狂気
投稿が遅れてすみません。
多分次も遅れると思います。
翌日
「はあ・・・今日は戦技か・・・・」
上で説明した通り、今日は戦技の授業である。戦技の授業と言うことで立石みたいな変態のテンションは上がっているが、大体の奴はテンションが低い。
そんな中、俺に声をかけてくる奴がいた。
「祐理さん、どうしたんですか?そんなに気を落として。」
「ああ・・・・知らないのか、今日は一日中戦技の授業なんだ。」
「そうなんですか、珍しいですね、そのやり方。日光だと一日二時間、ただし毎日でしたっけ?う~~~ん思い出せません。」
碧が頬に手を当てて唸る。
「そんな悩むことか?それに碧がさっき言ったことで合ってるぞ。」
「あ、ホントですか。それは良かった。急に気になっちゃって。そうだ、祐理さん。今日の戦技の授業で一緒にやりませんか?ここも二人ペアでやるんでしょう?」
「いや、ここはやりたい奴と自由にやる方式だ。だから俺はいつも―――――」
そこで丁度、立石と白波がこちらに向かって来るのが見えた。
「祐理~一緒にやろうぜ」
「師匠~私もです。」
************
戦技の時間が始まり、少し経つとまた愛の伝道師が現れた。
「碧さん!僕らとやりませんか?」
「嫌です。」
即答か。
「碧、何もそこまで拒否しなくてもいいんじゃないか?」
「祐理さん、生理的に苦手な人っていますか?」
「いるな。」
いつもフハフハ言ってる変態が頭に浮かんだ。
「正にそれです。僕はあの人達が生理的に苦手です。」
「そ、そうか・・・・じゃあ適当に追っ払うか。」
「お願いします。」
どうやら碧は愛の伝道師のことをかなり嫌っているらしい。追い払うのを俺に任せるぐらいだから話すのすら嫌なのかもしれない。
「お前らそろそろ諦めたらどうだ?そもそも碧は男だろ?」
愛の伝道師4人がこちらに凄い勢いで振り向く。
「「「「別にいいんだよ!!」」」」
怖っ!
「別に男の娘でもいいんだ!」
「オカマでも構わない!」
「性転換する覚悟は出来た!」
「愛は性別を越えるんだ!男か女かなんて関係あるか!」
四人目がなかなかいいこと言ってるんだが・・・
こいつらの碧への執着すげえな・・・・・
だが!そういう奴への対応は慣れてるんだよ!
「だったら人の存在を超越してから出直してくるんだな。」
「イエス・サー!!」
奴等は恐ろしい勢いで走り去っていった。
「お前ら、ちょっといいか?」
俺達がアホなことをやっているところに先生がやって来た。
「水雪、碧と知り合いなのか?」
「はい、そうですよ?」
何故だろう・・・・いつものごとく嫌な予感しかしない・・・・
「碧の実力って知ってるか?」
「知ってますよ。」
なんだ、そんなことか。
ゾワッ(悪寒)
な、なんだ今の・・・・・
「どれくらいなんだ?お前や他の奴等は知ってるんだが碧は転校してきたばっかりでな・・・」
「えーと・・・・俺より強い、ってことぐらいしか知りません・・・」
その話をすると、先生は驚いたような顔をしながら去っていった。
「そんな驚くことかね・・・・」
俺が溜息混じりにそんなことを言っていると、後ろから声がした。
「いや、驚くだろう普通。あの三年の卯月先輩を倒せるような奴なんてそうはいないじゃん。」
「そうかな?結構いると思うんだけど・・・・」
「お前の比較ちょっとズレてないか?」
立石がちょっと呆れたような顔をしている。
そうかなあ・・・・あ、そういうことか。
卯月と魔術兵士を比較するから悪いのか、普通の学生と比較すればいいんだな。
うんうん納得そういうことね。
「立石悪い、卯月と魔術兵士を比較しちまった。」
「そりゃ卯月先輩でも勝てないだろう。あれ?でも卯月先輩って生半可な魔術兵士より強いって言ってなかったか?」
「そりゃそうだろ。魔術兵士が皆が皆強い訳じゃないんだから。」
黙っていた白波がいきなり口を開いた。
