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日本一遅い始発と日本一早い最終(札幌~新十津川)

経路

 札沼線(札幌~石狩当別)

 札沼線(石狩当別~新十津川)




 最終日。ホテルを出発し、札幌駅に向かいます。都会の建物は変わりませんが、夜の様子とは変わって、人通りは少なく静かでした。六時半前だからでしょうか。

 札幌駅に入ります。駅の中は、外よりも人が多く、通勤通学客が見られます。さて、今日も改札で18きっぷを見せます。

 見せました。

 薄い!

 今日もインクは薄いです。「札」が消えて「幌駅」としか見えません。もしかしたら「小幌駅」に思われてしまうかも知れません。まぁあそこは当然無人駅なので、この印は貰えないですが。

 もう気にしないでホームに向かいます。と言っても、まだまだ目的の列車までは時間があります。

 札幌駅は北海道庁所在地──札幌市の中心駅です。札幌市自体人口は約200万人を数え、一日あたりのの平均乗車人員は約10万人。首都圏でもなく、新幹線も停車しない駅としてはとてつもない数です。因みに静岡駅は6万人。札幌駅は大きいのでこの時間も「オホーツク」や「スーパー北斗」などの特急列車から岩見沢や小樽、苫小牧方面の列車も頻繁に発着していました。都会は列車が多くて飽きなそうで羨ましいです。

 そんな風に遊んでいたら6:50です。札幌駅10番線にやって来たのは札幌駅が終着の731系電車三両編成×2です。折り返して6:58発、学園都市線下り普通列車石狩当別行きとなります。

 731系は札幌付近の電化区間で使用されている通勤用交流型電車です。それまで711系と721系に頼っていた電化区間の輸送では、その二形式がクロスシート、また保温の為の客室間仕切りなどの影響で乗車可能客数や乗降に制限がかかっていました。その為、札幌都市圏の乗客輸送に堪える車両として本形式が開発されました。それまでの721系とは大幅に仕様が変更されており、車内は定員増を図ったオールロングシート。保温の間仕切りは省略され代わりにドア上にエアカーテン、ドア横にドア開閉ボタンが設置され保温の質を落とさないように工夫がなされています(実際はドアが開くと寒い)。バリアフリーにも対応するようにしており、車椅子を停めておけるスペースも確保してあります。また、札幌近郊のみで運用されるのでその区間の自動放送も装備されています。本形式から北海道通勤電車(733系·735系)は高い運転台となり、見た目は酷似しています。それらに加えてこの731系はキハ201系と共同で開発された為、北海道では日本で唯一、電車(731系)と気動車(キハ201系)の協調運転が実施されています。残念ながら、今回はキハ201系にはお目にかかれませんでしたが。

 そんな感じで731系でした。

 車内には多くの人が乗り込みましたが、席が埋まる程度で立ち客が出る程ではありませんでした。札幌に通勤する人が多いはずなので、札幌から近郊へという人はそこまで多くはないのでしょう。まぁ時間も少し早いですが。


 定刻通り列車は札幌駅を出発し、早々に次の桑園駅に到着です。

 札沼線(学園都市線)の本来の起点はこの桑園駅ですが、全列車が札幌駅に乗り入れています。学園都市線の由来は沿線に北海道教育大学札幌校や北海道医療大学がある事が挙げられます。札沼線は札幌圏では唯一の地方交通線で、電化されている北海道教育大学までにも単線区間が存在します。しかもこの路線は札幌の住宅街を通っているにも関わらず、2012年までは全線非電化でした。その為気動車普通列車6両編成なんていう今では考えられないような列車も数多く存在していました。しかし電化されてからは気動車は淘汰され、現在では石狩当別までの電化区間には電車しか乗り入れていません。

 桑園駅を出発すると列車はいきなり単線高架を右に大きくカーブします。函館線と別れ、住宅地に向けて北進します。八軒からあいの里教育大までは複線です。高架なので朝に札幌の街並みが見渡せてとても気持ちが良かったです。列車に乗る人よりも列車から降りていく人の方が当然多いので、車内はどんどんと空いていきます。しかも駅間が大分短いようで、都会の通勤列車のようにポンポンと停車しては発車、また停車しては発車……みたいに繰り返しているようでした。駅が多いという事は、それだけ利用者が多いという事を意味しているのでしょう。札幌方面の列車の車内を見てみると、6両編成にも関わらず乗客でいっぱいでした。やはり通勤通学路線としての性格が強いのだと思われました。あいの里公園を過ぎると少し駅の間隔は空き、石狩太美、終点の石狩当別と停車しました。結局石狩当別までは、自分の乗っていた車両では残ったのは四、五人でした。


