を持つ、戦車を使う。それと一緒です。彼女達は人間として扱った事は無いですし、扱う予定もない。私の進むべき道に、自力だけではなく彼女達を利用しなければ辿り着けない障害がある事を見越して連れているだけです」


 と、だけ答えた。

 アザミの言葉に、破魔の視線が鋭くなる。研ぎ澄まされた刃を彷彿させる程に。


「俺の質問に答えてないな。いつも冷静なお前にしては珍しく、多弁だ。そんな、難しい会話の話題だったか?」

「答える意味はないって事です。私の目的を阻むなら、破魔先生と言えど、命の保証は出来ませんよ」

「ほお…肝に銘じておこう」


 挨拶もせずに、アザミ達はその場を去って行く。

 一行が去って行くと、破魔は大きくため息をついて、苦笑を漏らす。


「大したものだ。生きた人間の肉体を、人造人間に定着化させるなんて神にも等しい御業が再現可能なのを知れば、血眼になって裏でコソコソ研究している研究者達は、腐るだろうな。人間の肉体に、無機物の義手やなんかを付けることは出来ても、無機物のものに人間の肉体を定着化に成功させたのは史上二人目。『破滅の魔女』を越えたと称される天才様は、『破滅の魔女』の弟子に何を思うのかも気になるが―――――」


 遠くなり小さくなった背中を眺めながら、もう一本紙タバコを咥える。


「―――――一体、誰の肉体を人造人間に定着させたのかね?」


 その言葉に答える者は誰もいない。

読んで下さり有難うございます。

ブクマ、評価ポイント、感想等が作者のモチベに繋がります。

ある程度キリのいい文脈で区切って投稿する影響で、文字数は一話ごとにばらつきがあります。

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