「確か魔術兵士にも位があるんですよね。魔法の階級と同じ呼び方になっているんでしたっけ?」
「そうそう、魔法と同じく最下級、下級、中級、上級、超級、神級、禁忌級、って分けられてるんだ。」
「卯月先輩はどのくらいなんだ?」
立石の疑問に簡潔に答える
「中級。」
「は?・・・・」
立石と白波が唖然としている。
「だから、中級。」
「師匠。中級ってどの位強いんですか・・・・・」
その疑問に俺がどう答えようと考えていると碧が助け舟を出してくれた。
「祐理さんが困っているので僕が答えますけど、最下級が魔術兵士になる試験にギリギリ受かるレベルで下級が試験に余裕で受かるレベルです。ここなんですが、最下級と下級では結構差があります。次に中級ですが、またここで結構差があります。中級ともなると歴戦の戦士と言った感じになります。」
「卯月先輩ってそんなに強いのか・・・・・」
「まあ、実戦を経験してるからな。」
「碧さん、その上はどのくらい強いんですか?」
白波が疑問を碧にぶつける。
俺と違ってすぐに返答が返って来るからな。
・・・・悔しくなんかないもん
「上級は中級よりちょと強いぐらいです。超級ともなると英雄扱いされますよ。神級ともなると最早人ではないです。その上―――――禁忌級はもう化物ですよ。強さが桁違いです。一人で都市を滅ぼせます。確か30年前の英雄がここに該当します。後は未だに生きてるイギリスの生きる伝説ぐらいですかね。」
その答えに立石が驚く
「あ、あの第一次人魔大戦の!?」
「そうそう、初めて魔法で魔物を撃退した最強の。」
「うっわ・・・・そんななのか・・・・他にはいないのか?」
「禁忌級になるとほとんど国家機密レベルですから、いても知らない場合が多いですよ。表に出てくるような人は稀です。」
禁忌級なんて殆どいないと思うけどな・・・・・
「なんで碧さんはそんなに知ってるんだ?」
「それは―――――」
碧が俺に視線を送る。俺もそれに対して視線で応答する。
「知り合いにそういうのに精通している人がいるんですよ。その人の知り合いに強い人がいっぱいいて、その友人のおかげで知っていった感じです。」
うむ、結構結構。まあ嘘でもなく真実でもなくって感じだな。
「その人ってどのくらい強いんですか?」
「プライベートな事なのであまり詳しくは教えられませんが・・・・・まあとてつもなく強い、と言うことだけは言っておきます。」
と碧がそう言った所でブザー音が鳴り。午前中の訓練終了を告げた。
**************
午後になり、戦技の授業と言うことで生徒が集められた。
「え~午後の授業ではお前らにこれを使った訓練をしてもらう。」
喋りながら先生はおもむろにあるものを取り出す。
それは、市販の魔法武器とは違い、柄だけではなく刃まである剣だった。
「今日は法具を使って戦う状況を想定して実体のある武器を使ってもらう。何か質問は?」
そこで、生徒の一人が手を挙げた。
「先生、法具と魔法武器はどのような違いがあるんですか?」
「重さだ。魔法武器は魔法合金を利用しているからかなり軽くなっているが法具は違う。武器の能力のおかげで軽いものもあるが大体は重い。法具は通常の鉄等に何らかの魔法で硬くなっていたりするから魔法合金と同程度、もしくはそれ以上の硬度を持っていたりするが素材は鉄が多い。だから魔法合金よりかなり重くなることが多い。」
先生の説明が終わり、質問した生徒が礼を言ったところで先生がまた喋り始めた。
「他に質問は?・・・・・無いな。よし!ではこれより実体のある武器による訓練を始める前に、実体のある武器の扱い方の見本を見てもらう。」
先生。俺と碧を使う気だろう。
断固辞退させてもらおう!
先生の視線が俺と碧に合う。
「水雪、碧やってくれ。」
「断固辞「はい、分かりました。」」
碧に被せられた!?
