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残り12ヶ月、未性別の皇貴は誰を選ぶ━━三国の王子と王女の国取り婚姻譚  作者: ぬこ@nuko_nuko
第十八章

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問われるのは、覚悟の代償

***


「それでね、これがサヴジへのお土産! 一本はシロップになってるから、あのベリーと一緒に楽しんで」

「……悪くないな。控えめな酸味が、ベリーを引き立てるだろう」

「ねえコトネ、これとてもおいしいわ。ヤコクの料理って繊細な味付けだけど、奥が深いのね」

「それ、私も好きなんだ。おいしいよね」


 食事を楽しみながら、近況報告などをし、賑やかな時間を過ごす。

 

「エリンもそれ好き! ちょっと甘いソースが合うのね」

「この緑の実が良いな」

「そうなのよ、甘さを引き締めて香りを添えてくれるのよね」

「それはいい香りだけど、たくさん食べると舌がピリピリするよ」 

「え、本当!? ……きゃっ、本当にピリピリしたわ!」

「……ピリピリすると言われているのに、なぜたくさん口に含むんだ」

 

 エリンの葡萄園には、新たにミツバチがやってきたらしい。巣箱を設置し、無事住み着いてくれたそうで、豊作が期待できそうだと笑う。

 フェリカが髪につけている飾りがコトネが作ったものだと聞き、エリンはうらやましがり、サヴジは僅かに目を細めた。フェリカが、いつかみんなで時計を作ろうと提案をする。

 ルーシアの冬の厳しさは変わらないが、新たな試みに取り組んでいるとサヴジが話す。


 そうして近況報告などをし合ったところで、フェリカが切り出した。


「コトネ、ヤコクの王城内に招かれての交流会は、初めてよね。しかも、コトネが望んでくれたのだと聞いているわ」

「──うん、そう、なんだ」


 どこから話そうか、と言葉を探すコトネ。

 ゆっくりと、三人の顔を順番に見る。

 真剣なまなざしが向けられているのを受け、重くなりかけた口を開く。


「たくさん、……秘密が、あるの」


「秘密?」

「聞かせて」

「話せ」


 三人の言葉に、こくり、と静かに頷く。

 すると、


 ──りぃん、りぃん、りぃん。


 と三回、鈴がなった。


 

 ***


 

 コトネ達は侍女に連れられ、少し離れた部屋へと案内された。

 中には細長い机。その両隣には燭台が置かれ、火が揺らめいている。

 そして──机の中央には小皿と、小刀があった。

 ぬらりと鈍く光るその刀身に、思わずエリンが足を止め、フェリカは息をのみ、サヴジの目に警戒が滲む。


 ──りん。


 もう一度鈴がなり、部屋の奥から導師が現れた。


「皇貴様の願いにより、皆様をお迎えいたしました」


 導師の言葉に、コトネが、三人が頷く。

 それと同時に、入ってきた扉がするすると閉じられた。空気の流れが、すん、と停まる。

 

「ですが、これより先は、皇貴と皇貴に関わるお役目組のみが知ること。口外は一切禁じられます」

「……無論、口外ならぬというのなら従うまで」「ええ。そうね」「エリンも言わないわ」


 三人の返事を聞きながら、負担を強いてしまうことを思い、コトネが小さくうつむきかける。

 しかし、それに気付いたサヴジが口を開く。


「気に病む理由はない」


 一瞬戸惑った後、こく、とコトネが頷く。


 ただ、導師は身動き一つせず、サヴジたちの名を淡々と呼んだ。

 全員の視線が集まったのを確認した後、懐から一枚の紙を取り出し、机の上に置く。

 

「──今から語られるのは、これまでの長きにわたり、皇貴達が命を賭して守ってきた秘儀です」

「何があろうと、どんなことが起ころうと、この秘密を漏らすこと、まかりなりません」

「それを知るということは、過去代々、そして現代、未来の皇貴やお役目組と同じ重みを背負うということ」

「決して、簡単なことではございません」

「故に、ご覚悟の程を問わせていただきます」


 そう、静かな声音で告げる。

 ひゅう、と外で風が吹く。しかし、燭台の火は一切揺るがない。


「今ならば、まだ引き返すことができます。このままヤコクに明日まで滞在し、交流会をお過ごしください」

「引き返す……って? コトネが抱えてる秘密を知らないままでいるっていうこと?」


 エリンの問いに、ゆっくりと導師が頷く。

 すると、エリンはぶんぶん、と大きく頭を振る。

 

「エリンはそんなの嫌。だってコトネは話してもいいって思ってくれたんでしょ? それなら聞きたいわ! それに、すごく、すごく大切な話なのよね?」


 じっと見つめられ、一瞬戸惑うが、ゆっくりと頷くコトネ。

 その唇がきゅっと結ばれるのを見て、フェリカが気遣うような視線を向ける。


「聞くことでコトネが困るのなら、聞かないわ。でも……そうではないのなら、私は聞きたい」

「……困らない、よ」

「ならば、引き返す理由など、何一つない。俺は知りたい。お前がこれまで何を抱えて来たのかを」


 コトネの言葉を受け、サヴジが続ける。


 もう一度導師は、その覚悟を三人に問うかのように一人一人を見つめた。

 サヴジ、エリン、フェリカ。

 いずれもがためらうことなく、まっすぐに見つめ返し、頷き、意思を示す。


「──では」


 それを確認し、導師は机に置かれた短剣に手をかけた。




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