 さてここからは乗り換えです。向かいのホームにちんまりと停車しているのは一日振りのキハ40形。待たせたな! と言っている感じがします。何の考えも無く普通に近付いてみると……おや、人だかりが……。車内を見ると……うわっ何でこんな人いんの……!? というぐらいには混んでおりました。昨日の夕張支線に匹敵──若しくはそれ以上の人の出です。しかもその乗客は殆どが鉄ヲタです。

 この札沼線の石狩当別発新十津川行き下り列車は、浦臼~新十津川の一日一往復の列車の片割れです。はい()()()()()です。旅客列車という観点から見れば、日本で一番本数の少ない区間として鉄ヲタ界隈では有名です。何年か前までは一日三往復ありましたが、いつの間にかこうなってました。それによってこの下り列車は浦臼発が9:06で新十津川着が9:28。折り返しの上りは新十津川発が10:00で浦臼着が10:21。日本一遅い始発列車&日本一早い最終列車としても名を馳せています。当然利用客の低迷がここまでの本数減少に繋がった訳ですが、流石に一日一往復はふざけてませんかJRさん。

 この路線は2020年の5/7で北海道医療大学~新十津川が廃止になります。廃止するにしても、色んな協議とか手続きとかをやんなきゃなんないから、めんどくさくなって一日一往復にしちゃったんですかね。

 という訳で一日一往復という珍しい列車を求めて、鉄ヲタは今日もブヒブヒ言う訳です。

 札幌発6:58の列車に乗ったのはこれに乗り換える為だったのですが、人が多すぎてあんまり意味はありませんでした。一両編成の列車には勿論座る場所などありません。どうしようもなく後ろ側のデッキに乗り込みます。しかしそこにも客室からあぶれたらしい鉄ヲタが数人……。おい今日平日なんだが。

 密かに文句をブーブー垂れている内に、列車は発車の時刻に。聞き慣れた二点チャイムでドアが閉まりました。


 キハ40形400番台は札沼線仕様の形式で、外見の特徴はドア全体が明るいグリーンで塗装されている事です。それ以外は違いがよく分かりません。

 列車は暫く行くと、次の駅──北海道医療大学駅に停車します。ここは駅名通り、北海道医療大学への最寄り駅です。札沼線はここまでが電化区間で、電車が乗り入れる事が可能となっています。恐らくここまでが、JR北海道として残しておきたい区間なのでしょう。次の路線廃止ではここまでが残ります。住宅街と教育機関に鉄路があれば少なからず利用者は確保出来るという事だと思います。逆に言えば、ここから先の区間は手放さざるを得ない程の閑散路線であるという事でもあります。この辺りからは町があると言っても小規模なものですし、何より石狩川を挟んだ向こう岸にもっと便利な函館線が通っているのです。ですから町の慢性的な過疎化というよりは、利用しやすい路線が近くにもう一路線あるというのが大きな一つの原因です。理想としては、その近辺に住む方々の石狩川対岸駅へのアクセスを向上させて函館線の利用者の増加を図るというのがベターではないかと思います。まぁそんなに簡単な話でもありませんが。

 北海道医療大学で架線は途切れ、列車は非電化区間に入ります。当然超が付く程のローカル線なので、速度はゆっくりで、車窓に広がるのは広々とした雪原と雲一つない青空。良い天気だなぁ……。並走する道路は国道275号線。北海道医療大学から終点まで殆ど完璧にすぐ横を通っています。しかもスピードがこの列車より速い……! 閑散のもう一つの理由はやはりクルマ社会という事みたいです。