「なっ俺はやらんぞ!?」
「そんなこと言わずにやりましょうよ。」
碧がニッコリと笑いながら俺に喋りかける。
「やりましょう?・・・・・ね?」
碧スマイル怖っ!?
「やりますやらせてくださいお願いします!」
畳み掛けるように喋る。まだ死にたくないです。
「おお、やってくれるか。じゃああっちの倉庫から武器を選んで来てくれ。お前ら!お前らは上の観覧席で見学だ!ほら行け行け!」
先生に先導され、他の生徒が訓練室を出て行く。
お互いに武器を選び、先生の指定した場所まで行く。
俺は当然のごとく刀だし、碧も同様に刀を選んでいる。
俺は利き手ではない右手で刀を抜けるように刀を腰に差す。袴では無いので、ベルトのようなもので吊っている。碧も利き手では無い左手で刀を抜けるように腰に吊っている。
「よーし、ルールは簡単だ。相手を刃引きした武器で気絶させる、もしくは相手に降参の意を示すことで終了だ。怪我しても回復担当の人に大勢来てもらってるから大丈夫だぞ。ただわかってるとは思うが相手が即死するような技は放つなよ?」
・・
「碧、間違ってもあれは使うなよ。俺も死ぬしここにいる全員が死ぬ。」
分かってるとは思うが、一応警告しておく。
「あはははっ、大丈夫ですよ多分。あ、祐理さん死んじゃったら香菜さんも後から逝かせるので心配しないでください。」
「それはやめろ!俺がしんだ場合は香菜の事はお前に任せようと思ってたんだから!」
「ていうか香菜さんの場合祐理さんを追って自殺しそうですけど・・・・」
「それは間違いねえ・・・」
お互いに構えを取らずに話す。
「お前ら随分余裕だなあ・・・・真剣勝負だぞ?」
「いや先生、流石に真剣勝負はできませんよ。殺し合いになります。」
「武術家同士の真剣勝負なんて見せられるものじゃない事は先生も分かってますよね。」
二人して先生に反論。
おお、なんということでしょう。おかげで先生が怒るどころか戸惑ってしまいました。
碧さん!出番です。
「そんなことより先生。早く始めましょう。」
「おお、そうだな・・・・開始三秒前―――――」
お互いに相変わらず構えを取らず、視線だけを合わせる。
「3,2,1――――始め!」
言って、先生はそそくさと訓練室を出て行く
開始と同時に二人は―――――ピクリとも動かなかった。
お互いに初手を読みあっているのだ。
そのままお互いに動かない状況が暫く続いた時だった。
「祐理さん・・・・これ派手にやった方がいいんですよね・・・・」
「・・・・そうだな・・・」
途中で碧の視線が揺らいだのはそれか・・・・そうだったな。見本。先生にあれだけ言っておいてちょっと本気になりかけていたらしい・・・
柄に手を掛け、鯉口を切る。碧も同様の事をしている。
「じゃ、やりますか?」
「ああ」
と、俺の返答を待たずに碧が地面を蹴る。俺もほぼ同じタイミングで地面を蹴る。
お互いの距離が縮まって来た所で右手を柄に掛け、抜刀の姿勢を取る。そこから腰を捻りながら抜刀―――――せずに回し蹴りを放った。
今のは単純なフェイントだ。碧は間違い無くこの技を読んでいただろうが、観戦している奴等は恐らく騙されたはずだ。「刀を振りかぶったから斬撃が来るとは限らないぜ」と言う奴だ。
碧はその回し蹴りを跳ぶことで避ける。俺は足を無理矢理地面に降ろし、そこから後ろ回し蹴りを放つ。それを空中にいる碧は避けられないはずだが、俺の後ろ回し蹴りは空を切った。どうやら碧は最初に跳んだ時点でやや後方に跳んでいたらしく、後ろ回し蹴りを避けたようだ。
「あれ?当たらなかった。」
「当てる気なかったでしょう?」
喋りながら碧はどこにしまっていたかナイフを投げる。体勢を低くし、首を曲げることでナイフを避けながら碧に突っ込む。柄に手を掛け、今度こそ抜刀術。
