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 ため息をついたはずみに思い出されるのは、名君と名高い現女王である姉の姿。

 12歳年上の姉は長いこと子どもに恵まれずにいたが、数年前ひとりの息子を授かった。


 それにより、王位継承権第一位はフェリカから、その王子へと移ったのだ。

 

 年若くして即位した姉が、どれほど国のために尽くしてきたか。

 子を授かれずにどれほど苦しんできたかを、フェリカはよく知っている。

 だからこそ、過去には皇貴に選ばれたことで王に返り咲いた例もあるが、望む気にはなれない。


 それでも、もしコトネに選ばれることがあるのなら──

 ふと浮かんだ思いに、内心フェリカは小さく首を振る。


 (……ううん、考えることじゃないわ)


「フェリカは?」


 コトネの言葉に不意を突かれ、フェリカは一瞬の間を置くも、すぐにいつもの落ち着いた様子で答える。

 

「私は、選ばれなくても困らない立場だから」

「それは、前にも聞いて覚えてる。けど——」

 

 言いかけて、コトネは言葉を止める。


 皇貴がどの国を選んだとしても、西の国はそれほど大きな影響はない。

 婚姻の相手として選ばれれば東から西へとまっすぐ地脈が流れるが、北を選んでも南を選んでも、僅かに弱まるとはいえその恩恵は受けられる。

 

 だからこそ、「選ばれなくても困らない」──その姿勢は、王位継承権が移る前から変わらない。


 サヴジもエリンも、国のためにも皇貴を求めるのは同じだ。

 

 小さい頃からリードしてくれたのは、サヴジ。

 コトネ自身にも好意を明確に示してくれるのは、エリン。


 フェリカはサヴジが押してコトネが困れば、助けに入る。

 エリンが駄々をこねてコトネが押されそうになると、さりげなく引き戻してくれる。

 

 (フェリカは、私のことをどう思っているんだろう)

 

 嫌われてはいないと思う。

 選ばれなくても困らない、と、選ばないで欲しい、は違うと思う。


「後一年だってことはわかってるし、ちゃんと考えなきゃいけないことも、わかる。ずっと言われてきたことだから。でも……」


 そこまで言ったところで、コトネはほんの少し唇を噛み、重苦しい顔になって考え込んでしまう。

 そんな様子にくすりと笑うと、角砂糖が入ったポットをコトネの方に寄せるフェリカ。


「……頭を使うときは、甘いものがいいんだよね、覚えてるよ」


 ほんの少しコトネの頬がゆるむ。


「そうそう。──それでお砂糖は、いくつ?」

「ふたつ」

「はい、どうぞ」

 

(もっとちゃんと考えないとな)

 

 そう思うけれど、先程のような重苦しさに唇を噛むことはない。

 フェリカの気遣いに触れ、コトネは小さく息をつく。


 差し出された角砂糖をひとつ、ふたつ、とカップに落とした。




 

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