学園にて愚か者を公爵令嬢は見た
会いたい会えない。あなたの心が見えない。
ディーン様の姿を目で追うだけで心が苦しい。
私は学園で授業を受けるために本を探していました。
学園は休みはしましたが、出席はしています。
だけどディーン様は全く私の様子を気になさることもありませんでした。
それを見て周りはおかしいと気が付き始めています。
だってずっとアリスさんとディーン様は一緒、私は授業を休むことがある。
なら乗り換えたのだと思うほうが普通ですわよね。
「あら、アリスさんをいじめるのはおやめになったの? フェリーシカ様」
「私はアリスさんをいじめてなんておりません」
「あら、ドレスの色は白ではだめ、レースが多すぎるとアリスさんに仰ったそうじゃないですの」
「ユーリカ様、私は常識を申し上げただけですの。白は公爵令嬢以外なら、王族の方しかまとえぬ色ですわ。それを……」
「あら、アリスさんはこれから王族になられるのだから関係ないと思います」
「……」
馬鹿だとは思っていましたが、本当のこの方馬鹿ですわ。
ユーリカさんを見て、ため息をつくわけにもいかず私は黙りました。
図書室で本を探していた私に声をかけてきたのはアリスさんの取り巻きの一人です。
「それからアリスさんにフェリカと愛称で呼ぶなとおっしゃられたそうですわね」
「フェリカという愛称で呼ぶのは身内だけですの」
「ではどうしてアリスさんが呼んではだめと?」
「私があなたをユーリ様とお呼びするようなものですわ。親しくもない方に愛称を呼ばれるのは嫌でしょう?」
私のフェリカという愛称は母とディーン様、あとはフィリア様や乳母しか呼ばせたことはありません。
フィリア様はとは同じ王族の婚約者ということで親しくしておりましたもの。
でもアリスさんは親しくなんてありませんわ。
冷たい目で私を見るユーリカさん、茶色の瞳にあるのは嘲り。
「アリスさんが王太子妃に……」
「バカバカしい、何をもってそのようなことを?」
私はクスクスとおかしげといったように笑って見せました。
するとむっとしたようにこちらを見るユーリカさん。ああおかしい、馬鹿馬鹿しい。
公爵令嬢である私に、たかだか伯爵令嬢であるユーリカさんを何をもってそんなことを?
「そうですわね。おかしなことばかり仰られるようならお父様や陛下にお願いして……」
「それは!」
私は権力というものを振りかざすのは嫌いでした。
だからこそこんな発言をした私を見てユーリカさんは驚愕なさっているのでしょう。
驚きに目を見張るその姿はまるで鳩みたいでおかしかったです。
「悪役令嬢と呼ばれるはずですわね」
「悪役令嬢?」
「そうですわ。あなたは悪役令嬢です。アリスさんをいじめる……」
「ああ、その呼び名もいいかもしれませんわね。前も仰られておられましたが」
「え?」
「ええ、そうですわね。悪役令嬢なんてあだ名もよろしいかもしれません」
どうせ私はこれから罪を犯します。
なら悪役令嬢なんて呼び名もいいかもしれません。
ゆっくりと私は笑って見せました。するとこんな時に笑うなんてと恐ろしげといったようにユーリカさんは身を引きます。
栗色の髪に同色の目、その色を見るとイライラします。
「そうですわね。悪役令嬢が命じます。私の目の前から消えてくださいまし」
静かに私が笑いながら言うと、怖い怖いとユーリカさんが笑います。
精一杯の虚勢というのはわかりましたが、私はこんな馬鹿な人にかかわっている暇はありません。
「ああ、空が青いですわね」
「え?」
「こんなに空が青いと憂鬱になります」
「何をわけのわからない……」
「空が青いと、夜が暗いと、とても憂鬱になるとお母様がよく言われていましたわ」
「……」
「ではごきげんよう」
本を手に私が一礼すると、また身を引くユーリカ様。
青い空が窓から見えます。ああ、空が青いと憂鬱になるという気持ちわかります。
だってこんなにも私の心は黒いのに、空が青いととても心が苦しいです。
初めてお母様のお気持ちが私わかったような気がしていました。