「魔殺二天流 散波」
非常に使い勝手が良い魔殺二天流中級抜刀術。高速移動からの踏み込み。そこから抜刀、追いついてきた足が地に着き、安定した体勢からの燕返し。そこでまた刃を返し、捻った腰を追従するように捨て身の一撃。
だが、碧は一撃目を抜刀術で返し二撃目を刀で受け流し、三撃目も同じく受け流した。
「隙あり――」
捨て身の三撃目を受け流され、俺の体勢が大きく崩れ、大きな隙が出来た。
―――――掛かった
「二の太刀 波紋!」
俺は崩れた体勢で無理矢理上半身を回し、腰を回す。その動きを利用して放たれる上段回し蹴り―――――
俺の放った三撃目は、わざと全力で放たれたものだ。相手によけられる、受け流されるのを見越して全力で放ち、崩れた体勢からこの技に繋ぐための技である。
「ツッ―――!!」
どうやら碧はこの技を想定していなかったらしく、紙一重で避けながら顔に驚愕が張り付いている。
だが、これで終わりでは無いのだ。
「三の太刀―――――」
俺は、自分の放った回し蹴りの勢いで軸足が宙に浮き、完全に宙に浮いている状態だ。この状態は近接戦闘において致命的な状況である。
だが、この状況もわざと作ったものだ。
「大波紋!!」
俺は、全身全霊を込めて放たれ、未だに残っている回し蹴りの遠心力を利用し、宙で一回転しながら回っている方向へ腰、上半身の順に回す。それを追うようにして放たれる三の太刀。
「嘘っ―――――」
碧もこれは予想外だったのだろう。碧は俺が強化魔法以外使えないのを知っているので俺が空中に上がった時点で無防備だと読んだのだろう。だがそこは碧。咄嗟に刀で受ける。しかも、この技にかなりの威力が込められているのを見抜き、左手で柄を持ちながら左手を刀の峰に添えて、体勢を低くすることで衝撃で吹き飛ばされないように構えている。
「ぐうっ!」
刀と刀がぶつかり合い、大きな火花を撒き散らす。受け止めた碧と手に衝撃が返ってきた俺が声を漏らす。
「ヅッ――――」
碧に防御体勢を取られた時点で俺の敗北は決まったようなものである。風魔法が使えたり魔法障壁を使えるならここで足場を作るなり風で押し込んだりと出来るのだが俺は生憎使えない。せいぜい俺に出来ることと言えば―――――
「転歩宙天式!」
足で空気を蹴り、本来瞬間移動めいた移動をするのだがここでは碧がつっかえになっているので移動に使われるはずだった力が全て碧にかかる。
「がっ―――――」
その衝撃に拮抗していた力の均衡が崩れた。
「何とかやったか・・・・・」
碧は日光にある流派の全てを極めている。なので、俺の知りうる技のほぼ全てを碧は知っており、絶対によけられない状況でも作らなければ碧に技はほぼ通用しない。しかし、何故今回の技が効いたのか?それには理由がある。それは、この技が最近発見されたものだからだ。何でも俺の師匠が修行をしていた時に床を踏み抜いてしまったらしい。そしたら、
「なんということでしょう。謎の巻物が出てきたではありませんか。」
と言う謎の経緯を経て出てきた巻物に書かれていた技がこれであったのだ。他にもいくつも技が記されていたが。その技は発見されたはいいが、非常に難度の高い技ばかりで、しかも説明の所々が消えていたり分かりづらかったりと色々欠点があり、俺の師匠が俺に連絡を取って
「今日の匠は、『動線のスペシャリスト』―――――」
って違―――――う!!何でさっきからちょくちょく「劇的○フォーアフター」が入ってきてるんだ!?確かに師匠の道場はかなりボロボロだがあそこに頼る必要はまだない!
そもそも魔殺二天流は30年前に出来たばかりの流派のはずだ!30年前って言ったら2050年だぞ!?何で巻物なんだよ!