 そんな気持ちで悶々と、またデッキが暑くてムンムンとしながら列車は札沼線の主要駅の一つの石狩月形に到着です。ここでは列車交換の為に23分停車します。はぁ……? という感じの時間です。ずっとむさ苦しい中に居るのは無理だったので一度列車から降りる事にします。他の鉄ヲタと共にホームに吐き出され、新鮮な冷たい空気を吸い込みます。デッキには男ばかりで、しかも──言い方悪いけど──デブが居て、辛かったです。別にデブなのは一向に構わないでのすが、ペットボトルをポケットに突っ込んで何回も落としてみたり、写真を撮るのかずかずかと人の間に割り込んで来たりしたのでそこが嫌でした。石狩月形駅の駅名標を撮影しましたが、ここも一応学園都市線という事になっているみたいです。全然「学園都市」な感じじゃ無いですけどね。というか学園都市線とかどう考えても某ラノベそのまんまなんですがそれは……。

 石狩月形駅の駅舎に行ってみました。駅舎は待合室がデカくなったような簡素な作りでしたが、中にはベンチだけでなくストーブがあります。改札には「新十津川行き」と「石狩当別行き」の「改札中」の札が掲示されていました。さらに窓口もあります。実は札沼線はこの石狩月形駅が最後の交換駅で、スタフ閉塞を用いているのでJRの社員が常駐しているのだとか。またここでは秘境駅として名高い、隣の豊ヶ岡駅のわがまちご当地入場券を販売しています。自分も一枚購入しました。

 暫くすると、新十津川方面からこちらと同じくキハ40形400番台がやって来ました。鉄ヲタはホームの端で一斉にシャッターをパシャパシャ切り始めます。うわーガチ勢こえぇ……と思いながら自分も遠目から撮影してましたはい。列車が到着し、スタフの交換が行われます。運転士さんも早々に鉄ヲタ達に車内に戻るように言い渡しました。自分は元々の場所に戻っていたので対向列車の車内を見ると、思ったよりも人が乗っていました。ガラガラなのはそうなのですが、五、六人は乗っていました。少し意外です。


 エンジンを吹かし、キハ40形は石狩月形を発車します。少し行くと林の中に入り、停車します。何も無いのですが、本当はここは駅。先程言った豊ヶ岡駅です。本当に林の中で、秘境駅として有名です。まぁ鉄道林なんですけどね。

 豊ヶ岡からは再び雪原の中を走ります。西側にはすっかり雪を被った山。まさに北海道。

 程無くして浦臼町の中心駅──浦臼駅に到着です。ここからは、一日一往復の区間です。とは言っても何の特別な事も無く、さっさと浦臼を発車してしまいました。列車はのんびりと大量の鉄ヲタを乗せて、エンジン音とジョイント音を響かせます。この区間のこの走行音は一日一回しか聞けないのですから不思議なものです。

 下徳富を過ぎると列車は少しカーブを取って、速度を落とします。ここでも、終着では一度列車から降りるようにとの注意換気がありました。ですが、多分殆どの人はある物目当てで降りると思います。

 ホームにはこれまた大量の鉄ヲタが。どこにでも湧きます。


 キハ40形はゆっくりと停車し、前方のドアが開きます。そこからはダラダラと人が流れていき、自分で丁度最後でした。降車し、さらにレールの北側を向きます。20mくらいいった所に車止めがちょこんと置かれています。確かにここは終点ですが、昔はさらに北まで線路は延びていました。

 札沼線の「札」は札幌。「沼」は現在の留萌線の途中駅──石狩沼田を意味しています。つまり札幌から石狩沼田を結ぶ路線として敷設されたのです。しかし先程述べたような理由などにより1972年に新十津川~石狩沼田は廃止となり、札沼線は新十津川が終点の盲腸線になってしまったのです。現在は廃線の跡を確認する事は難しく、Googleマップを駆使したとしてもあまりよく分かりません。

 新十津川の駅名標を撮影。やっぱり学園都市線。どこがやねん。

 今度は駅舎の方へ。ここでは当然の如く長蛇の列が。お目当ては言うまでもなく、わがまちご当地入場券です。ここではそれに加えて、無料で終着駅到達記念のカードのようなものもくれるので、飯うまです。170円で購入しました。いやぁこいつは儲かりものですね。また、駅舎には国鉄時代の全国の国鉄路線図がありました。今と大きく違うのは何と言っても北海道です。廃止になった路線は数知れず(分かるけど)。とんでもない数の路線が廃止になっております。悲しいですが、それが北海道の性なんですかね……。

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