14話 ドラゴン(金蔓)
トン。
肩に手が置かれた。
ビックリして、後ろを見ると、ヴォルフがいた。
「ヴォルフ!?」
私が声を荒げると、ヴォルフは
「よっ、姫さん。」
といって、笑みを見せた。
「え、え?何でここに居るの?冒険者ギルドにいるんじゃなかったの?」
考えるより先に言葉が出てきた。
「あー、それがちょうど登録が終わったところでドラゴンが出た、って聞いて、助太刀しに行こうかなって思ったら、姫さんだった、ってわけ。」
もうドラゴンが出た、って話になってるのか。
それを倒したら、注目されそう……だけど!今は一獲千金のチャンス!
これが上手くいけばこれからが楽になるし、注目云々は放置して、倒すことに集中しよう。
「そういうことなんだね。ヴォルフは何ランク?」
「スキップ試験とか受けてないし、F。」
ヴォルフはそう言いながら、冒険者証を私に見せた。確かに、Fランクと書いてある。ヴォルフならもっと上にいけそうなもんだけどな。
「で、姫さん。今は何してんの?」
ヴォルフが私に訊く。
「えっと、どうやったらドラゴンを出来るだけ傷つけずに倒せるかなあ、と考えてたの。」
「ふーん。じゃあ、俺がやってみせようか?」
ヴォルフは青色と金色の目を妖しく輝かせながら、不敵に笑った。
「え!じゃあ、一回見せてもらおうかな。けど、一回だけね。そのあとは私にやらせて。」
「おう。勿論だ、姫さん。」
ヴォルフは私の我儘を親指を立てて、目配せをしながら、受け入れてくれた。
案外、私とヴォルフの相性はいいのかもしれない。
「じゃあ、よく見てろよ?」
ヴォルフは尻尾を揺らしながら、いつの間にか空にいるドラゴンの方へと助走をつけた。
そして、大きく跳び上がった。
あれ、なんの魔法も使ってないよね。地力だよね?……私もやろうと思えば出来るんだけど。
ーーこれは、獣人が凄いのか、ヴォルフ自体が凄いのか。
そのままドラゴンの横まで辿り着いたヴォルフは大きく足を振り上げて、斬撃を放った。
何故、普通の足から斬撃が発生するのか、と思っていたら、ヴォルフのブーツの先にキラリと光るものが見えた。
どうやら、ブーツに刃が仕込まれていたようだ。
そんな考察をしているうちに、攻撃を放ったヴォルフはゆっくりと落ちていった。
このまま落下していっても、ヴォルフは無事であろうが、なんか心配だ。
私はヴォルフの真下に入口を作り、私の上には出口を作った。すると、ヴォルフは入り口に入っていき、私の真上から落ちてきた。
なので、お姫様抱っこでヴォルフを受け止めた。
さっきのは、空間魔法の要領だ。入口を作ると、そこに入ったものは出口から出てくる、という至ってシンプルな仕組み。
私はゆっくり、ヴォルフをお姫様抱っこから解放する。これで、男性にお姫様抱っこをしたのは2回目だ。1回目はスキップ試験の時のガルートさんね。
ヴォルフを見ると、こないだのリュウゼと似たような、なんとも言えない顔をしていた。
「……こないだのリュウゼの気持ちが分かった気がする。」
そう呟いたので、やっぱり女性に助けてもらう、というのは複雑なのだろうな。
「ま、ドラゴンの鱗の間に攻撃すればいい、というのは分かったろ?」
立ち直ったヴォルフが私の背中を押した。
そういえば、ヴォルフは鱗と鱗の間に攻撃していたなぁ。多少のダメージは肉にくるけど、鱗はノーダメージなのでいいだろう。
なるほどね。
ヴォルフのように跳び上がってもいいけど、疲れるため、私は『魔法の翼』を使うことにした。
『魔法の翼』とはその名の通り魔法の翼である。いや、魔法で羽を生やすんじゃないからね?
えーっとね、ドラゴンとかは翼から魔力を放出して、飛んでいるため、この世界では翼は魔力を放出するための器官って感じなの。
で、私もその器官を魔力で擬似的に作って、それを使うってわけ。
魔力の質によって出来栄えは変わるらしいんだけど、私のは薄いガラスのような材質で虹色の翼になる。
私は『十月』を鞘から抜き、構えたまま飛んだ。
翼を作るのも難しいけど、操作するのもそれなりに難しいと思う。真っ直ぐに進むためには均等な魔力を左右から放出しないといけないし、片っぽの翼から魔力が出過ぎると、ずっと空中をぐるぐると回る羽目になる。
色々と大変なのだ。
私が丁度ドラゴンと同じ目線になったぐらいの時に、ドラゴンが念話を送ってきた。
『お主、我を害そうとするならば、我も本気になろう!』
なにやら本気になったドラゴンが気合いを入れているようだ。
その間に私は『分析』を開始した。『分析』も私の能力の内の一つで、『探索』の上位変換版といったらいいのだろうか。
『探索』は広範囲だけど薄い分析しかしない。
けど、『分析』は狭い範囲ながらもずっと高度な分析をする能力だ。
私はじっくりと分析をした。
どこか、一直線になっている鱗の隙間はないか?
すると、ドラゴンの正面から丁度、その隙間があった。
ーーー見つけた。
私はドラゴンの正面にゆっくりと回った。
『本気……』
剣に魔力を纏わせ、構えた。
『黄金竜の息!』
ドラゴンがそういった瞬間、私は大きく剣を振りかぶって、斬撃を放ったら、
ドシュ
小さな音がして、ドラゴンが切れた。
私が勢いをつけすぎたのか、こちらにくるはずのブレスも消え、ドラゴンの体は真っ二つに切られていた。
ゆっくりゆっくりドラゴンの体が落下していく。
ダアアァン、メキメキャ……
鼓膜を打ち破りそうなほど、大きな音がして、そのあと木が折れる音がかすかに聞こえた。
今度からは、倒した後のことも考慮しなくちゃね……
本当はこんな雑魚っぽくなるはずじゃなかったんですけどね。登場人物のせいかと。
明日も更新予定です。




