♥ 子供部屋 1
──*──*──*── 2階・子供部屋
久しく使っていない子供部屋だけど、何時でもオレが使えるようにと侍女が侍女見習いと共に丁寧に掃除をしてくれている。
隅々まで掃除が行き届いているお蔭で、子供部屋の中は綺麗で清潔感が保たれている。
信頼の出来る仕事振りだ。
きちんと掃除をしてくれていなかったら、恥ずかしくて子供部屋を使う事は出来なかっただろう。
職務怠慢しないで真摯に真面目に仕事をしてくれる侍女と侍女見習いへは足を向けて眠れないよ。
何時使うか分からない子供部屋を毎日掃除してくれる侍女と侍女見習いに何か御礼をしたい。
侍女達が喜ぶ物が分からないから、セフィに相談してみよう。
同じ侍女のドルシーにも相談してみよう。
ライエルと護衛騎士を子供部屋の中へ通して、ライエルにはソファーへ座ってもらう。
ドアを閉める前にセフィが来てくれた。
セフィはサービスワゴンに紅茶セットを乗せて運んで来てくれた。
ドアを閉めるのはセフィに任せて、オレもソファーの上に腰を下ろして座った。
セフィが直ぐ様特製の紅茶を淹れてくれる。
ライエルの前とライエルの左側── オレ側から見たら右側になる ──にティーカップを乗せたソーサーをテーブルの上に置いた。
ベアリーチェ
「 宜しければ騎士様もセフィの淹れた紅茶を召し上がってください〜〜 」
護衛騎士
「 ──いえ、私は王子殿下を護衛させていただいている身ですので…… 」
婚約者:ライエムント
「 いいよ、ナルギフ。
一緒にいだだこう。
ほら──、僕の隣に座って 」
護衛騎士:ナルギフ
「 然し、王子殿下── 」
婚約者:ライエムント
「 ナルギフ、折角の御厚意を無下にするのは騎士道に反するのではないかな? 」
ライエルは職務を全うしようとしているナルギフへ笑顔を向けて、左手でソファーの上をポンポンと軽く叩いている。
「 とやかく言わずに此処に座れ! 」って合図だろう。
護衛騎士:ナルギフ
「 …………分かりました。
紅茶、いただきます 」
護衛騎士は笑顔のライエルに気圧されたのか、渋々折れたようだ。
どんなに強くて腕が立っても、所詮は騎士だもんな……、王子殿下の命令には逆らえないよなぁ…。
ライエルの左側に腰を下ろして座った護衛騎士──ナルギフは、ティーカップの取っ手を持って、ティーカップに口を付けた。
紅茶を口に含んだナルギフの顔色が変わった。
護衛騎士:ナルギフ
「 ──これは……っ!!
美味い……!!
こんなに美味い紅茶を飲んだのは初めてだ! 」
どうやらナルギフはセフィの紅茶を気に入ってくれたみたいた。
セフィ:セフィロート
「 ナルギフ様に喜んでいただけて何よりです 」
婚約者:ライエムント
「 ──本当だ!
今までに味わった事のない味だ…。
こんなに美味しい紅茶があるなんて…知らなかった…… 」
おっ、ライエルもセフィの紅茶を気に入ったみたいだ。
婚約者:ライエムント
「 リーチェ、君は毎日このような美味しい紅茶を飲んでいるのかい? 」
ベアリーチェ
「 勿論ですわ〜〜。
セフィの淹れてくれる紅茶は絶品でしょう〜〜 」
婚約者:ライエムント
「 そうだね…。
リーチェが羨ましいよ。
…………僕はナイロートの淹れてくれる紅茶も好きだから…困るなぁ…(////)」
ベアリーチェ
「 ナイロート…もしかしてライエル様の専属執事の方ですの〜〜? 」
婚約者:ライエムント
「 そうだよ。
僕が4歳になった時、ナイロートが専属執事に抜擢されたんだ。
若かりし頃は、剣鬼神と呼ばれる程の騎士だったそうだよ。
生ける伝説だね 」
ベアリーチェ
「 そうですの〜〜。
騎士様が執事になる事が出来ますの〜〜? 」
婚約者:ライエムント
「 ナイロートの両親は執事長と侍女頭だったからね。
執事のイロハは身に付いていたらしい。
ナイロートは何時か衛る主の為に剣術を学んだそうだ。
剣術が性に合っていたみたいで、執事にはならず騎士に志願して、晴れて騎士になったそうだよ 」
ベアリーチェ
「 そうですの〜〜。
騎士様になられてから、剣鬼神と呼ばれる程に活躍されたのは凄いですわね〜〜 」
婚約者:ライエムント
「 うん…(////)
ナイロートはね、僕の自慢なんだ…(////)
今は、ナイロートから直々に護衛剣を習っているんだ 」
ベアリーチェ
「 護衛剣ですの〜〜。
お母様もお祖父様から護衛剣を習ったと言ってましたわ〜〜。
淑女のたしなみなのかしら〜〜? 」
婚約者:ライエムント
「 …………たしなみとは違うと思うけど、身を守る術を身に付けているといざと言う時に有利だね 」
セフィ:セフィロート
「 ──剣鬼神は聞いた事があります。
マーナを武器へ注ぎ込み、魔物,怪物を薙ぎ倒す事が出来るとか… 」
護衛騎士:ナルギフ
「 ──っ!?
何故執事がナイロート様の秘密を御存知なのか! 」
ベアリーチェ
「 秘密…ですの〜〜? 」
婚約者:ライエムント
「 ナイロートが〈 マナ 〉だと言う事を知っている者は数少ない。
何処で知ったんだ? 」
セフィ:セフィロート
「 ワタシは…つい最近まで別の方に仕えていました。
仕えていた屋敷で知った事です。
騎士として活躍されていたナイロート殿に助けていただいた御恩のある家系です 」
婚約者:ライエムント
「 そうだったのか…。
出来ればナイロートが〈 マナ 〉である事は他言無用にしてほしい… 」
セフィ:セフィロート
「 心得ております。
隠されるにはそれなりの事情がおありなのでしょう。
此処だけの話にさせていただきます。
ナイロート殿の剣術の何処の流派だったでしょうか…。
ある意味で有名な流派だったと記憶しておりますが… 」
護衛騎士:ナルギフ
「 双剣術ステイン流だ。
剣士殺しと言われ恐れられていた殺人剣だ 」
セフィ:セフィロート
「 双剣術ステイン流──、そうでしたか。
ナイロート殿はステイン・エンディミン様のお弟子様でしたか。
世間は狭いですね 」
婚約者:ライエムント
「 どういう事かな?
ステイン・エンディミンは鬼剣神と言われ、恐れられていたと聞いているが…。
貴殿はステイン・エンディミンを知っているのか? 」
ベアリーチェ
「 セフィ、知ってますの〜〜? 」
まぁ、セフィは精霊だからなぁ。
知らないわけないよな。