光
「何でカエデがいるんだ?」
リビングにはナギサと母さん、カエデがいた。
「コウキ!あなた、何をしていたの?早退したって聞いたわよ?」
「コウキ、どこ、行ってた?」
「…」
二人は聞いてくる。だが、ナギサは黙っている。まだ少し熱があるようだ。顔が赤い。
「あ~、説明は後だ。とりあえず、ナギサ。エリクサーが見つかったぞ?」
「「え!?」」
「え?ッ///」
おっ、反応した。顔が真っ赤になったぞ!?大丈夫なのか!?
「とりあえず、飲め。病気にも効くらしいから、大丈夫なはずだ。」
僕はナギサの傍に行き、エリクサーを取り出す。
「えっ、あっ?えっ」
ナギサがわたわたしている。可愛い。…じゃなくて!
「ほら、口開けろ。ゆっくりでいい。少しずつ、飲むんだ。」
僕はエリクサーの小瓶の蓋を取り、その口をナギサの方に向ける。
「えっ!?ん、むぅ。~///」
ナギサの口に少しエリクサーを流し込む。
「んっ、んぅ、こくん。」
ナギサはそれを飲んだようだ。母さんとカエデは混乱しているのか、茫然としている。
「よし、もう一度だ。」
「えっ!?ちょ、んぐっ、む、うぅ。こくん。」
ナギサはエリクサーを全部飲んだ。
「どうだ!?体は?変なところとか無いか?」
どうなんだ?ちゃんと効いているのか!?
「ん、あれ?熱が、無い。体も軽いよ。」
おお!効いているのか!
「え?ッ!?い、痛っ!?」
ナギサが急に顔を押さえて蹲る。何だ!?
「だ、大丈夫か!?どこだ!?どこが痛いんだ!?」
「ナギサ!?」
「大丈夫?」
母さんとカエデが正気に戻ったのか、ナギサに駆け寄る。
「だ、だい、じょうぶ。」
ナギサは大量の涙を流しながら言う。どこが大丈夫なんだよ!?
「ナギサ、強がらなくてもいい。どこだ!?どこが痛いんだ!?」
「ち、違うの。目が、ちかちかするの。まぶしいの。光が、分かるの。みえるの。見えるのよぉ、お兄ちゃん。」
ナギサは涙ながらに僕に抱き着いて言う。
「そうか、見えるか。良かった。よかったなぁ、ナギサ。」
僕も抱き返す。僕も泣いているようだ。ナギサの髪に水滴がついている。
「え、うそ、本当に!?」
「見える、の?」
母さんとカエデが聞く。
「うん。久しぶりに、『まぶしい』って感じてるの。」
「ああ、ナギサ!」
母さんも僕達を抱擁する。
「ありがとう。ありがとうね。お兄ちゃん。」
ナギサが僕にずっとお礼を言ってくる。
「いいんだよ。僕が、したくてやった事だから。」
ナギサは僕に抱き着いている腕に力を入れ、顔を僕の胸に押し付ける。
…いつまでそうしていただろうか。やがてナギサの腕から力が抜ける。
泣き疲れて寝てしまったようだ。
僕はナギサの体勢を寝違えないように整え、その頭を僕の膝に乗せる。
「あら、可愛い寝顔ね。」
母さんが言った。
「母さん、話があるんだ。カエデも、放っておいてすまなかった。聞いてくれないか?」
「はい、聞きますとも。」
「ん。教えて。」
僕は話した。自分が『死煙』であること。探索者稼業を八歳の時から始めていた事。それはナギサの為に、エリクサーを手に入れたいからだという事。そして、今朝、そのエリクサーが見つかり、交渉しに行き、無事、手に入れたという事。
「あ、あらあら、ちょ、ちょっと、母さん、お茶淹れてくくるわわね?」
母さんが全身を震わせながらキッチンに向かった。こぼして火傷とかしないでくれよ?
「びっくり。コウキ、『死煙』なの?」
「ああ。ごめんな?ずっと黙ってて。」
「んん。ちょっと、寂しかった。けど、新しいコウキの事、知れた。嬉しいの。」
カエデが笑う。ああ、やっぱりこの笑顔は…
「可愛いなぁ(ボソッ)」
「ひぇ!?///え、うぇ、あぅ。」
…あれ?声に出ていたか?まあ、いいか。
僕は俯いているカエデの頭を優しく撫でる。子供の頃、ナギサにそうした様に。
「ひゃ…ぅ?っ!///」
「なあ、カエデ。やっぱり僕は、君の事…」
「お、お茶が入りましたよ~。」
…母さんタイミング悪いな。
母さんがお茶とお菓子を乗せたお盆を持って、リビングに入ってくる。
カエデは、なんか、凄い顔をしている。母さんに恨めし気な視線を向ける。
「え、えっと、で、コウキがあの『死煙』様なのね!?」
母さんが凄い迫力で僕に迫ってくる。って、『様』!?まさか…
「お母さんね、『死煙』様のファンなのよ~。ほら、ちゃんとファンクラブにも入っているわ。」
母さんが会員証を見せてくる。…知りたくなかった!!ちょっとした事みたいに言ってるけど、この会員証、ガチのやつだ!どこかの『死煙』のファンが『死煙』の事を知るために立ち上げた歴とした企業に母さんが加入している!
噂で聞いたことがある。加入するための面接では、能力より気持ちが重要視される、と。
政府の尋問官が『死煙』のファンで、嘘を見破る異能持ち。こいつが『死煙』への愛がどれほどのものか確かめるために尋問官を辞め、その企業で働いているとか…
って、まずい!
「母さん!そのファンクラブを辞めてくれないか?嘘がばれてしまうならいつかボロが出てしまう。素性がばれると、僕は良いけど、ナギサにまで監視がかかるだろうから。」
「う、そうしたいのはやまやまなんだけど、『死煙』様の情報が分かりにくくなっちゃうし…」
なんだと!?ナギサより『死煙』を選ぶのか!?親としてそれはどうなんだ?
「『死煙』の情報なら僕に直接聞けばいいだろう。なんならダンジョン内部での戦闘もカメラで撮って『母さんにだけ』見せてあげるよ。」
「すぐ脱退するわ!…はい!辞めたわよ!」
速っ!
僕達はそんなことを話して、笑い合っていた。
「ん、う、むぅ。」
ナギサが身じろぎをする。
「お?起きたかい、ナギサ?」
僕はナギサを見る。そして目を見開く。
「ん、あ、お、お兄、ちゃん?」
ナギサと、目が合った。