ゴホン・・・まあ、と言う訳で京都にいた碧が知らなくて当然なのだ。
俺は吹っ飛んで壁に激突した碧の方を向き、弓を引き絞るような構えを取る。
「破魔豪天流 豪刺閃」
碧の状態を確認するようにゆっくりと息を吐きながら構える。
この技は「破魔豪天流」の技である。「破魔豪天流」は魔殺二天流の傍流の一つで、力強い技を得意とする流派だ。
この技は突進力と貫通力が優秀な突き技である。
もし、まだ碧に意識があるようならこれで止めを刺す。意識が無いのならばギリギリでズラせば碧には当たらない。
が、俺が構えて地を蹴ろうとした時に碧の顔が上がった。
―――――そこにはいつもより深く、まるで楽しそうに笑う碧がいた。
「フフッ、アハハハハハハハハハハハハハハ・・・・・・やっぱり・・・・・やっぱりだ・・・・もしかしたらこっちで腐ってるのかと思ってたのに・・・・・変わらない、変わってない・・・祐理さんは全く変わってない!」
その笑みがより深く、狂ったような笑みに変わった。
「あ・・・やべえ・・・・」
碧は、戦闘等で強敵、もしくは連戦になると自分でも止められない程気分が高揚して物凄い戦闘狂になってしまうことがある。
これのことを俺達は「狂人化」と呼んでいる。この状態の碧は強そうな者を片っ端から攻撃してくるので見境が無い。
実際、俺達は三度、この状態の碧と戦闘になっている。
一度目の戦闘は、俺との戦闘。俺を殺す直前で碧の意識が戻り終了。全身骨折、内臓をいくつか損傷。小川先生によく生きてたな、と言われた。
二度目の戦闘では岳斗と蒼夜が戦闘。岳斗と蒼夜が殺される直前で大貴と鏑木が介入。全員が重傷を負った状況でなんとか撃退。
三度目は俺と朝日。一度、碧と戦っている俺がいたので何とか二人共重傷を負いながらも撃退。
碧が俺達を二人がかりでもあっさり倒せる程強いのは、隙が無いからだ。ほぼ完全に接近戦特化である俺、大貴、岳斗を1対1では圧倒し、魔法を使用すると俺達の中で一番魔法が得意な朝日に勝るとも劣らない魔法技術を持つ。しかも朝日レベルの無尽蔵な魔量。高質な魔質。とこの時点でかなりのチートぶりなのだが、更に魔法と刀術のコンビネーションが絶妙で、防御兼攻撃の魔法を体の周囲に配置し、接近戦ではそれを刀術とのコンボに使用する。遠距離の敵には近付く際の防御に使用している。朝日と俺の時は朝日の魔法がその防御をあっさり破れたので何とかなったようなものである。
このように碧の恐ろしさを味わった俺達の間では「強力な魔物が全然怖く無い、だって碧の方が怖いから。」と言われている。
「碧さ~ん?大丈夫ですか~?」
ここで、確認のために声を掛ける。
もしここで「何言ってんです?アッハハハハハハハハ!!」と返ってきたら「DEAD END」である。皆逃げて!となってしまう。
「何言ってんです?」
碧はよく分からない、と言った感じで首をかしげる
瞬間的に頭の中を何かが走った。
俺を抱いている母親の姿、それを横から見ている父親の姿。小さい頃の妹の姿。
小学校の運動会でなぜか保護者席で香菜をカメラで撮っていた時の瞬間。
香菜の寝顔をこっそり撮っていた時。
郡山さん達の顔。
あれ!?これ走馬灯じゃん!
