♥ 馬車の中 1
──*──*──*── 馬車の中
オレはセフィと向かい合わせて座りながら、窓の外を眺める事にした。
盗賊に殺されてしまったエルフの家族の死体はどうなるんだろう。
ちゃんと埋葬してもらえるのかな?
それとも放ったらかしのまま野晒しで放置されるのかな…。
野晒しで放置なら怪物や魔物に食べられてしまうのかな…。
顔も知らないし、人となりも知らないエルフの家族なんだけど、何かさ、可哀想だよな…。
ベアリーチェ
「 セフィ、殺されたエルフの死体をさ何処かに埋葬してほしいんだけど、出来るかな?
ちゃんと墓石を立ててお墓を作って弔えないかな…。
流石に野晒しのまま放置するのはさ…… 」
セフィ:セフィロート
「 エルフだからです? 」
ベアリーチェ
「 そうかもな。
エルフに恩を売るわけじゃないけどさ… 」
セフィ:セフィロート
「 エルフに恩を売るのは良い案です。
エルフは受けた恩を忘れませんし。
死体は全て妖精に回収させます。
回収した死体は綺麗にして保管しときましょう。
魔法を使えば切断された死体も修復する事が出来ますし 」
ベアリーチェ
「 セフィ!
有り難な! 」
セフィ:セフィロート
「 ベリィの望みなら叶えます 」
ベアリーチェ
「 セフィのお蔭で、オレの憂いも晴れるよ! 」
セフィ:セフィロート
「 良かったです♪
デザート食べます? 」
ベアリーチェ
「 食べるぅ! 」
セフィ:セフィロート
「 用意しましょう 」
ベアリーチェ
「 うん(////)
──あっ、そうだ。
マチルフォント領に入ったらさ、何れぐらいでマチルフォント邸に着けるんだ? 」
セフィ:セフィロート
「 何事もなく順調に進めば2時間弱でしょうか 」
ベアリーチェ
「 えっ……。
マチルフォント領の関所からクルチェの屋敷まで2時間も掛かるのか??
シュケルハン邸 ─→ シュケルハン領の関所までが約1時間30分だろ…。
シュケルハン領の関所 ─→ マチルフォント領の関所までが約3時間だろ…。
マチルフォント領の関所 ─→ マチルフォント邸までが約2時間弱……。
シュケルハン邸 ─→ マチルフォント邸までは約6時間30分 〜 7時間ぐらい掛かるって事になるよな?? 」
セフィ:セフィロート
「 そうですね。
順調に進めば約7時間あれば到着しますね。
先程の停車で時間を浪費しましたから、予定の到着時間より1時間程遅れるかも知れませんね 」
ベアリーチェ
「 えぇ〜〜〜……。
オレ、正午過ぎに着けると思ってたのに、15時過ぎるちゃうかも知れないのか?
16時になっちゃうかも知れないのか?
クルチェに動き易い服を借りて、遊び回りたかったのに、今日は遊べないかも知れないのかよ? 」
セフィ:セフィロート
「 そうなりますね。
明日も滞在しますし、遊ぶのは明日にしてはどうです?
折角ですし、夜にはダンスレッスンをさせていただきましょう 」
ベアリーチェ
「 えぇ〜〜〜。
クルチェの家に行って迄、ダンスをするのかよ… 」
セフィ:セフィロート
「 クルチェールはベリィより貴族令嬢の先輩です。
学ぶ事も色々とあるでしょうし、新しい発見もあるかも知れません。
きっと楽しくて有意義な時間を過ごせるでしょう。
細やかで小さなお茶会を開いても楽しいでしょうね 」
ベアリーチェ
「 …………そだな…。
初めての御呼ばれで、羽目を外し過ぎるのは良くないよな… 」
セフィ:セフィロート
「 それに、マチルフォント邸には気になる事があります 」
ベアリーチェ
「 気になる事? 」
セフィ:セフィロート
「 そうです。
今日の為に前以て妖精にはマチルフォント邸を調べさせてました 」
ベアリーチェ
「 人様の屋敷に無断で妖精を忍ばせてるのか?
完全にスパイだな… 」
セフィ:セフィロート
「 絶対に見付からないスパイです。
隠密も密偵も暗殺者も真っ青でしょう 」
ベアリーチェ
「 裸足でトホホしながら逃げてくよ…。
──で、何か分かったのか? 」
セフィ:セフィロート
「 クルチェールにはシェリエッタという姉が居ます 」
ベアリーチェ
「 あぁ、そう言えばクルチェがそんな事を言ってたよな。
クルチェのお姉様がどうかしたのか? 」
セフィ:セフィロート
「 今も風邪が長引いているようです 」
ベアリーチェ
「 風邪が長引いてる?
そう言えば、 “ 風邪を引いてる ” って言ってたよ〜〜な気がするな。
未だ治ってないのか? 」
セフィ:セフィロート
「 お土産として、今のシェリエッタに良く効くハーブを持参しました。
ワタシが用意したハーブを煎じて飲めば、1週間程で体力も戻るでしょう 」
ベアリーチェ
「 セフィ〜〜。
優しいんだな(////)」
セフィ:セフィロート
「 マチルフォント家は公爵ですからね。
恩を売っておけば、後々助かります。
味方は多い方が良いです 」
ベアリーチェ
「 恩売りかよ… 」
セフィ:セフィロート
「 マチルフォント公爵とマルチフォント公爵夫人にもお土産を用意してます。
喜んでもらえると良いですね 」
ベアリーチェ
「 お土産?
気が利くなぁ、セフィ 」
セフィ:セフィロート
「 ベリィの為です 」
セフィと他愛ない話をしながら、デザートを食べる。
15時か16時かぁ…。
14時30分 〜 15時の間に着いてほしいなぁ…。
ベアリーチェ
「 セフィ、今って何時かな?
もう正午は過ぎてるかな? 」
セフィ:セフィロート
「 先程11時30分を過ぎました。
後1時間と少し経過すれば、領地外を抜けてマルチフォント領の関所に入ります 」
ベアリーチェ
「 マジかよ……。
後1時間も…。
それから未だ2時間も掛かるのかよぉ〜〜〜。
道程は長いなぁ… 」
セフィ:セフィロート
「 ベリィは馬車に座って、揺られているだけでしょう。
少し休みます?
起きたら到着しているかも知れませんよ 」
ベアリーチェ
「 そうだよなぁ…。
じゃあ、一寸だけ寝ようかな?
デザートを食べて直ぐには寝たくないけど… 」
セフィ:セフィロート
「 ワタシの膝を枕にしてください 」
ベアリーチェ
「 うん(////)」
オレはセフィの右横に移動した。
セフィの膝の上に頭を乗せる。
セフィの膝はオレが使ってる枕よりも寝心地が良いんだ。
セフィの厚意に甘えて、一休みさせてもらう事にした。
両目の瞼が自然に下がって来た。
睡魔が眠りへ誘いに来たみたいだ……。