第24話 無駄に長い名
「え?僕が操られてたの?!」
素頓狂な声を出すソラに
「うん」
コクンと頷くルゥ。
村を後にしたメンバーは、現在西に進んでいた。
「大変だったね〜…」
他人事のようにソラが言うと
「白い宝玉も奪われちゃったしね」
頭の後ろで腕を組みながらルゥが言った。
「…ごめんなさい」
ぺこっと頭を下げるソラ。
「いひひ♪」
「まふ〜」
そんなソラを見て笑うルゥとその頭に乗ったガブリエル。
「エリアもごめんね?」
自分を心底心配してくれたエリアに申し訳なさそうにソラが謝ると
「え?だ…大丈夫よ!!」
両手をぶんぶん振りながらエリアが応えた。
「エリ姉、顔赤い」
ルゥがさらりと言うと
「え?そ…そう?」
赤くなった両頬を手で押さえるエリア。
どうやら人質になったときの事を思い出していたようで。
「いひひ♪やばいねシャーン」
ルゥが言うと
「く…俺が助けてやったのに…?!何だ!?俺には何が足りないんだッ!??」
悔しそうにシャーンが足を踏みならした。
「きき?」
そんなシャーンに小首を傾げるテトラちゃんでした。
しばらくして、メンバーは街に辿りつきました。
その街には、一面に綺麗な花が咲き乱れています。
「わぁー!綺麗〜!!」
一面のお花畑を見て感動するエリア。
「お!教会だ!俺初めて見たぜ!!」
シャーンが言うと
「本当!可愛いい〜!ね!行ってみましょ!?」
目を輝かせながらエリアが言った。
可愛いい教会にやって来たメンバー。
〔この教会はあたしのだからよろしく〕
教会の扉に張り紙が貼ってあった。
「「ええええええ!?」」
その紙を見て驚くメンバー。
「教会が…お家!?」
「あり得ねぇ…」
エリアとシャーンがぽかんと口を開けていると
「そうなのよ〜」
近くにいた女性がこちらにやって来た。
「この教会の中で彼とキスすれば二人の絶対幸福が約束されるって噂なのに…」
残念そうに女性が言うと
「「ちゅー!?」」
何故かキスを変換するエリアとシャーン。
「これ見てソラ兄!!」
そんな二人をよそに、扉を調べていたルゥがソラを呼んだ。
「?」
ルゥが指差しているところに目を向けるソラ。
「…ジュゲムジュゲムの…本名を言え…?」
そしてそこに書かれている文章を読みあげた。
「! オレそれ知ってるぜソラ兄!!」
それを聞いて思い出したようにルゥが言った。
「本当?」
ソラが聞き返すと
「ああ。あれはヤツとテリーとオレが鬼ごっこをしたときの話だ…」
「…は?」
ルゥが目を瞑って語り出した。
+ + +
『やべぇ!?アイツ予想以上に速ぇっ!!!』
オレが親友のテリーに走りながらそう言うと
『オチツケ ルゥ!テリータチ カナラズカテルヨ!!テリーヲシンジテ!!』
テリーはいつものようにカタコトな口調でオレを励ましてくれたんだ。
『テリー…でも、このままじゃ追い付かれるぞ?!』
『シット!!』
テリーは悪態をつくと
『! ルゥ!へりダ!!』
『な!なるほど!!!その手があったか!!』
何を思ったのか、無駄に金がかかる手法を提案しやがったんだ。
ばばばばばばばばばっ
『坊ちゃま!どう致しましたかっ!!』
やって来た紳士たちに
『ダイシキュウ、へりヲトバシテクレ!!』
テリーはそう言ってオレと一緒にヘリに乗り込んだ。
『『ラジャっ!!』』
それからしばらくして
『…ここまで来れば大丈夫だろ!』
『ヤッタネ!!ルゥ!テリータチノ カンゼンショウリダヨ〜〜ッ!!』
オレらが勝った…そう確信したその時…
『坊ちゃま〜!!誰かがヘリポートに!!』
『何ッ!?…まさかヤツ!!?』
『オイ、ルゥ!…ソノマサカダヨ…!!!』
オレらは目を疑った。
だがヘリポートに立っている奴は紛れもなくあいつだった。
そう。この鬼ごっこの鬼である…
『『ジュゲムジュゲィ〜〜ム……!!!』』
+ + +
「もういいもういい」
ルゥの無駄に長い語りを止めるソラ。
「ジュゲムジュゲムって、俺も聞いたことあるな」
すると、ソラの後ろでシャーンが言った。
「本当!?シャーン」
目を輝かせるエリア。
「聞いたことだけな」
てへっと笑いながらシャーンが言うと
「チッ…使えねぇ…」
小さく舌打ちするエリア。
(エ…エリア!?)
エリアの意外な行動に驚くシャーン。
「…ここは汚名返上と致しましすか!」
すると、咳払いしたソラが
「ジュゲムジュゲム、五劫のすり切れ、海砂利水魚の水行末、雲行末、風来末、食う寝る所に住む所、やふら小路のぶら小路、パイポパイポ、パイポのシューリガン、シューリガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長介。」
さらりと言った。
「「…え?」」
目を丸くするメンバー。
すると
ピンポーン♪
と音がして扉が開かれた。
「…?どしたのみんな?」
せっかく扉が開いたのに入ろうとしないメンバーを見てソラが小首を傾げると
「な…なんでもないわ!」
「おぅ…行こうぜ!」
「た、楽しみだね〜」
「まふまふ〜」
「きき〜…」
メンバーは首をブンブン振りながら教会の中へと入っていった。
((…コイツ…侮れねぇ))
とか思いながら。