それにしても妹の記憶が多かったな・・・・
その日、一人の少年の人生は終わりを告げた。
目の前に大きな川が見える。
その対岸で両親と郡山さん達が手を振っているのが見える。
そうか・・・・俺は・・・・
「まだなってませんよ?僕まだ正気です。皆さんの言う狂人化はしてません。」
命あっての物種とは良く言ったものだ・・・・今なら自分の命の大切さが身にしみるように分かる。
「それは良かった・・・・俺死んだかと思ったよ・・・」
一瞬大貴でも誰でもいいから来て!と思っていた。
「そんなことより続けましょうよ。先生達も見てるんですし・・・」
「そうだな・・・・」
大きく息を吸い、構えを取る。
俺が地面を蹴り、豪刺閃を放つ。
俺の刀が碧に当たる直前で、碧の声が聞こえた。
「残念ながらここからは僕の時間です―――――準備はいいですか?」
途端に碧が刀を垂直に立てる。
あろうことかその刃はピッタリと俺の切っ先と重なっていた。
俺の突きが碧の刀に直撃する。と、思いきや直撃する直前で碧の刀がずれた。
ずれたことで切っ先は刃には当たらず、鎬に押し出される形で、俺の突きが流される。
その場に碧の刀が残り、俺に刀が迫る。それを首を曲げることで避けたが、肩に激痛が走る。
そこで、一瞬とは言え意識が痛みに持って行かれてしまった。
ハッとした時には眼前に拳が迫っていた。
「ガッ」
顔面に拳が当たり、仰向けに倒れながら右足を跳ね上げ、蹴上げ。
が、感触が無い。避けられたようだ。
「こっちですよ~」
仰向けに倒れるのを防ごうと体勢を立て直そうとしたところで眼前に碧の顔が現れた。
顔面に衝撃が走る。どうやらまた殴られたようだ。
その衝撃で完全に倒れ―――――そうになった瞬間に片足で転歩。
無意識に移動しただけだが、しっかりと体勢が直っていた。転歩時に体勢を安定状態に立て直す癖が役に立ったようだ。
「何も二回殴ることはないだろう・・・おかげで鼻が痛いんだが。」
鼻を抑えながら碧に話しかける。
碧のやつ・・・・結構力を入れて殴ったようだ。全然痛みが引かない。
「さっきのお返しです。さっきの結構痛かったんですから。」
碧も背中をさすっている。俺が吹き飛ばしたのが余程痛かったのかもしれない。
「それは悪かったな、お前があれになる前に気絶させようと思って。」
「無理ですよ、祐理さんじゃあね。」
「言うじゃねえか・・・」
なんか碧の性格がいつもと違くないか?これって狂人化の前兆じゃなかったか?・・・
「魔殺二天流 裏の奥伝 水無月――――」
刀を自分の後ろに回し、碧の視界から見えない角度に―――――
「それは流石にやらせません。」
碧が俺の放つ技に危機を感じたのか転歩で移動。場所は俺の背後。
魔殺二天流 滅閃
最早おなじみとなっている魔殺二天流の上級技。転歩九式を扱える者にしか伝授されない技で、使える者はかなり限られている。この技は単純な速度=威力、と言う至って普通の技なのだが、何故か伝授の時期が遅い。師匠曰く九式でも使えなければ遅すぎてまともに使えないと言っていたが、俺は滅閃の派生技の難度が高いからだと思っている。
刀を盾にすることで滅閃を防ぐ。
「そんなにあの技嫌か?」
本来強力な技は碧はいつもカモン!と言った感じなのだが、俺の水無月だけはやたらと嫌がるのだ。
「あれは嫌です。あんな反則技無しですよ!」
そんなに反則だろうか?あの技は自分で作った技で、魔殺二天の名がついているのは魔殺二天流を皆伝した直後に、恩師への感謝の念を見せるために不器用な俺にはこれしかないと思って作った技なので結構愛着があるのだが・・・・・・
「そんなに嫌がらなくてもなあ・・・」
その直後に転歩飛天式、転歩で直上に飛び上がる。
空中で身を捻り、後ろを向くことで碧のいる方向を見る。碧も同じところまで飛んでくるようだ。しかしあの構えは・・・・
「白点流激流 音無し」
やっぱりか!
衝撃が走り、俺がより上に飛ばされる。元々俺がいたところには碧がいた。
白波の流派である白点流激流とは、極限まで無駄をなくし、無駄なき美しさを魅せる。そんな流派だ。白天流激流はあまり威力重視の流派では無く速さに重きを置いた流派で、なんの前触れも無くいきなり技が繰り出される無拍子が最も特徴的である。
白天流激流の技、音無し。白天流激流の技でも珍しい突進技で、無拍子で繰り出される突進は距離感を惑わす。しかも速い。
その技で攻撃されたので、防いだは防いだが上に弾かれてしまった、と言う訳である。
今頃、白波は観覧席で「あ、あの技!」とか言ってるかもしれない。
が、上に飛ばされてしまったことで、一つラッキーな事があった。
俺は、天井に手を突き、自分の体を押し返した。
「魔殺二天流 天降り」
魔殺二天流下級技。天降り。主に空中から地面にいる敵に対して使われる技で、大上段から二~五撃程連続で振り下ろしを繰り出す技だ
技が二~五撃と大体なのは魔殺二天流の創設者がざっくりだからだと思う。「英雄」?絶対あの人面倒くさがりだと思う。
ちなみにこんなことを魔殺二天流の人に言ったら怒られる。
俺は三撃程振り下ろしたところで止めた。当然の如くこの技を碧は知っているので牽制程度にしか思っていなかったからだ。
そのまま連撃に持ち込む。
俺達の周りで何度も火花が散る。
お互いが地面に落ちるまで連撃は続く。
そこで地面についた瞬間に、距離を取ろうと思い、碧を蹴ろうと足を上げた。見ると、碧も同じ事を考えていたらしく、足を上げている。
お互いの蹴りがぶつかり、その衝撃で二人の間に距離が出来る。
「いいですねえ・・・・・・フフッ・・・・」
碧の状態がおかしい。やっぱりさっきのは前兆だったのだ。
これはさっさと決めちまうか―――――
刀を後ろに回し、刀を碧の視界から隠す。
「しまっ―――――」
「魔殺二天流 裏の奥伝 水無月」
瞬間、俺の姿が掻き消えた。俺の全速力を捉える碧ですら見失っている。
これが、俺の作り出した奥義。
極限の視線誘導。鍛え上げた足捌き。圧倒的な先読み。
そこから生まれる―――――常に死角から繰り出される剣撃
碧は刀を背中に当てるようにして目で捉えられる限界まで見据えている。
おそらく触覚を通じて空気の揺れ、聴覚を利用して僅かな音まで逃すまいとしているだろう。
そこで、碧の上に気配が現れた。
「上っ―――――」
その直後、碧の顎に衝撃が走った。
瞬間的に碧は自分の全方位を斬るように刀を振る。ここまで碧が用心深いのは、この技を一度食らっているからである。
碧の刀が空を斬る。碧の首を後ろから斬る。(’叩く、が正解)碧が先を読んで前に唐竹割りを繰り出す。また後ろから衝撃。今度は三連撃。
そのまま、何度も、何度も何度も何度も同じように碧を死角から切りつける。
碧の耳元で囁く。
「ちょっと寝ててくれ」
背後から強烈な衝撃が走り、その衝撃に前に吹き飛びそうになるのをこらえた瞬間に前方に祐理が現れる。
いつの間にか刀を収めている。
この構えは―――――
「魔殺二天流 終の奥義 神無月」
魔殺二天流最後の奥義。何者をも切り裂く一閃。
腹部に強烈な衝撃が走り、体が吹き飛ぶ。
「ふう・・・・流石に終わっただろ・・・・」
何故だろう・・・・今フラグを立ててしまったような・・・・・
吹っ飛んでいった碧が壁を向いて立ち上がる。
「クククククククククククク・・・・・・アッハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!これだよ・・・・これですよ・・・・・・これだから止められない・・・・・・・・・・・」
碧が振り向く。
「さあ・・・始めましょうか・・・・・」
その顔は先程とは明らかに違かった。
「殺し合いをおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
微笑み等では決して無い。だが、笑顔であった。美しく、艶やか。その美しさには月すらも自重してしまうのではないかと言う美しさだった。
月下美人、容姿端麗、傾城傾国。どの言葉を使っても表せない美しさ。
死を誘う死神が舞い降りた。
今回は出来るだけ戦闘シーンを細かく書いてみました。
少しづつでも上手く書けるようになりたいです。




